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最強騎士は空を見上げる

「あっ、ひー君! 見つけたぁ!」


大広場で白いフードを纏った青髪の少女が声を荒げる。

周囲はそれに驚き、ジャガイモを運んでいた食材屋の店主が腰を抜かしてジャガイモを広場にばら撒いた。


「だぁー! リアルの呼び方持ち出すなってあれほど言っただろ!」


ひー君と呼ばれた赤髪の青年冒険者は迅速に近づき、青髪の少女の口を手で塞ぐ。

体捌きからして素人ではなく、基礎体術を身に付けている事が窺い知れる。


「だってー、アバターの外見とかが一緒なんだもん。 違うのは髪の色が赤くて青年っぽくなってるところ?」


「そういうお前もそのまんまだけどな。

 それにしたって、ここがVRMMOブイアールエムエムオーの中だってことは忘れるなよ。

 ネチケットだ、ネチケット!」


「うわぁ、大昔の言葉だぁ。 ひー君、そういうの詳しいねぇ」


青髪の少女はくすくすと笑うと、目端に先ほどジャガイモをばら撒いた食材屋が映った。

店主は恨めしげに冒険者をにらめつけている。


「わぁ! 大丈夫ですか!」


「大丈夫じゃないと思うんなら、手伝って欲しいものだがね?」


店主のその言葉に謝りながらジャガイモを拾う少女と、

それをニヤニヤと眺める赤髪の青年冒険者。


「ここはアーカナ王国の大広場であってガキが騒ぐ場所じゃない。 

 大声を出して転ぶ人だっているんだ」


「はい……、すみませんでしたぁ」


「謝れるのならまだ君は立派だ。 

 次は大声で叫んだりするんじゃないぞ」 


言い諭された青髪の少女冒険者は深々と頭を下げ、食材屋の店主を見送る。


「プッ、アッハッハッハッハッハ! 

 いや、そうだよな! 分からないとそうだもんな!」


すると突然赤髪の少年冒険者が堰を切ったかのように笑い始める。


「ひー君酷い! 人が怒られてるのを笑うなんて! 

