表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

ミネ キョウコ

どうにかしてミネ キョウコと近づきたい

最近、ミネの事ばかり考えている気がする。


ミネ キョウコを初めて見たのは僕がまだ高校一年、入学したてだった去年の夏だ。

レポートの資料を探しに図書室へ行ったその日、程よく冷房のきいた図書室は外が恐ろしく暑かったからか、いつもより快適な気がした。

どうせ放課後、やることもない。そう思って少し目を瞑った。目が覚めて、時計を探して宙を泳いだ目が、彼女を見つけた。

まっすぐ伸びた鼻筋、人に媚びない強い彼女が見えてくるような目尻、そんな強さを全く見えなくしてしまう優しい口元。僕に気付いて微笑んでいる。

思わず目を逸らしてしまった。

帰り際、ドアを閉めながらそっと彼女を見る。


夕焼けになる前、まだ柔らかい太陽の光を浴びた彼女の黒い髪は、宝石のように輝いていた…


かなり記憶が美化されていると自分でも思う。

それからは、教室の外に出る度目が彼女を探していた。

彼女のクラスを見つけ、そのクラスの人達の会話に聞き耳をたて、彼女がいる教室を横切るときは彼女を探す。

ストーカー気質と言われたら否定できない、恋愛をしたことがない僕の精一杯。

でも、一年近く経った今僕が知っている事は彼女の名前(漢字は知らない)とよく読んでいる本だけ。

周りのみんなは「コイバナ」に夢中。好きな相手の話、その子が好きな人の話。みんなで本当か嘘かもわからない話で盛り上がっている。僕もそこにまじることができたら、とても楽だろう。でも、僕はそこで自分の話をする気にはなれなかった。初めての恋、ミネ キョウコへの想いは自分で暖めたかった。


今度、彼女が読んでいた本を買ってみようか。

まともな小説を読みきった事がない僕が、まだ話したことのない彼女との話題作りのために本を買う。

真面目に考えたら可笑しい話だった。財布をカバンに投げ、ベッドの上で一人苦笑いをして電気を消した。

外では雨の音がしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