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第6話 『へそ曲がり』 アジトにお邪魔します

「おじゃましまーす」


「おぉ、マサシくんよくきてくれたね。さぁ、あがってあがって」


 『びっくり人間ドン☆ドドン』の生放送翌日、マサシ少年は悪の超能力組織『へそ曲がり』のアジトに招待された。アジトは郊外のはずれの高級住宅地にあり、概観は大きくて立派なお屋敷だった。まさか高級住宅地の一角に『へそ曲がり』のアジトがあるとは誰も思わないだろう。そんなことをマサシ少年は考えながら、招かれるがままにアジトの中に入った。


「そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前は、『金銀財宝きんぎんざいほう』、マサシくんよろしくね」


「あぁ、こちらこそよろしくお願いします」


 大きなお屋敷の長く薄暗い廊下を歩きながら、マサシ少年と金銀財宝はお互いに自己紹介をした。マサシ少年はこのとき、まだ出会ってすぐだが、金銀財宝のかもし出す穏やかな雰囲気に対して親近感を持っていた。


「ちなみに、君のスプーン曲げを邪魔したのは私なんだ。ごめんね」


「そうなんですか? 財宝(ざいほう)さんもスプーン曲げられるんですか?」


「……マサシくん、吐苦二郎はくじろうさんからどこまで説明を受けたの?」


 金銀財宝は急に立ち止まり、少し不安な顔でマサシ少年に尋ねた。


「えっと、いや、『へそ曲がり』に入れとしか言われていませんけど……」


 マサシ少年は金銀財宝の突然の問いかけに少し戸惑いながらも、素直に答えた。


「超能力に関する説明は? 『マガリー』については? お金に関する話は?」


 金銀財宝のたくさんの質問に対して、マサシ少年はキョトンとした顔で首をかしげた。


「……はぁ。吐苦二郎さん、ちゃんと説明したって言っていたのに……。ごめんね、マサシくん。ちゃんと説明するから。でも、そのまえに」


 そう言うと、金銀財宝は急に廊下の隅においてあった黒い靴を履きだした。


「あの……財宝さん? いったい何を……?」


 そして、マサシ少年の疑問に答えもせず、金銀財宝は突然、タップダンスを一心不乱に踊り始めた。


「タン! タッタタタン! タンタンタタタン! タンタタン!」


 それはもう、情熱的な愛撫のような、激しいダンスだった。マサシ少年はこのとき思った。


“急にタップダンスを踊りだすなんて、この人も普通じゃない! 変人だ! やっぱり『へそ曲がり』に入るんじゃなかった!!”


 マサシ少年がそんなふうに後悔をした瞬間、「ゴゴゴゴ!」という音と共に床に隠されていた扉が開いた。床下には、さらに広い空間が存在していた。


「さぁ、ここが本当の『へそ曲がり』のアジトだよ! このお屋敷は実はカモフラージュで、床下のこの空間でいつも集会を開いているんだ。マサシくん、今日から君も『へそ曲がり』の一員だ。改めてよろしくね」


 このまま、金銀財宝に招かれるがままに、この床下の階段を下りたらもう、後戻りはできない。マサシ少年はそう思い、多少躊躇(ちゅうちょ)した。しかし、”少年の好奇心”が引き返すという行為を許さなかった。マサシ少年は意を決し、静かに、しかし力強く階段を下りた。




「あの、さっきのタップダンスはいったい?」


「あれは“合言葉”見たいなもんだよ。あそこでタップダンスをして、そのタップダンスが違ったら敵とみなしてあそこの床下扉は開けないようにしているんだ。あそこの扉は中からしか開けられないようになっているからね」


「もしかして……僕もあのタップダンス覚えなければいけないんですか?」


「もちろん! 新入りはまずあのタップダンスを覚えることから始めるんだよ」


「はぁ……」


 マサシ少年の苦難はここから始まるのでした。


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