 確かに私もテンション上がっちゃったけどさ……」


「クックク、いやいや、違う違う。 

 笑ったのはそこじゃなくってさ、さっきのおっさんどう思った?」


「あの人? うーん、プレイヤーの割にはオーバーリアクション?」


「実はな、あのおっさん。NPC(エヌピーシー)なんだよ」


「……うぇぇ!?」


NPCエヌピーシーなる単語を聞いた青髪の少女は愕然とした表情で、

食材屋の店主が去った方向を見やる。

店主はゆっくりと慎重にジャガイモが入った箱を運んでいる。


「で、でもでも! そんなこと、事前情報でもなかったし、そもそも普通に会話してたじゃん!」


「それがこのゲームがひた隠しにしていた要素その1だ。

 NPC(エヌピーシー)AI(エーアイ)導入。

 クローズ、オープンとこのゲームをやった人しか分からない要素なんだ」


「え、え、───もごっ」


再び叫びそうになった少女は自らその口を抑える。

その様相は今にも竜の息吹(ドラゴンブレス)を吐かんとするドラゴンのようだ。

その息吹を喉元まで押さえ込んだ少女は、口を覆っていた手を放す。


「──AI(エーアイ)の導入って、22世紀の現代でも各国の研究者が色々苦戦してるって聞いたけど?」


「それが、ここのゲーム会社に天才プログラマーが居たらしくてさ。 

 えーと、なんだっけ、名前。 まあ、なんでもいいか。

 そのプログラマーのおかげで、

 AI(エーアイ)の導入もVR(ブイアール)空間への意識転写がゲームで行えるようになったって話だ」


「はぁぁー、すっごーい」


青髪の少女は愕然とした表情のまま、周囲を見渡す。


周囲には冒険者や王国民が集まっており、

特に冒険者が熱心に王国民に話しかけているようだった。


王国民はにこやかに笑いながら話に応じているが、

異なる冒険者に矢継ぎ早に質問されているようだ。

気苦労を慮れば、同情の念しか沸かない。


「まだ未完成な部分もあるし完全自立ってわけじゃないけど、ワクワクするだろ?」


「言葉に表せないけどすっごいワクワクする!」


青髪の少女と赤髪の青年冒険者はお互いに笑い合う。仲良き事は良い事だ。


「あっと、そうだそうだ。 このゲームにおいて、最も大切な事を教えてやろう」


「最も大切な事?」


首を傾げる青髪の少女に、青年は咳払いをしてみせる。


「【ガーディアン】!」


『はい、御用ですか。 冒険者』


「わぁ!? 白くてゴツゴツした人が!?」


青髪の少女が再び目を丸くして驚く。

確かに目の前にアダマンタイト製の甲冑を着た人型が現れれば驚くのも無理はないだろう。


「こいつが事前情報になかった隠し要素その2、王国を守るガーディアンだ」


「ガーディアンって、日本語にすると守護者?」


「そうそう、守護者守護者。 この王国国内に配備されてる78人の騎士の総称。

 王国の治安はこいつ等が担っていて、初心者にとってはなくてはならない存在なんだ。」


「へぇー! 78人の騎士! なんだか格好いいなぁー」


青髪の少女が、ガーディアンの象徴たるアダマンタイト勢の甲冑を素手で撫でる。

もし仮に貴族がその光景を見ていたのならば、

王威を示す国王直属精鋭部隊ガーディアンに対する無礼な行いに泡を吹いて気絶していただろう。


『少女よ、無用心な行動は慎め』


「わひゃぁ!?」


「あっ、言い忘れてたけどガーディアンもAI(エーアイ)が搭載されてるからな」


「もう、先に言ってよ!」


「わりぃ、わりぃ。 まさか、いきなり触るなんて思ってなくて」


少女と青年のやり取りを見る。世代は若干外れているが恐らく幼馴染という間柄なのだろう。


気心が知れる相手とお互いに笑い合える。

人類と魔王が戦乱を起こしているこの世界(エデン)の中でも、王の威光が遍くこのアーカナ王国だからこその光景だろう。

二人の関係を守るためにも、騎士としてより一層の鍛錬を積まねばならないだろう。


「それで、【ガーディアン】って叫べば尋ねて来てくれて色々な用件を聞いてくれるんだ。

 街の中で呼べば冒険のアドバイスや道案内をしてくれて、

 街の外では死に掛けてたり、PK(ピーケー)がいる場合に助太刀してくれたりしてくれるんだ」


「わぁー、本当に守護者って感じだね」


「王国内という点に限るのなら、最強の騎士だな。

 ステータスとかカンストしてるし、専用魔法を色々と使えるし、武具も特注だし」


「えー、それなら魔王倒せるじゃん!」


「ところがどっこい、行動範囲が王国内に限られるんだわ。 恩恵を受けられるのは初心者までだ」


「あー、本当に初心者だけのお助けキャラ的な感じなんだね」


赤髪の青年冒険者の言う通り、国王直属精鋭部隊ガーディアンは王国内しか活動はできない。

その守勢な命令に、青髪の少女と同じような不満の声が上がるのも理解はできる。


だが魔王を打倒する為に自国を無防備にするのは、攻撃が当たらなければいいとゴーレムに対して裸で挑むような愚行である。例え魔王を倒したとしても無防備な自国は再起もままならない壊滅的被害が出るのは想像に難くない。


王国を守護する役目がガーディアンであり、魔王を打ち倒すのは勇者の仕事なのだ。

そう、仕事なのだが……。


「まぁ、ガーディアンに関してはオープンベータの大事件《ガーディアンマラソン事件》とか色々面白い話はあるんだが!

 とりあえず、冒険者登録しに行こうぜ。 お前、ログインしたばかりだろ?」


「あ、うん! 入って、すぐここに来たから」


「フフフ、そこで事前情報にない隠し要素その3、冒険者登録の方法をだな。 とりあえず冒険者ギルドに行くぞ!」


「もう、どれだけ隠し要素あるんですか」


少女と青年冒険者は談笑しながら、冒険者ギルドへ向かっていく。

その足取りは軽く、人類の存亡をかけた戦いをしている等と露程も感じさせない雰囲気はある意味見習うべきなのかもしれない。


『……用件がないのなら、声をかけないで欲しい』


されども大広場で警備任務に従事しているところを呼び出され、挙句の果てに無視された私はどうすればいいのか。

件の二人は気にも留めていない。

最近の冒険者は皆大体軽薄な態度で私達(ガーディアン)に接してくるので私も気に留めないようにしよう。

きっと何かの流行なのだろう。


『……ふぅ』


溜息を吐きながら持ち回りの警備場所へ歩いて戻ると、不意に空を見上げる。

今日も空は青い。だが、魔王に支配された地域は赤に染まると噂を耳にした。

いつまでこの空が青いのか。いつまで我々ガーディアンは国を守ればいいのか。


『この空が赤く染まった時を考えるのは、私だけだろうか』



──────────────────────────────



これは、少し壊れた最強騎士(ガーディアン)が、世界に安寧を齎すまでの物語である。



──────────────────────────────


エイプリルフールの思いつきで考えた設定を生かした小説です。


初投稿なので不安と期待と絶望と希望が入り混じってます。

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