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59話 距離と空間を超えて

「捕まったぁ?逃げてたんじゃねぇのかあいつ」


 ついこの前は逃亡したと聞いていたが、サラは王国に捕まったと聞いて急だなと思った。


「それが、あの方はどうもオルスタ王国にずっと身を潜めていたらしいんだ」


「目を付けられた王国にわざわざ?あまりに危険じゃありませんの?」


「灯台下暗し、と言うがそれが狙いだったのかもしれん」


 プレインからレノムが捕まった詳細について聞くと、彼は遠くへ逃げる事なく、王国内に残っていた。無謀だと言うマーヴェルに、セリーザは案外それが狙いで気づかれないのだと推測。



「(うーん、でもやっぱり危なそうだよね……僕だったら絶対遠くに逃げる……)」


 レノムは王国から目を付けられている。にも関わらず遠くに逃げようとせず、わざわざ王国に潜んでいた。


 ガットは彼が何故そうしなければならなかったのか考える。レノムは騎士団長にまで上り詰めた男。王国で大丈夫だと思って、呑気に逃亡生活を送っていたとは考え難い。


「(何か理由でもあるのかな?王国に留まるしかなかった理由が……)」


 いくらガットが考えても答えは見つからなかった。


 やはりレノム本人に直接聞くしかないが、王国に捕まってしまったとなれば、彼に会う事は至難の業だろう。



「では、一刻も早く彼から情報を聞き出しましょう。場所が分かった今なら会えるようかけ合えば」


「しかし、此処からオルスタ王国に今から向かうとなると時間が……」


 シャイカは早く行こうとするが、プレインは難しい顔を見せる。その理由がリーゾ王国からオルスタ王国まての距離だ。


「どんなに最速で行ったとしても丸一日、俺がその情報を聞いて此処に駆けつけるまでもかなり時間がかかった。あまりにグズグズしていたら……」



「レノム騎士団長は処刑されるかもしれない……!」


「!?」


 あまりに時間をロスした時、レノムは彼らが情報を聞き出す前に王国によってその命を落とす恐れがある。プレインからそれを聞かされ、一同の間に衝撃が走っていた。


「処刑!?疑いかけられて捕まっただけだろ!」


「流石に重すぎるんじゃないか?」


 何故いきなり処刑にまでなるのか、サラは納得行かずセリーザも罪が厳しく、重過ぎなのではと続く。


「魔族や魔物と繋がりを持つ事は許されない。それも皆から信頼されていた騎士団長がそうなっては全てに対する裏切りだと、王国が絶対許さず彼を裁く事になる……」


「……!」


 王国が魔物と親しくなる事を許さない。信頼される騎士団長、という立場があっての上乗せされた厳しい罰だろう。ガットは自分が魔物とバレてしまえば、ティアモ達が本当に危なかったのだと冷や汗が頰を伝ってくる。


 人と人ならざるものが共にいる事は許されない。その現実を改めて突きつけられたような気分だ。


「(本当にあの人が魔族の仲間、または魔族だったのか……聞きたい。知りたい……けど)」


 ガットの中で真相を知りたいという気持ちが強くなる。ただ距離と時間の問題が大きく立ち塞がり、一同の頭を悩ませていた。


 此処から一瞬で移動する事でも出来たら、それは一気に解決するだろうが、そんな方法は無い。


「(一瞬で移動出来るなんて……!?)」


 その時、ガットの頭の中である出来事が蘇る。



「イスタンテ!」


 シャーリーがその魔法を唱え、仲間と共に一瞬でその場から姿を消してみせた。


 それが出来たら。ガットは意識を集中させる。


「(しっかり集中……精神を研ぎ澄ませて……!)」


 魔力を高め始め、そこに行きたいと頭の中にオルスタ王国を思い浮かべる。



「イスタンテ!!」


「!?」


 ガットが移動魔法を唱えると、周囲の空間に歪みが生じていく。次の瞬間にはその場にいる者が、屋敷から忽然と姿を消していた。




「う〜、頭痛ぇ〜。ガットのガキが辞めてなきゃ俺がこうして立つ事も無かったのによぉ……」


 オルスタ王国の道具屋で、店主のダラシが二日酔いで頭を痛めながら店に立っている。その口からはガットが急に辞めた事に対して、文句が飛び出ていた。


「あの金も全部飲んじまったし、また金転がり込んで来ねぇかなぁ?」


 都合の良過ぎる事をダラシが考えていた時。



「わぁぁ!?」


「え……ギャァァァ!?」


 急にガット達がダラシの頭上にパッと現れ、次々と彼の上に降って来る。


「あ、あれ?此処って道具屋……!?」


 ガットにとって少し懐かしい風景が目の前に広がっていた。かつて自分が居候で転がり込み、世話になった道具屋。ガットにとっては過ごした時間が長く、馴染みある場所だったせいか強くイメージで現れたようだ。


「お酒臭いですわ!誰ですの、この品の無さそうな男は!?」


 周囲に漂う酒臭さ。マーヴェルはそれを不快に思い、顔を顰めながら下敷きとなって、伸びているダラシを見下ろす。


「えーと……一応此処の道具屋で僕がお世話になった人です……」


「こいつ、ダラシじゃないか?不真面目な道具屋でお馴染みの……て事はオルスタ王国か!?」


 ガットが彼について説明すると、プレインはダラシを知っているようで、彼を見れば此処がオルスタ王国だと分かる。


「とりあえず、この人が目を覚まして色々騒ぎになれば面倒そうだから行こうー」


 ダラシが目を覚ます前に、皆に知られる前にティアモが去ろうと言えば、一行は急いでその場から立ち去った。


 思わぬ所でガットの魔法覚醒によって、極めて単時間でオルスタ王国に帰って来る事に成功する。

次回は情報収集しつつ騎士団長レノムの元へ目指します。

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