部屋にて 1
とりあえず、かけるところまで書いてみます。
VRMMO「ゼロの箱舟」。
一部の熱狂的ーーあるいは偏執的ーーな人間によって作り上げられた初の完全没入型VRMMOであり、見る、触る、味わう、匂いを感じる、聴くなどのすべての項目を完全実装することに成功したゲーム・・・らしい。
まあ、私はそんな詳しいことすら知らない。というか、今初めて知った。
「ねー、レレイナ?一緒にプレイしようよー。そして、その中でもプレイをしよ?」
目の前にいるエロの化身から。
「・・・なんのプレイをする気なのよ?」
「それはやっぱり、夜のスポ「ごめん、無理。」そんなぁ・・・」
「で、レレイナって誰よ?」
「えー、なっちゃんのことに決まってるじゃん。」
「じゃあ、なんでレレイナって呼ぶの?」
「そりゃあ、そうでもしないと、なっちゃんがこの手のものにきょうみすらひいてくれないからでしょう?」
「いや、まあ、そうなんだけどさ」
なっちゃんと私のことを呼ぶ彼女の名前は武田光希という。あだ名はみっちゃん。年齢はともかく、私とは同期で、研究においては、まさしくそういった分野の研究ばかりしている。
だが、そのせいで彼氏はいない。彼女はいるらしい・・・。
・・・・・・・どういうことなのか、きっちり問い合わせをしてみたいが、それはさて置こう。
「で、みっちゃんはさ、どうして私にゲームをさせようとするわけ?」
「開発コンセプトが面白かったから。『全オタクの執念がここに!現実ではできないことをこの中で!』なんて、なかなか面白いと思わない?」
「確かに面白そうだけど、私じゃなくてもいいじゃない」
そう、私を誘う理由がわからない。
みっちゃんはともかく、私は特に親しい人間なんてみっちゃんくらいで、同期と飲みに行けば、みんなが飲んでいるのを側から見て楽しむくらいには協調性なんてものはない。
むしろ、のんびりと自分の好きなことに没頭していたいくらいだ。それに、私は、この部屋から見る景色が一番心地よく感じるのだ。あんまり移動もしたくない。
「だって、現実にはできないことができるんだよ?どこまでできるか知りたいじゃん。
その点、なっちゃんは常識の範囲からはみ出さないから、新しいことをしようとしたらどうなるか見てて面白そうだなって」
「うん、まあ、確かにそうなんだけどさ。私、ゲームなんてしたことないよ?」
「初めてするゲームがこれっていうのは、すっごくお得だと思うんだけど?」
「そんなものかな?」
「そんなものだよ?」
まあ、仮に私がそのゲームをするといっても、そのゲームはできないわけ
「できるよ?」
え?
「はい、これ、ゲームソフトね?」「で、これが、ハードで」「これはこうで・・・」
・・・・・・どんどん準備が進められていっている。私の承諾はどうした?
「はいこれかぶって〜、かぶったね?スイッチ、オン!いってらっしゃーい。」
・・・なんか、勝手にスタートさせられた!
ちょっ、せめて説明書か何かを!