57話 VS魔王サーヴィス2
「っ!」
全てを斬り裂かんとする風の刃。シャイカはガットを抱えると、かろうじて右に飛んで躱す。
そこにサーヴィスがシャイカの目の前まで迫り、黒き大剣が振り下ろされた。
「させるかよぉ!!」
ガキィィィンッ
シャイカに向かって来た剣を、サラが庇うよう前へ出て自らの大剣で受け止める。かなりの力が伝わってくるが、持ち前の剛力で耐えきっていた。
「ほう……?」
これには魔王も感心するような声が出る。人間に自らの剣が受け止められるとは、正直思っていなかったのだろう。
「っせぇい!」
サラがサーヴィスの剣を受け止めている間、ティアモが飛びかかって剣を上から振り下ろす。
魔王はその場から高く跳躍して回避。距離を取って一行の包囲網から逃れようとした時。
「ブレイズラッシュ!!」
「!」
無数の青白い炎の玉がマーヴェルの両手から、次々と放たれてサーヴィスを襲う。
「シャイカ!今ですわ!」
「!はい!セイントアロー・レイン!!」
怒涛の攻撃を仕掛けるチャンス。マーヴェルの声に応えると、シャイカも即座に神聖魔法を唱え、空から聖なる矢が降り注がれ、青白い炎の玉と共に魔王を飲み込んでいく。
「覚悟するがいい混沌をもたらす魔王よ!スパークアロー!」
続けてセリーザも攻撃魔法を発動。右手に雷の力を宿し、サーヴィスに向けて解き放つ。右手から雷の矢が魔王を貫かんと飛んでいった。
「ぐおおお!?」
黒い鎧、金属を貫通する雷の力。魔王の体中に今、雷による痛みが走っている事を思わせるような、叫び声を上げる。
「サラ、決めちゃって!サラマンダーよ、力を与えたまえ!」
ティアモは精霊魔法でサラへと、強化魔法を施していく。するとサラの持つ大剣にサラマンダーの力が宿り、燃え盛る紅蓮の炎で剣が燃えている。
「うぉらぁぁぁーーーー!!」
渾身の力をもって、サラはサーヴィスに向かって剛剣を一閃。横薙ぎに振るわれた剣が魔王を守る黒い鎧を斬り裂き、確実に肉体まで届いていた。
「が……ぁ……!」
斬り裂かれた魔王の胸部付近から緑色の鮮血が飛び散り、魔王の右膝が崩れ落ちて地をつく。
「やった!倒した!」
魔王を倒せた。遠くから彼女達が災厄を討伐する勇姿を見て、ガットは顔をパァッと明るくさせた。
「魔王さんよ、俺らの勝ちみてぇだな。その傷じゃもう助からねぇだろ」
「ぐぅぅ……」
サラは勝ち気な笑みを見せれば、大剣の切っ先をサーヴィスに向ける。斬り裂かれた箇所からは激しい出血が流れ、数々の魔法による大きなダメージも受けている。魔物の頂点に立つ魔王といえど、これは致命傷だろう。
「……申し訳、ありません……魔王……さ……ま……」
「!?」
魔王を倒した女性達の間に衝撃が走る。サーヴィスは紅蓮の炎に包まれ、その体を焼き尽くされながら命を落としていった。
「え、嘘……?」
「どうなってるんですか……?」
ティアモやシャイカもサーヴィスの最期の言葉に、戸惑った状態だ。あれが言葉通りだとしたら、自分達が戦っていたのはそうだとしか思えない。
「皆さんどうしたんですか?何か深刻そうな顔をしてますけど……」
駆け寄って来たガットには魔王の言葉が聞こえてなくて、彼女達が難しい顔をしている理由が分かっていなかった。何があったんだろうと、思っていた時。
「あれは……魔王ではなかったのかもしれない」
「え!?」
セリーザの言葉を聞いたガットに衝撃が走る。5人がかりでようやく倒す事の出来た魔王が、違ったと聞いてどういう事だと頭が混乱してくる。
「国の国王の中でたまにいますの。自らにそっくりな影武者を作り、いざという時は囮にするという存在が」
「影武者……あのサーヴィスはつまり、本物のサーヴィスの影武者で、偽物って事ですか?」
「そうなりますわ。まさか魔王がそれをやって来るとは思いませんでしたけど……!」
ガットに影武者について語るマーヴェルの顔に、悔しさが滲んでいた。魔王を仕留めたかと思えば偽物、死の間際にわざわざ言った魔物の言葉に偽りは無いだろう。
「ストップ、まずは一度引き上げて休もうぜ。皆連戦で疲れたろ?」
「そうだな……今は回復が最優先だろう」
サラは一旦戻る事を提案して、セリーザも頷いて同意する。確かに此処で悩むよりも、まずは体力の回復に務めるべきだ。
一行はマーヴェルの馬車に乗り込んで、彼女の屋敷へと帰還する。
あの魔王サーヴィスは影武者、だとするなら本物の魔王は何処にいるのか。一行がいくら考えても明確な答えが得られないまま、馬車はリーゾ王国近くまで来た。
すると門の入り口付近で、酷く思い悩む男の姿が見える。何だろうと思いながらも、一行は門を通ろうと向かう。
「……!?勇者達……!」
「え?」
急に悩む男に呼び止められると、ティアモは勇者と呼ばれて振り返る。男は20代半ばぐらいで、軽装の鎧に右腰に剣と冒険者の剣士風の格好だ。
「俺、覚えてないか?ほら!オルスタ城でオークキングの斧を持たされた!」
「あ!あん時の兵士!?いや、鎧着てねぇから分かんなかったって!」
「当たり前だろ。リーゾ王国との事もあるし、明らかに兵士だって格好で行けば目立って目をつけられる。あ、名前はプレインな?」
オルスタ城の時、兵士ことプレインはサラから斧を受け取り、同期の兵士と共に運んでいた。今の彼は何処から見ても冒険者という装いで、一見すれば誰もオルスタ城の者だとは分からない。
「それでどうしたんですか?休暇を利用してリーゾ王国に骨休めに来ました?」
「いや、それどころじゃないんだ!」
冗談交じりに言うシャイカに対して、プレインの方は慌てた様子だった。そして彼から衝撃の言葉が告げられる。
「我らがレノム騎士団長に……魔族と繋がっていると疑いをかけられた……!」
次回はレノム騎士団長について話を聞いていきます。




