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はじめての、セカイ

家に帰った僕は、バッグを投げ捨て急いで着替え、財布を持って家を飛び出した。もちろん、今度は傘も持っている。


駅前の本屋に走る。

ミネ キョウコ。彼女は僕と話したいと言ったが、それは柳下透についてであろう。柳下透が好きだと言ってしまったからには、彼女を喜ばせられる感想を用意しなければならない。


「いらっしゃいませー」

「あの!柳下、透の本はありますか?」

「柳下透……でしたら、ええと……こちらの棚にございます。」


柳下透のスペースは小さかった。本を読まない僕にとって有難い事に、柳下透が書いた本は三冊だけであった。これくらいなら、一晩で適当な感想が言い合えるくらいには読めるかもしれない。

その三冊を手に取り、レジで会計を済ませて外に出る。


天気は……まだ、持ちそうだ。近くのコンビニで菓子パンとジュースを買い、少し歩いた所にある公園に入る。


本を開くのは本当に久し振りだ。読めるかわからない不安と、心地よい紙の分厚さに少しワクワクしながら読み始めた。


暫くして、雲行きが怪しくなってきた。本を閉じて家に戻る。戻りながら、柳下透の本について考える。

難解である。読書をしない僕にはとても難しい本だと思った。有名な言葉を借りると「非日常の中の日常」とでもすれば良いのだろうか。少しズレたセカイの中でネジが外れかかった人達が物語を織り成していく。

ただ、言葉に力があり、短い一言でとても美しいセカイを作れてるな、と思う。


本当はよく分からないが、感想を綺麗に飾ったらこんな感じになった。これをミネに伝えて、嫌われるという事もあるまい。

早く帰って残りも読もうと、道を進む足を早めた。


とにかく、僕は初めて真面目に本を読み、初めて好きになった人と明日話す。

夢の彼女は、初めて僕と会話をした。

初めてのセカイに、僕は足を踏み入れた。


―――――――

ミナモト ジュンは、きっとレールに乗れたのだろう。

彼の車輪はこれからどんどんスピードを上げて進んで行くだろう。

きっと、私はそのスピードに追いつく事は出来ない。


でも 今は ただ

「あなたの話を、聞かせて?」

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