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60話 潜入

「あれ!?勇者様達、何時帰って来ていたんですか!?」


 町中でティアモ達の姿を見かければ、彼女のファンである住民達から声を掛けられる。


「えー?ずっと前から帰ってたよ。僕達存在感薄れちゃったかなぁ?」


「そんな!?存在感ありますよ!全然気づかなかった……!」


「何時帰ってたんだっけ……!?」


 ティアモは笑顔で動じる事なく、ずっと前から帰っていたと言い張り、ガットの移動魔法で一気に帰って来た事は誤魔化した。


「噂で聞きましたけど、あのレノム騎士団長が捕まったんですか?」


「そうなんだよ!まさかあの人が魔族と繋がっているなんてなぁ……」


「え、皆それ知ってんのかよ?」


「王国の方で町にその知らせが出て我々も知ったんですよ!いや、ちょっと騎士団長が魔族となんてショックだなぁ……」


 会話にシャイカとサラも加わり、町の皆もどうやらレノムが魔族と繋がっているというのを、王国からの知らせで知ったらしい。


「でも騎士団長は捕まりましたし、明日には広場の方で朝に処刑されるみたいですから、王国のおかげで迅速に解決です!」


「!!」


 明日にレノムが処刑される。彼らの良かったという会話を聞く中で、一同に衝撃が走った。


「(これ、もし此処まで一気に移動出来ていなかったら……!)」


 ガットが移動魔法を使わず、正規のルートで戻っていたら明らかに間に合っていなかっただろう。グズグズしている暇は無い。


「ありがとう、じゃあ僕達はこれで」


「勇者様ー!頑張ってくださいー!」


 笑顔でティアモは住民達へ手を振ると、彼らのエールを受けながら一行は立ち去り人目のつき難い、路地裏に向かう。




「処刑されるかもしれない、その可能性を考えていたとはいえ……まさかこんな早く決まるなんて!」


 暗い路地裏で周囲に誰もいない中、プレインは壁に右拳を打ちつける。どうする事も出来ない、何処にもぶつけられない怒りを壁に向けていた。


「王国としてはそれだけ許せないようだな。魔族と繋がりを持つ騎士団長の存在を」


「何の慈悲も無し、という感じですわね」


 レノムと面識の無いセリーザやマーヴェル。そのおかげで処刑と聞いても、冷静に考える事が出来ている。



「しかしガット君……あんな移動魔法をいつの間に覚えたんですか?誰もそんなの教えていませんでしたよね」


 シャイカはガットが急にあのような、移動魔法を習得した事に驚いたままだ。


「いえ、あの……シャーリーっていう悪魔がそれを使ってるのを思い出して、イメージしたら出来ちゃいました」


「あの道具屋で僕はガット君と初めて会ったからね。とりあえずガット君にとっては、あの場所に一番馴染みがあったから移動先がそこになったという訳だ」


 上手く説明出来ないガット。彼自身も急に出来た事に対して、戸惑っている部分があった。道具屋にはガットだけでなく、ティアモも覚えており、そこが一番印象に残ってたんだと納得して頷く。


「それが無くて、普通に移動して……船にトラブルとかあった日にゃ間に合ってねぇよな絶対」


 サラの言うように大陸から大陸に移動する為、港町で船に乗る必要がある。それを飛ばして、オルスタ王国へ帰って来れた事はかなり大きかった。


「レノムさん、何処に捕らえられてるんでしょうか……?」


「罪人はオルスタ城の地下牢獄へ厳重に閉じ込めるようにしている。あの人が捕まっているとしたら、おそらくそこだ……」


 ガットのレノムが何処にいるんだろう、という言葉にオルスタ城の兵士であるプレインが答える。場所は分かってるが、プレインの表情は暗い。


「近づこうにもあそこは多くの兵達が守っている。面会をしようにも、罪の軽い罪人ならともかく明日に処刑が決まった者と会う事は許されない……」


 やはり兵士として、オルスタ城の内部の事はよく分かっている。地下牢の警備が、どんなに厳重なのかも把握していた。


「あ、場所分かってるんだ?だったら案内を任せられるかな?」


「え?いやしかしそれは……!」


 ティアモに気軽な感じで道案内を頼まれ、プレインは戸惑う。厳重な守りが敷かれている。


「連中の守備については何とかなると思うぞ」


「え!?」


 容易いと、自信がある表情でセリーザは言い切る。驚くプレインは彼女の能力をまだ知らない。それがどんな堅牢も突破出来る事も。




 オルスタ城は警戒態勢となっており、現在謁見なども出来ない状況で城の関係者以外は城に入れない。その地下にある牢獄は更に守りを固め、重罪人を絶対外に出さないようにしている。


 本来ならアリの一匹も通れない所だが、姿さえ見えなければ話は別だ。


「……まさか、私の地下帝国に忍び込んで来た時と同じ事を私もするとは思いませんでしたわ。こうやって忍び込んでましたのね……」


「便利な魔法を使うよねぇ、ダークエルフって。おっと、兵士が近いから黙ってー」


 マーヴェルは複雑そうな表情を見せながらも、一行と共にオルスタ城へ忍び込んでいた。全員が今セリーザの魔法によって、姿を消した状態である。


「俺としてはバレたらクビどころじゃなくてヒヤヒヤするけどな……!」


 城の兵士でありながら、プレインは城に潜入して城を案内している。これが王に知られでもしたら、彼は間違いなく終わるだろう。なので気が気じゃない。



 姿を消した一行は門番の目を盗み、城の中に潜入。そこからプレインの案内で、地下牢へとスムーズに進んでいく。


「重罪人は一番奥のはずだ」


「じゃあこのまま奥へ直行ですね」


 レノムは魔族と繋がってるとされ、重罪人扱い。それも明日に処刑という身なので、間違いなく奥の牢屋にいる。プレインが居なければ、こんな迷いなく進む事は無かったかもしれない。



「あそこだ……不味いな、見張りが立っている」


 目的地まで来た一行だが、奥の牢屋の前には見張りの姿。レノムと話をするので、この上なく邪魔だ。


「……スリープ」


 その時、マーヴェルが小声で魔法を発動。見張りは目の前に振り子のような物が見え、それが目に入ると急激な眠気に襲われる。


「グゴー、グゴー、グゴー」


 見張りの兵士は倒れると、そのまま大きなイビキをかいたまま爆睡。瞬時に夢の世界へ旅立ったようだ。


「おお?お前炎だけじゃねぇんだな」


「失礼ですわね。炎魔法は最も得意ですが、それ以外もちゃんと使えますのよ?」


 炎以外の魔法を使う所を見て、素直に感心するサラにマーヴェルは得意気な顔を見せる。



「レノムさ……!?」


 ガットは牢屋で鎖に繋がれ、拘束されたレノムを発見。その彼を見て思わず言葉を飲み込んでしまう。


 そこに居た彼はボロの布切れを着せられ、体中のいたるところまで怪我を負ってグッタリとしていた。今のレノムは、あの騎士団長だった頃の面影は全く無い……。

次回はレノムから何があったのか、話を聞きます。

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