会話
「あなたの話を、聞かせて?」
――――――
夢だ。
いつもの夢……とは、様子が違った。
部屋に、窓があったのだ。
それでも、前を見ると彼女がいる。
「やぁ」
「ごきげんよう」
彼女はいつもの様に微笑んでいる。
「そうだ、この前、聞き忘れた事があったんだ。」
「?」
小首を傾げる彼女。
「君の、名前は、なんていうの?」
「……ごめんなさい、教えられないわ。」
「…?そうなんだ。」
「それより、今日も、あなたの話を、聞かせて?」
名前を教えて貰えなかった事は少し気になったが、そんな事を気にしても仕方あるまい。だってここは夢の中なのだから。起きる事に一つ一つ理由をつける必要はない。
まず、最近の事を話す。いつもと変わらない、学校の話。友達の話。話終えて一呼吸入れた所で、やはり気になってしまった。
僕の中では、彼女が口を開いた事と同じくらいの大事なのだ。世間話と変わらない。どうせなら、聞いてしまおう。
「窓、あるね?」
「ええ。」
「前まで、なかったと思ったけど、どうしたの?」
「だってあなた、窓がないと、外が見えないわ。」
「うん。」
沈黙。
当たり前の答が帰ってきた。喋り始めた事も、窓も、ただの気持ちの変化だろうか?
「外が、見たかったんだ?」
「外が見えないと、あなたが見えなくなってしまうから。」
「?僕はずっと同じ家に住んでるし、引っ越す予定もないよ?最近特に遠い所に行った事も無いと思うし……」
「ええ、そうね」
彼女は、黙ってしまった。良く分からないが、話を続けよう。
何せここからが本題なのだから。
窓の外では、小雨が降っている。