写真
ゲーセンで大輔と別れ、電車に乗り駅の改札を出て駅前の本屋でアニメの新しい情報を確認して家に戻ったのは十時を過ぎていた。
「ただいま」
玄関を入ると、二階からお母さんの声が聞こえた。
「お帰り。食卓に夕ご飯があるからレンジで温めて食べて」
四年前にお父さんが亡くなってから、俊介の母親はIT関係の企業に勤めていて会社でやりきれなかった仕事をいつも家に帰ってまでしている。
夕食はいつも食卓のテーブルの上の物を自分で温めて食べなければならない。
一人の夕食を済ませてシャワーを浴び、自室のベッドに潜り込んだときは既に十一時を過ぎていた。
普通S高のような進学校の生徒なら、ここから予習・復習・宿題と忙しいはずなのだけど、俊介はそのどれにも手を付けないでいた。
手に取ったのは教科書ではなく小型のゲーム機。
スイッチを入れ、お気に入りのゲームをやり始めたが直ぐにある事が気になってやめた。
暫くボーっと天井を見上げて考えていた。
時計の音だけが部屋に響く。
俊介は突然ベッドからクルリと反転して起き上がり、本棚の中から写真を探した。
秋月穂香。
いったい誰?
二年生のクラス替えのあとで撮った写真を眺めていたが、全然分からなかった。
あとは修学旅行の写真。
しかし、この修学旅行の写真は数枚しか無かった為、そこから秋月穂香を探し出すのは無理だと思ったが、一応見てみた。
それにしてもクラスで影が薄いという事は寂しいものだ。
特に興味もなかったけれど修学旅行後、注文用に張り出された写真の中に俺が写っていたものは、たったの四枚。
しかもそのうち二枚は全体の集合写真だった。
注文しなかった写真の中にも自分が写っているものもあったが、それは左半身がなかったり、横向きの鼻と口の部分がなかったりと明らかに無視された形で、掲示板に貼られた写真を見たときには軽く悪意さえ感じられた。
そして注文する時に、ある程度顔や全身が判別できるものを探したら、四枚しかなかったのだ。
「あれ!?」
たった四枚しかない写真の中に、それらしい女子が写っている物を見つけた。
それは旭山動物園で女子たちが楽しそうに写真の前でポーズを取っている背景の片隅で俺たち棋道部の四人が道にへたり込んでゲームをしている写真だった。
本当は、こんなオマケで写っているものなんて欲しくはなかったのだが、余りにも自分が写っているものが少なかったので、お母さんがガッカリするといけないと思い注文したものだった。
写真を見つけ改めてクラス写真の方も確認したら確かに、その女子はクラスメートらしかった。
ただし、この写真の女子が実際に自分のクラスに居たかどうかまでは思い出せなかった。
「大輔のやつ面倒な宿題を出しやがったな…」
俺は心の中で呟いていた。
翌朝登校してみると数人の女子が髪をポニーテールにしている事に気が付いた。
この中から秋月穂香を探し出すのは容易なことではないと思ったが、結果は意外にあっさりと早く判明した。
それは授業が始まる前に担任の教師が点呼を取るからだ。
出欠の点呼の一番は自分だったので、それに応えれば後の名前には興味がなかったが、この日は注意して聞くことにした。
男子の最後の生徒が呼ばれ次は女子の番だ。
俺は自分が緊張しているのが分かった。
そして、その名前が呼ばれた。
「秋月穂香」
「ハイ!」
声の出所は俺の席から一列後ろで教室の反対側、窓際の席のポニーテールの女子が返事をした。
いかにも覇気があり、利口そうだなと思ったが特に俺には関係ない人種だと、そのときは思っていた。




