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63話 衝撃の行動

 朝からオルスタの城下町は騒がしかった。


 普段ならまだ人々は眠っていてもおかしくない時間帯だが、今日に関しては特別だ。


 オルスタ王国の騎士団長レノム。彼が魔族と繋がっていたとされ、人々の信頼を大きく裏切ったとなって彼は今日、この広場で処刑となる。



「信じられねぇよ……あのレノム騎士団長が」


「人は見かけに寄らないと言うけど、本当だったねぇ……」


「騎士団長って悪い人だったんだ」


「そうよ坊や。ああいう汚い大人になっちゃ駄目よ?」


 広場の中央に連れて来られたレノム。人々の目が突き刺さり、一人一人の視線が冷たく感じる。


 国の為に身を粉にして働き、体を張って守り続けたというのに、魔族と繋がってるという疑いがかけられだ途端、こんな仕打ちだ。


「(俺の人生は……何だったんだ……)」


 レノムは分かっている。このまま進めば自分が死に、人生が終わってしまう事を。鎧を身に着け、剣を振るう騎士団長が今では両腕を鎖で拘束され、ボロの布切れを着せられ、騎士としての面影はもはや無い。


 これが自分の人生だったのか、と思えば納得出来ない。自分は魔族と繋がっていないのに、これで死ぬのは大きな悔いが残ってしまう。


 視線が王の方に向くと、彼は用意された椅子に座ってレノムを残念そうに見ていた。



「元騎士団長レノム……こうなってしまった事が非常に残念だ。お前は国の為に尽くしてくれたが、真の姿がそれだったとは……悲しいものだな」


 処刑台に立つレノムへ、オルスタ王から最期となるであろう言葉を送る。


「騎士団長が魔族と繋がってたなんて、どうりで世界が全然平和にならない訳だ!」


「騎士がそんなことするなんて最低!」


「恥を知れ!」


 レノムに対して人々の言葉が刃となって、彼の身を斬り刻んでいく。もう彼がそういう人物だという認識に変わり、騎士団長への尊敬や感謝は欠片も存在しない。



「元騎士団長レノム……貴方は王国の為に剣を振るい、戦い、守り、騎士の鏡でした。しかし何時の間にか貴方自身が闇へと堕ちてしまっていた……黒く染まってしまった魂ですが、神の元へ迎えばきっと貴方の魂は浄化されて元通りとなる事でしょう」


 神父からレノムに送る言葉は処刑宣告も同然。レノムの後ろには鎧に身を包み、剣を構える騎士の姿がある。


 この剣によってレノムを葬り去れば、今回の処刑は完了。これがオルスタ王国流の古から伝わるやり方だ。


「最期に何か……言う事はありますか?」


 神父から問われると、レノムは口を開く。



「俺は……断じて魔族と繋がっていない!そんな事は一切やっていない!人々の為に尽くして来た!俺は、無実だ!」


 騒ぎ出したレノムに対して、騎士達が彼を取り押さえる。


「まだ言ってるの?」


「助かろうとして足掻いてるんだよあれ」


「今更助かろうとしてんじゃねぇぞ悪魔ー!」


「お前が本当の魔族だろうが!!」


 レノムの言う事を民達は信じておらず、再び彼に対して罵声を浴びせていく。



「もうよい、始めろ」


 そこにオルスタ王から、処刑を始めるようにと命令が下される。


「罪人レノムよ、全知全能の神に祈るがいい。救われるがいい」


 神父の言葉と共に騎士の剣が振り上げられる。


「(……くそぉ!)」


 レノムは目を閉じて死を覚悟した。この世に大きな悔いを残しつつ……。




「ちょっとストップー!」


「!?」


 緊迫する場面で、場違いな声が飛んで来た。その場の者達が声のした方を見れば、そこにはティアモ、シャイカ、サラの3人が歩いて来る姿があった。


「勇者様!?」


「何で勇者様が罪人の処刑を止めたんだ!?」


 急な予期せぬ乱入者に、人々はざわざわと騒ぎ出す。


「勇者達よ。一体何事かな?今は見ての通り相手をしている暇が無いのだ。用なら後で城へ来るよう……」


 オルスタ王は彼女達の姿を見て、今は忙しいので後にしてほしいとだけ告げようとする。


「いいや、僕達の用事はそちらの今やろうとしている事と関係大有りなんですよね」


「どういう事だ?」


 一体何を考えてるのかと、オルスタ王が考え込んだのをよそに、ティアモは話を進める。


「皆ー!知りたいよねぇ?誰が本当に悪いのかをさぁ!」


「!?」


 勇者の言葉に皆が困惑した顔を見せる。誰が悪いかなど、そこに捕まっているレノムしかいないだろうという者がいれば、他に誰か居るのかと思う者も出て来た。


「おい、突然出て来て場を混乱させるな!処刑の邪魔は勇者でも許されんぞ!?」


 騎士達が剣を取り出し、切っ先をティアモ達へ向けるも彼女達に恐れは無い。


「処刑ねぇ。それが間違ってたら……君達とんでもない汚点を残す事になっちゃうよね?無実の騎士団長を葬った愚か者達としてさぁ」


「!?」


 逆に彼らへ言葉を浴びせるティアモに、騎士達の剣先が震える。自分達が間違ってるのかと、動揺が出て来た証拠だ。


「一体何が言いたいのだ!?勿体つけてないで早々に言うがいい!」


「くだらん事で中断させたらタダでは済まさんぞ!」


 側近の兵が苛立った様子で、ティアモに槍を向ける。


「つまらない事じゃ終わらない自信しかないから大丈夫」


 勇者の不敵な笑みは崩れず、彼女はレノムの方へとゆっくり歩み寄る。



「本当に悪い奴は……あいつさ!サラマンダー!ブレイブフレイム!!」


「!?」


 ティアモの頭上にサラマンダーが登場し、力を与えるとティアモの右手から巨大な紅蓮の炎が発生。それが真っ直ぐオルスタ王の所へ伸びて、彼を飲み込み焼き尽くす。


「なぁ!?オルスタ王!」


「えええ!?」


 勇者の行動に民は驚きを隠せず、兵達は一斉に王へと駆け寄る。だが灼熱の炎は容易に近づけず、王の身が焼かれるのを見てる事しか出来なかった。



「勇者キサマぁ!血迷ったか!?よりにもよって我らが国王を攻撃とは!」


「まさか国王が仕組んだと言わんだろうなぁ!?」


 騎士達は怒りの顔を見せて、今にも勇者一行へ斬りかかりそうだ。


「そうだよ?そして僕の予想が正しければ……」



「あれはこの程度じゃ死なない」


 勇者の言葉と共に、炎は突然掻き消されていった。すると次に姿を見せたのは、彼らのよく知る王の姿ではない。


「驚かされたぞ……勇者よ」


「!?」


 明らかに王ではない低い声がその場に響く。


 そこに姿を見せたのは黒い鎧に身を包み、大きな人型の存在があって、地面に黒い大剣を突き刺していた。


「また会ったね……それとも初めまして、かな?魔王サーヴィス」


 オルスタ王が居た場所には魔王が立つ。その魔王に対して、勇者は真っ直ぐ見据える。

次回は作戦の裏側、そして再び魔王との激突です。

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