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58話 疑いをかけられた王国の騎士

「レノムって……あの人!?」


 その名前を聞いてガットは、自分に疑いの目を向けていた騎士団長の顔を思い出す。


 オルスタ王国を守る騎士団長。兵の中で一番強く、王の信頼が厚い存在のはずが、その彼が魔族の疑いをかけられていると言われて状況が飲み込めなかった。


「……誰ですの?」


「とりあえず国で上に立つ者が魔族と繋がりを持ち、裏切っていたという事らしい」


 オルスタ王国の騎士団長については、その場にいなかったセリーザやマーヴェルは当然知らないが、レノムという者が疑われているという事は把握する。


「あり得ん!あのレノム騎士団長に限って魔族と繋がって、我々を裏切ったなどと……そんな事は間違っている!」


 これにプレインは信じられないと、声を荒げていた。そこに門番が何だ?という風にこちらを見てくる。


「ちょっとちょっと!此処では目立ちますわ。場所を変えましょう」



 一行はマーヴェルの案内で、プレインと共に彼女の屋敷へと再びやって来た。屋敷内へ入ると、城の大広間を思わせるような広い部屋で腰を落ち着ける。


「まず、何でそんな事になったのかなー?彼がそういうやらかした所を誰かみたとか?」


 メイド達がそれぞれに飲み物を出して立ち去ったのに合わせて、ティアモはプレインへ詳細について聞く。


「事の発端は1人の騎士とメイドによる目撃談だ。彼らがレノム騎士団長と魔族が何やら陰でコソコソと話しているのを、聞いたらしいんだ」


「……おい、まさかそれだけの根拠で疑いをかけたんじゃねぇよな?」


「事の発端と言っただろ。最後まで聞け」


 サラは根拠として弱いだろうと、ジト目をプレインに向けるも彼の方は話を続ける。どうやら更なる根拠があるらしい。


「それからなんだ。他の城の者達が、レノム騎士団長が魔族や魔物達と親しそうに陰で話しているのを何度か目撃するようになったのは」


「親しそうに……あの騎士団長さんが」


 最初に自分を疑っていたレノムが、実は魔族と繋がっている。だったら自分にあんな疑いの目を向けたのは何だったんだと、ガットの中で疑問が生まれ初めていた。


「それが重なって、国の方ではレノムの野郎に疑いをかけたと。んでそいつは捕まっちまったのか?」


「いや、あの人は……逃亡したらしい。オルスタ騎士団が総掛かりで捜索しているが、見つかっていない。違う大陸へ逃げたのかもな……」


 サラの捕まったのか、という言葉に首を横に振って、プレインはレノムが原罪も逃亡中だという事を教える。


「だとすると貴方はこの大陸まで来て、行方知れずの騎士団長さんを捕まえに来たという事になりますね」


「……」


 シャイカの指摘にプレインは図星だとばかりに、何も答える事が出来なかった。


「あのいけ好かねえ奴が魔族と繋がっている、ねぇ。つまりあいつが魔王の手先だったって可能性が出て来ちまうよなぁ?」


「そうだね……もしくは」


 サラと会話をするティアモは、そこまで言いかけたが途中で言葉を引っ込める。魔王に影武者が居て、本物は何処にいるのか考えていた所に、レノムが魔族と繋がっていると聞けば彼が本当の魔王というのも考えてしまう。



「……あり得ない、あの人が魔族の手の者などあり得ない!」


 先程と同じようにプレインはレノムが魔族の一員、というのが信じられず再び声を荒げた。


「俺はあの人がオルスタ王国にどれだけ尽くして来たのか知っている!見ている!いかにして害する魔物達を殲滅させるか、国の平和を常に考えてきた人だ!」


「お、おお。立派なのは分かったから落ち着けって」


 興奮状態のプレインをサラは声を掛けて落ち着かせ、彼がプレインに対して、強い忠誠心を持っている事が充分伝わっていた。


「それだけ……プレインさんはレノムさんを信じているんですね」


「ああ、オルスタ王からは捕らえてくるよう命じられて此処に送られたが、俺は彼と話をするつもりだ。一体何があったのか、真実がなんなのか知りたい」


 ガットの問いに対して、先程より落ち着きを取り戻したプレインは力強く答える。



「一体何があったのか、か……どちらにしても何か情報を持っている可能性があるかもしれない。我々もレノムという騎士団長を探してみないか?」


「確かに他に手がかりとか何もありませんし、それで彼が本当に魔族の者であれば色々聞ける事は出来てきますわ」


 セリーザの提案にマーヴェル、他の者達も賛成。反対の者はいない。プレインも誰よりもレノムを見つけたいという気持ちが強く、彼も捜索に加わる事となった。


 それからマーヴェルはギルドにも手を回し、レノムの目撃情報を効率良く掻き集める為、彼らをも動かしていく。




 ガットはその間にもマーヴェルの屋敷に留まり、魔法の訓練に励み続ける。


「スパークアロー!!」


 セリーザが放った魔法と同じ雷の矢が、ガットの手から放たれる、かと思えば細く小さな矢程度の物だった。


「うーん、セリーザさんみたいにいかないなぁ……」


「何を言っているガット。狙い始めて単時間だぞ?私も最初はそんな短い間にそこまでするのは無理だったんだ」


 ちゃんと魔法が出来てないと落ち込むガットだが、セリーザは凄い事だと彼を優しく励ましていく。


「とにかくまだ始まったばかりですわ。焦る必要はありません」


「はい」


 マーヴェルはメイドから用意されたお茶を優雅に飲む。ガットの方は気を引き締めて、再び特訓に入っていた。



「少しは剣の素振りもした方が良さそうだけどなぁ、やっぱ体力もいるだろ」


 サラは庭で大剣の素振りを何度も繰り返して行い、訓練を重ねている。その横でティアモも同じく剣を振るって己を鍛え直していた。


「貴女、ガット君の剣の指導をしてそのまま食べるとか無いですよね?」


「やりそうなのはおめぇだろうが!」


 シャイカはそんなつもりだろうと、サラに疑いの目を向ければ女戦士の方もムキになって言い返し、喧嘩が起こる。


「はいはいー、喧嘩する元気あるならまだ訓練いけるねー?影武者の魔王に苦戦した事を忘れちゃ駄目だよー」


 ティアモが2人を落ち着かせ、少し前に戦った影武者のサーヴィスと戦った事を思い出させる。


 総掛かりでやっと仕留める事が出来た相手。あれで影武者なら本物はもっと強いだろうと、3人は今一度自らを鍛えてレベルアップに励む。



「た、大変だ!皆!」


 そこへ慌てた様子でプレインが姿を見せ、息を切らしながら駆けつけて来る。


「プレインさん、何があったんですか?」


 ガットは大慌てで来たプレインを見て、何があったのか問いかけた。



「レノム騎士団長が……オルスタ王国に捕まった」

次回はオルスタ王国へ久々に向かいます。

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