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第7話 マガリー 



「タン! タタタタン! タンタンタン! タンタタン!」


「違う! タン! タッタタタン! タンタンタタタン! タンタタン!だ!」


「タン! タッタタン! ンタンタンタン! タタタン!」


「だから! 違うって言ってんだろ! そこは、タン! タッタタタン! タンタンタタタン! タンタタン! だ! もういっぺんやってみろ」


「タン! タッタタタン! タンタンタタタン! タタタタタタン!」


「このへたくそ! やめちまえぇ!!」


 今日もマサシ少年は酒飲吐苦二郎の厳しいタップダンスのレッスンを受けていた。初めて『へそ曲がり』のアジトに招待された日からはや1週間が経っていたが、マサシ少年は未だにタップダンスをマスターすることができず、アジトに一人で入ることができずにいた。


「とりあえず今日のレッスンはここまで! 後は家で自主練習な。いいか、明日までに完璧に仕上げて来いよ。絶対だからな!」


「……はい」


「声が小さい!」


「はい!」


「よろしい。では解散」


「はぁー……」


 マサシ少年は荷物をまとめ、ため息をつきながら帰路に着いた。気付けばもう、夕日が沈みかけている。この1週間ずっとタップダンスの練習ばかり。しかも酒飲吐苦二郎のスパルタ指導。マサシ少年はすっかり疲れていた。


「ただいまー」


 マサシ少年は家に戻ると荷物を置いて直ぐに風呂に入った。タップダンスでかいた汗をはやく流したかったのだ。


「ヴアァアア……ぎもぢいい」


 マサシ少年は気味の悪いうなり声を上げながら湯船に浸かり、心底リラックスした。


「はぁ……超能力か」


 そして、1週間前に初めて『へそ曲がり』のアジトに行ったときのことを思い返した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「マサシくんは自分の超能力についてどこまで知っているのかな?」


「えっと……スプーンを曲げられることだけですけど」


 アジトに入ってすぐ、マサシ少年は金銀財宝から超能力について聞かれた。


「それは、スプーン“だけ”ということだよね?」


 金銀財宝の問いにマサシ少年は驚きの顔でうなずいた。


「な、なんで知っているんですか?」


 実は、マサシ少年の超能力は“スプーンを曲げる”ことしかできない。マサシ少年自身、自らの超能力の存在に気がついてからスプーン以外にもいろいろな物を曲げようとしたり、念動力で物を浮かせてみようとしたり、テレパシーで人の頭の中を覗いてみようとしたりと、いろいろと試していたのだ。しかし、“スプーン”以外の物には一切超能力は働かず、また、“曲げる”以外の超能力も一切発揮されることはなかった。


「私達も同じさ。私達の超能力はすべて、『何かを曲げる』ことしかできないんだ。人によってその『何か』が違ったり、超能力の発動条件が違ったりするんだけどね。ちなみに私の超能力は『金属を曲げる』というものなんだよ」


「へぇー、金属を曲げられるんですか? すごいですね」


「そうそう。財宝の能力はほんとに貴重だぞ!」


 突如、金銀財宝とマサシ少年の会話に遅れてアジトにやって来た酒飲吐苦二郎が介入してきた。


「金属なんてそこらじゅうにあるからな。しかも、財宝は俺と違って手に直接触れなくても曲げることができるんだ。言うなればうちの“エース”だよ」


「吐苦二郎さん! ちゃんとマサシくんに説明したって言っていたじゃないですか! マサシくん何もわかっていませんでしたよ! 嘘つかないでくださいよ!!」


 金銀財宝は酒飲吐苦二郎に対して怒鳴り声を上げた。


「わりぃわりぃ。まぁ、説明はお前に頼んだ。後はよろしく~」


 そう言うと、酒飲吐苦二郎は逃げるようにアジトの奥の部屋に消えて行った。 


「もう! いつも吐苦二郎さんはテキトウなんだから。……で、どこまで話ったけ? あぁ、そうだそうだ。超能力者はみんな『何かを曲げる』ことしかできないというところまで話したんだったね」


 金銀財宝は気を取り直してマサシ少年に対して説明を続けた。


「だから私達はこの、曲げることしかできない超能力のことを『マガリー』と呼んでいるんだ。そして、超能力マガリーを使う能力者のことを『マガリスト』と呼んでいるんだよ」


「へぇー、そうなんですか」


「まぁ、私達もまだこの超能力マガリーについて全て知っているわけではないんだ。まだまだ謎な部分も多いからね」


「じゃあ、僕の超能力マガリーは『スプーンなら何でも曲げることができる』ということなんですね」


「そうそう。例えば、私の能力でも金属製のスプーンを曲げることはできるけれど、木製のスプーンを曲げることはできない。だから、番組でもわざわざ純銀性のスプーンを用意してもらったんだ。君のスプーンを曲げる能力に拮抗させて能力を発動させるためには、できるだけ純度の高いスプーンが必要だったからね。どうかな、少しは自分の超能力マガリーについて理解してもらえたかな?」


「はい! わざわざ説明ありがとうございます」


 マサシ少年は丁寧に説明をしてくれた金銀財宝に感謝の意を込めて頭を下げた。


「じゃあ、次は“お金”について話をしようか……」


 金銀財宝が超能力マガリーの話に一区切りつけて、次にお金の話をしようとした瞬間


「話はおわったか!? よし、タップダンスの特訓するぞ! マサシ、こっちに来い!」


「え、ええ? ちょ、ちょっと……」


 酒飲吐苦二郎が突然やって来て、困惑するマサシ少年の手をとり、奥の部屋へと連れて行った。


「ちょっと! 吐苦二郎さん! まだ話終わってないんですけど!! ……ったく、あの人は……」


 金銀財宝はため息をつき、やれやれという表情で酒飲吐苦二郎とマサシ少年を見送った。


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