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66話 本当の正体

「魔王の……子?」


 ガットにとってあまりに衝撃の事実。自分が魔王の子などと、全く考えもしていなかったので、魔王の言っている事が追いついて来ない。


「記憶が綺麗さっぱり無いようだな。どうやらあのキャットヒューマンの女が何か小細工を施したか……連中は元々そういった類に長けているからな」


 ガットには孤児院以前の記憶が無い。それは推測の領域でしかなかったが、ガットの母メルシャが息子の記憶を消して、集落を滅ぼした忌まわしい出来事を、忘れさせる為だと思われた。


 しかし今、また新たな可能性が生まれようとしている。


「ガットよ。貴様は間違いなく……先代の魔王デモーニの子だ。何より貴様の中に流れる魔力は魔族、魔王でなければ宿せん物なのだ!」


「 ぼ、僕が……魔王の子……!?」


 あまりの衝撃に足元がふらつきそうになってしまう。魔王の言葉にどんどん飲まれ、底無し沼へと身を沈めていくような感じだった。


「見た所貴様はまだその力に完全な覚醒はしていないらしい。我としては安心したがな」


 ガットを見下ろす魔王。そのガットは顔が青ざめたままだ。


「我は魔族として優れた力を持つ者。だが魔王の力を持つ者と戦えば、我とてどうなるか分からん。しかしデモーニ……奴は力が劣っているにも関わらず、魔王となった。我より劣っている奴がだ!」


 激情に駆られたか、サーヴィスは声を荒げていた。先代の魔王こと、ガットの父親に思う所があるように見える。


「あろう事か奴はキャットヒューマンの女と恋に落ちて、結ばれて子を作った。魔王としてあってはならん事を奴は平気で行う!そんな愚かな魔族に魔王の資格などない……」



「ガット、貴様の愚かな父親……魔王はこのサーヴィスがこの手で殺した。そして我が新たな魔王となったのだ!」


「……!」


 先代の魔王を消したのは今の魔王サーヴィス。自分が魔王の子と知った後、まだ見ぬ父親を目の前の存在が殺したとなって、ガットの心は大きく揺らいでいく。



「フフ、もう一つ教えておこうか。……我が忠実なる守護神よ。我の声に応え、その力を振るえ!」


 サーヴィスは剣を地面に突き刺すと、魔王の背後に巨大な魔法陣が浮かび上がる。そこから巨大な存在が姿を見せた。


 人とも魔物とも違う。山のように大きく、人のように手足があって全身が白銀の鎧に包まれているようだ。


「これは……!?」


 以前ティーナ、セリーザから聞いた事がある。巨大な敵が集落を襲ってきた事を、ガットは目の前の大きな存在を見上げていた。


「これは我に忠実な下僕、ゴーレムと呼ばれる人形だ。こいつは良いぞ?感情などなく、我が命に忠実に従い動く。村を滅ぼせと命じればその通り滅ぼしてくれたからな」


 村を滅ぼす、サーヴィスの言葉を聞いてガットはまさかと、再び心を揺さぶられる。


「どうやら気づいたか、ガットよ。貴様を連れて逃げ出したメルシャを探し出し、奴の集落をこいつに襲わせた。そして滅んだという訳だ!」


 父親に続き、母親と共に暮らしていた居場所をも奪ったサーヴィス。その魔王は愉快そうに笑う。


 自分のやった事が間違っているとは微塵も思ってなく、不幸な目に遭ったガットを嘲笑っているようだった。


「どうだ!?憎いか!?殺したいか!?だが今の貴様には何も出来ない!無力だ!そして無力のまま貴様は死に、仲間の女達も後を追う事となる!」


 何も言えなくなり、顔を俯かせるガットにサーヴィスは高らかに笑いながら、煽るように言葉を続けていた。


「何故すぐ殺さずわざわざこうして喋るか分かるか!?絶望の事実を叩きつけ、絶望に染まりきって死ぬ貴様を眺める為にな!」


 魔王はガットの抵抗などたかが知れている、無力だと考えているようだ。なのでただ殺すだけでは味気ないと思い、自分が楽しめるようにやっただけに過ぎない。魔王の気まぐれだった。


「さぁ我が下僕ゴーレムよ……勇者共にトドメを刺して来い!」


 魔王の命令を受けると、ゴーレムの目が赤く光ると共に山が動き出す。




「(全部……全部終わる……僕も、皆も死んでしまう……)」


 ガットの心は奥深く、暗闇の底まで突き落とされていた。事実を、絶望を魔王によって突きつけられ、その場から動けなかった。



「(……そもそも、何でこんな事になったんだ……?)」


 こうなってしまった事、一体何が原因なのかガットは闇の中で考える。そして一つ答えを見つけた。


 自分の父親を殺し、母親の故郷を滅ぼし、そして今も堂々と生きて自分の仲間を消そうとしている存在。


「(……こいつらがいなければ……こいつらが存在していなかったら……)」


 目の前にいる魔王の存在。それが目に入ると、ガットの中で強い感情が生まれ始めていた。


「(こいつらが奪った、こいつらが全部壊した)」



「(憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!)」


 生まれた感情、それは初めて抱く強い憎しみと殺意。



 そしてガットが顔を上げた時、目はギラリと鋭くなり、足を上げてサラを踏み潰そうとしていたゴーレムに向けられる。


「死ね」


「!?」


 サーヴィスの体がゾクッと寒気で震え上がる。魔王が少年のたった一言で恐怖したのか、信じられないと思う間もなくガットは左掌をゴーレムの方へ向けると、そこから黒く巨大な刃が発生。


 避ける間もなくゴーレムの頑丈な体はあっさり切断され、上半身の体が地面に崩れ落ちて、分断した体は消滅していく。


「ガット!?貴様一体……!」


「ユミディテ」


 自慢の下僕をあっさり屠られ、動揺する魔王にガットは容赦なく魔法を唱える。右手をサーヴィスに向けると、そこから衝撃波が発生。母親と同じ衝撃波を起こす魔法だ。


「!?ぐわぁぁぁーー!!」


 魔王は凄まじい勢いで後方に吹き飛ばされ、民家の壁に激しく激突すると家は倒壊してサーヴィスは埋もれていく。


 その姿にガットは何も思わず、ゆっくりと吹き飛ばされた方へ歩いていった。


「ぐ……うおおおー!」


 瓦礫を弾き出しながらサーヴィスは立ち上がる。しかし目の前のガットを見ると、魔王は驚愕を隠せない。


「(どうなってる……!?何故この魔王がこんな……!まさかこいつ……!?)」


 その時サーヴィスはハッと気づく。怒りによって魔王の力が覚醒してしまい、それが想像を絶する力を持ったのだと。


 無表情で近づいて来るガット。それはまるで小さな魔王を思わせるようだった……。

次回、ガットのフルボッコタイムが発動します。

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