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第10話 崩壊

私はすぐに何がおこったのかを悟った。自分の身が危ないと知ったジュヌーン卿が先手をとって反乱を起こしたのだ。

「ハイランドの使節団はみな殺されたの!?」

私の問いにサームは沈痛な面持ちで頷いた。それを見たミスカ卿が立ちあがった。彼女の瞳に雷火が宿る。その美しいまでに苛烈な光に私は言葉を失いそうになる。

「ミスカ様?何を?」

「知れたこと!ジュヌーンを斬る!ハイランドの赤き鳳凰を殺すことなど不可能ということを思い知らせてあげる・・」

「ま、、待って!」

私は夢中でミスカ卿の袖をつかんだ。今彼女をジュヌーンに殺させたら本当にすべてが終わってしまう。

「あなたとライア様の夢を大事になさってください!あなたはここで死ぬべきじゃないんです!」

「でも私のせいで!」

ミスカ卿の悲痛な叫びが部屋に響く。私はサームを振り返った。

「私の隊はどうしてる?」

私の問いにサームは即答した。

「すでに招集はかけてあります。ジュヌーンの軍との遭遇を避けるため城外に布陣するよう命令をだしました!」

「ありがとう、上出来よ!」

サームはやはり最高の副官だ。

「ミスカ様」

私はミスカ卿に向き直った。

「今からこのサームがあなたを城外までお連れします。そこからハイランドに帰国なさりライア様にお伝え下さい。」

私は大きく息を吐き出した。苦しくて苦しくてたまらなかった。そして私はその言葉を口に出した。

「この国を滅ぼしてください、、と」

「あなたは?あなたも一緒に来て!」

ミスカ卿の言葉に私は心が救われた気がした。この人は私を救おうとしてくれた。それだけで十分だ。

「私には命を懸けて守りたい人たちがいるんです。大事な人たち、、」

私はサームに目配せをして外にとびだした。目指すのは、、王宮、、


王宮に向かい馬を走らせる私の目に飛び込んできたのは随所に満ちたジュヌーン卿の兵だった。ただ突発的な反乱だったのだろう、、まだ組織的な軍事行動にはうつっていない。

「奴隷将軍だ!」

私を殺せという命令が下っているのか数人の兵が私に斬りつけてきた。私は馬腹を蹴り更に速度を速め一気に王宮に乗り込んだ。

王宮の中は警護兵の死体で満ちていた。無理もない、誰が想像するだろうか?この国をささえていた三星の一人が突如反乱をおこすなどと、、

「!!」

襲ってくる兵を数人馬の足で蹴り倒し私は謁見の間に踊り込んだ。そこで待っていた光景は私の思考を一瞬停止させた。

教皇が倒れている。

それも彼の胴体から上がない。

「ほう、、まさかここにくるとはな、、」

しばし茫然となった私の耳にジュヌーン卿の声が流れ込んできた。

「ジュヌーン卿、、」

そこには全身を返り血で染めたジュヌーン卿がたっていた。その左手には無念の形相をした教皇ウルバヌスの首がさげられている。

「お前にとっては喜ばしいことだろう?この男を殺したいほど憎んでいたのはお前だからな。」

そういうとジュヌーン卿は左手の首を私にむけてほうった。ごろごろと気味の悪い音を立てながら首は私の足にあたってとまった。

「あなたは何も分かってない、、あなたはすべてを壊したのよ、、」

「壊して何が悪い?これから俺が新しいものを作ってやるさ。お前もその仲間に加えてやるぞ?欲しかったのだろう?自由が。」

「カミュ卿はどこ?」

私は一番聞きたくそして聞きたくないことを口にした。確かカミュ卿とシェリー様が王宮につめていたはず、、

「心配か?」

ジュヌーン卿は鼻で笑うと傍らの兵に合図した。

「クラン!」

私の前に引きずり出されたのはシェリー様だった。

「シェリー様!」

急いで駆け寄ろうとした私はジュヌーンの兵たちの剣のふすまにさえぎられた。

「カミュ卿はどこ!?」

「あいつに生きていられると面倒なんでな、事を起こす前に死んでもらった。死体を確認したくてもやめたほうがいい。切り刻まれて顔などわからん。」

「許さない!よくも兄様を!!」

シェリー様が絶叫するのを聞きながら私はショックでその場に倒れそうになった。

「何故俺が兄と同じくらい頭のきれるやっかいな妹の方を生かしておいたかわかるか?」

ジュヌーン卿の悪魔のような笑いを私は歯を食いしばって聞いた。

「妹の方を生かしておけばお前を使えるからだ。お前は役に立つ。これからハイランドと戦うにあたってな。」

「クラン!だめ!ここから逃げて!」

私は背中に背負った長剣に手をかけた。カミュ卿から頂いた初めての贈り物。あの日私は誓った。この人たちを命を懸けて守ろうと、、、

「わかったわ。シェリー様の安全は保障してくれるのね?」

「もちろんだ。こいつを殺せばお前は間違いなくハイランドに寝返るだろう?」

ジュヌーン卿はそういうと鎧にべっとりと付着した血をぬぐい悪魔のような笑みを浮かべた。

この反乱で教皇ウルバヌスはあえなくジュヌーン卿の手にかかり、王宮にいた守護兵は壊滅し残りの軍隊はすべてジュヌーン卿の手中におさまった。

更にハイランド使節団は全員惨殺され、神将カミュ卿もジュヌーン卿の差し向けた刺客たちの手にかかり命を落とした。また反乱時にかろうじて難を逃れた三星の一人ラシュディ卿はわずかな兵とともに王都を落ち延びていった。


そして私、クランロックハートは反乱者として王都にとどまることとなった、、、

こうして教皇ウルバヌスの統治するローディス教国は崩壊した、、、




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