67話 怒りの超覚醒
「(どうなってんだ……これ?)」
傷つきながらも立ち上がる女戦士サラ。彼女はよく知る少年の姿を見て、衝撃を受けていた。
「ぐはぁ!」
魔王の体が再び衝撃波によって飛ばされ、民家の壁に体を叩きつけられる。
それをした張本人の少年は魔王に冷たい目を向けたまま、ゆっくりとした足取りで近づいていく。サーヴィスはその姿を見て、ゾクリと背筋が凍りそうになってしまう。
「ウオオオ!!」
こんなはずはない、魔王の自分がありえないと恐怖を振り払いながら、黒い剣を握り締めてガットに向かう。
「ユミディテ」
「がぁぁ!?」
ガットは先程と同じ魔法を使うと、右掌を魔王に向けたまま左手をクイッと上に上げるように動かす。それと同時に衝撃波が、今度はサーヴィスの足元から発生。魔王の体が衝撃波によって、空高く舞い上げられる。
「ぐぅおお!」
そのまま地面に叩きつけられる、かと思えばサーヴィスは空中で体勢を立て直し、なんとか着地。しかしガットは何も反応を見せなかった。
それがどうした、と言わんばかりの目。魔王にはそれが見下されている感じがして、心底気に入らない。
「(あの魔王がまるで勝負になってない……ガット君、キミは……)」
目の前で繰り広げられる少年と魔王の戦い、そこで魔王が少年に圧倒されているという信じ難い光景に、ティアモは呆然と見つめるしか出来なかった。
「図に乗るなよ小僧が!!」
このままでは魔王としての沽券に関わる。その意地が魔王を突き動かすとサーヴィスは黒い剣を振り上げ、ガットに向かって真っ二つにせんと振り下ろす。
だが次の瞬間、ガットの姿はフッと消えてしまう。すると彼は魔王の背後に現れ、右掌を向けていた。
「ヘルブレイズ」
ガットの右掌から巨大な青白い炎の玉が飛び出す。それは高速で飛び、瞬く間に魔王へ命中すれば体は業火に飲まれていく。
「グギャァァァーー!!」
苦しむ魔王の叫び声が木霊していた。大きなダメージを受けている事は明白だ。
「(私の炎魔法よりも強力なのを……!?ガット君、貴方は一体……)」
フラフラと立ち上がりながら、マーヴェルもサラと同じく驚愕していた。自分以上に強力な魔法を扱うガットの姿に。
「(この我が……この魔王がこんな小童ごときに手も足も出ないだと……!?)」
信じられないという気持ちと共に、魔王から憎悪が溢れ出すと、それを力に変えていく。
「おんのれぇぇぇ!!」
業火を耐え切り、振り払って掻き消すとサーヴィスは黒い剣を両手で握り締める。そこからは強い殺意に満ち溢れていた。
「コォォォォ……!纏めて塵となってくたばるがいい小僧!!」
握られた剣からドス黒いオーラが発せられ、禍々しい力が魔王の剣に宿っていく。恐るべき魔王の魔法力が、そこには込められている。
「ダークフェニックス!!」
剣を上段で瞬時に振ると共に、そこから巨大な黒い鳥が出現。魔王の生み出した暗黒鳥のオーラが、ガットへと襲いかかる。
「ガット君……!」
満足に動けないティアモはガットに向かって叫ぶ。
「(避ければ仲間と共に消し飛ぶ!我の勝ちだ!!)」
回避不可能の最大の攻撃。正真正銘、これが魔王サーヴィスの切り札だ。
それにガットは避けようとはせず、焦りも無い。すると彼は右と左、両方の掌を横で合わせると暗黒鳥へ向けた。
「ブラスト」
ガットの両方の掌から、魔法力が込められた砲弾が発射。暗黒鳥の体をあっという間に貫き、消滅させながら魔王に向かっていた。
「な!?バカ……なぁぁぁ!!!!」
最大の攻撃、暗黒鳥を突破してきて避ける間もなく、サーヴィスはガットの魔法による砲弾に命中すると、鎧は粉々に吹き飛ばされて体も後方へ飛ばされる。
鎧の中に隠れていた銀髪の魔族の男が姿を現し、自分を守る鎧を失う。これが本当の魔王サーヴィスだ。
「何故……何故だ!?純粋な魔族の血統ではない、半端な存在の貴様に何故此処までの力が宿る……!?一体貴様の力の源は……!!」
傷つき、フラつきながらもサーヴィスが立ち上がると、ガットは既に攻撃へと入っていた。
「!!」
それを目にした時、魔王の目は見開かれる。信じられない光景だった。ガットが目を閉じて念じると、頭上に黒い鳥が出現。
その黒い鳥はついさっき、自分の手で作り出した暗黒鳥。ガットは魔王の最大の攻撃を、いとも簡単に真似してみせたのだ。
「そんな……!ま……!」
「ダークフェニックス」
魔王の声を聞く間もなく、ガットは暗黒鳥を魔王へ放つ。自らの最大の魔法が自らに返ってくる。
自分自身の力に恐怖したサーヴィスは逃げられず、あっという間に暗黒鳥に飲まれていく。
「ウギャァァァーーーーー!!!!」
暗黒鳥の中でサーヴィスの体は消滅していき、魔王の断末魔は暗黒鳥が消えるまで続き、やがて魔法と共に魔王はこの世から消え去った。
「やった……?」
セリーザが立ち上がり、ガットの方へと歩み寄って行く。
「ガット君……?」
シャイカもフラフラと立ち上がり、両手で杖をつきながら同じくガットに近づいていた。
するとガットは突然フラッと、地面に仰向けで倒れてしまう。
「ガット君!」
「ガット!」
傷を負った女性達は一斉に、魔王を倒した小さな英雄へ向かった。
次回で最終話となります。




