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65話 VS真魔王サーヴィス

「我は新たに魔王となり、自分が全ての頂点へ君臨した事で……喜びに打ち震えた」


「(新たな……?その前にも魔王がいた?)」


 鎧に身を包む自らの左掌を眺め、サーヴィスはその頃の心境を話す。ガットもセリーザ、マーヴェルと共にレノムの傍まで駆けつけ、魔王の話を聞いて少し気になる部分があった。



「だがこの世は弱肉強食。圧倒的な力があっても団結した力が対抗してきては厄介、なので我もその力に対抗しようと動き出したのだ。手始めにこの世の最も優れた王を殺し、我がそれに成り代わって人間の頂点に立つ。それがこの国の王という訳よ」


「!?では、オルスタ王はもう既に……!?」


 サーヴィスの言葉を聞いて顔が青ざめていくレノム。本当のオルスタ王は魔王の手によって、この世を去っていた。


「人間の王になるというのは実に都合が良くてな。我に敵対する厄介な魔物、と気づく事なく勝手に滅ぼしてくれる。お前や兵士達は随分と都合の良い駒として活用させてもらったぞ?」


 守るべき主がこの世を去って、大きく落胆して悲しむレノムを魔王は嘲笑うかのように言い放つ。


「全部……お前の都合で魔物達を倒していっただけだったんだね」


「そういう事だ。厄介なゴミ掃除をしてくれて、手間が省けた」


 人の命、魔物の命をなんとも思っていない巨悪をティアモは剣を強く握り締めて、魔王を睨みつける。



「その口、いい加減閉じなぁ!」


 そこへサラが大剣を振りかざし、魔王を斬り裂かんとしていた。女戦士も我慢の限界を迎え、怒りのままに行動。


「フンっ!」


 ギィィンッと金属同士のぶつかる音が響き渡る。サーヴィスは手に持っていた黒い剣で、サラの大剣を完璧に受け止めていた。そして前蹴りでサラの腹部を蹴り飛ばし、彼女は吹き飛ばされていった。


「ぐあっ!」


 仰向けに倒れ、サラは腹部を押さえて苦しそうな顔を見せる。



「バーサク!」


 そこにセリーザの魔法が発動すると、サーヴィスの理性を奪い凶暴化させようと試みた。


「くだらん、我にそんな魔法が効くとでも……?」


「だろうな」


「!?」


 サーヴィスに魔法が効いている様子は無い。だがセリーザは想定内だったか、慌ててはいない。


 これはただ注意を逸らす時間稼ぎだ。



「地獄の業火に焼かれて消え失せなさい……この世に混沌をもたらす魔王よ!ブレイズウォール!!」


 マーヴェルの巨大な青白い炎が、魔王を飲み込み焼き尽くす。大掛かりな魔法を使う為、時間はかかったがセリーザが稼ぎ上手く発動させていた。



「サラがやられた分、追い討ちをかけさせてもらうからね!ブレイブフレイム!」


 先程の巨大な炎が再び発生。ティアモの炎がマーヴェルの炎と合わさり、何者をも焼き尽くす勢いで燃え盛る。


「これだけの炎なら魔王といえど……」


 シャイカは勝ったと思い、小さく左手の拳を握り締める。



「……!?皆、離れてください!」


 その時、ガットは炎の中から恐るべき力を感じ取り、彼女達に逃げろと叫ぶ。


「ウォォォーーー!!」


 炎の中から雄叫びが轟くと共に、周囲に衝撃波が発生。


「わぁぁーー!」


「うわぁぁ!」


「きゃぁぁ!!」


 凄まじい衝撃波にティアモ、セリーザ、マーヴェルのいずれもが吹き飛ばされて、いずれも民家の壁に激突すると大きなダメージを受けてしまう。


「あうっ!」


 衝撃波が離れたガットとシャイカにも飛んでくると、咄嗟にシャイカはガットを抱き締めて庇う。その体が飛ばされて地面に叩きつけられる。


「シャイカさん!?」


「ガット君……逃げた方が、いいです……」


 シャイカの身を心配するガットに、シャイカは傷つきながらも彼に逃げろと伝えた。


「皆さん……!」


 ガットの目の前にはシャイカだけでなく、仲間の女性達が倒れている光景。


 猛者の女性達がいずれも圧倒され、ガットは驚愕してしまう。影武者の時は戦えていたのが、本当の魔王となるとやはり力は数段上のようだ。



「う、うわぁぁ!!」


「逃げろぉ!勝てっこねぇよぉーー!」


 戦いを見守っていた市民達は魔王の力を目の当たりにして、勇者達が倒れるのを見れば一斉に逃げ出していく。


「お、俺達も逃げよう!あの化け物は無理だ!」


 兵士達も魔王を前に、逃げ出そうとしていた。


「馬鹿者!!」


「!?」


 そこにレノムから兵士達に一喝が入り、兵士達はビクっとなる。その彼らに騎士団長は厳しい目を向けた。


「まずは民達を安全な場所に誘導するんだ!国を守る我らの今やるべき事は民を守る事!忘れたか!?」


「は、はっ!騎士団長殿!」


 今はボロの布切れの格好だが、今の彼は騎士団長の顔となっている。



「我の前に立ち、敵となった事を後悔して散るがいい……女神に選ばれし勇者め」


 サーヴィスは壁に叩きつけられて倒れるティアモへと、ゆっくりと近付いていく。その手には黒い剣が握られており、トドメを刺す気なのは明らかだ。



「ま……待てぇ!!」


 サーヴィスとティアモの間へ、割って入るようにガットは魔王の前に立つ。恐れが見えながらも、彼の目は魔王を見上げて逸らさない。


「皆の事は、ぜ……絶対やらせないからな!」


 自分が今皆を守らなければならないと、圧倒的な存在感を放つ相手にガットは勇気を振り絞る。



「……そうか。貴様がシャーリーの言っていたキャットヒューマンの小僧か。こんな所で会えるとはな、その魔力はよく覚えているぞ」


「だ、だったら何だよ!?僕も厄介者として始末するか!?」


 ガットを見下ろすと、サーヴィスは愉快そうに笑っていた。


「はは!これは傑作だ!貴様、何も覚えていないのか!」


「え……?」


 覚えていないのかと魔王に言われ、何のことだと過去を思い返すが心当たりは無い。


「シャーリーの奴もそこまでは気づいていなかったようだな。小僧、貴様の正体について」


「しょ、正体?だから僕は人間と思ってたけど本当はキャットヒューマンで……!」


 正体ならばもう既に分かっている。自分は人間ではなく、キャットヒューマンである事。ガットは正体はそれだろうと思っていた。


 だが魔王は知っている。それとは違う別の正体について。



「違うな、貴様はキャットヒューマンなどではない!」


「!?」


 魔王から衝撃の言葉を言われ、ガットは目を見開く。



「魔王という物は古から力のある魔族がなる。それが定めであり、次の魔族を生み出す為に魔族同士が繋がり世に残していく。我々魔族はそうして歴史を作ってきた」


 サーヴィスから魔族の歴史について語られる。一体それがなんなんだと、驚きが残る中でガットは魔王の話を聞く。


「だが我の前……つまり先代の魔王に例外が起きた。あろう事か、その魔族は女のキャットヒューマンを愛し、結ばれた……」


「それは……!?まさか……!」


 話を聞くとガットは気づく。気付いてしまう。自分でも分かっていなかった自らの本当の正体を。



「小僧、ガットよ。貴様は我の前の魔王の子……魔族とキャットヒューマンの間に生まれた例外の存在なのだ!」

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