50話 大貴族への説得
「あいつら、魔王の手下かよ」
「魔法を封じるとか、厄介な手を使って来ましたが……魔王と繋がっていたのですね」
忌々しそうにシャイカとサラは、サキュバス達の顔を思い出していた。
「魔王サーヴィスは自分の敵となりうる者を潰していく。人間でも魔物でも関係なく、そうするみたいなんです」
「何……!?となると、我々の村を滅ぼしたのは奴らの可能性がかなり高くなってきたか」
シャーリーから聞いた話を思い出しながら話すガット。そこにセリーザはもしや、と可能性が頭を過ぎる。自分達の集落を滅ぼしたのは、魔王達によるものではないかと。
「お待ちになって、それは私の父と母も……の可能性も出て来ましたわ!ロックウェル家は強大な力を誇りますので、魔王の脅威になる事はあり得るはず!」
マーヴェルの両親を手にかけたのは、魔王が関係している。その思考通りなら狙われた可能性はあるはずだ。
「そうなると、僕達には共通の倒すべき敵がいるから此処は協力し合うべきなんです!凄い魔法使いの貴女の力があったら凄く頼もしくて、魔王達を倒せると思いますし!」
「……!」
ガットは迷いなき目でマーヴェルを見上げ、ハッキリ言い切った。その目で見つめられ、彼女の胸は高鳴っていた。
「貴女(の力)が必要なんです……!あの、勿論僕の出来る限りの事はしますから……」
可愛い顔で必死にお願いしてくるガット。マーヴェルが羨ましい、と思いながら女性達の思いは可愛い、で一致。
「……では、その出来る限りの事に免じて。過去の出来事は全て水で洗い流して綺麗な状態へとさせていただき、協力しますわ」
マーヴェルはガットの言葉に同意。共に協力して魔王と戦う事を決めた。
「ありがとうございます!あ、後もう一つだけ……」
「まだ何か私にお願いでも?」
協力だけでなく、ガットは新たにマーヴェルへ伝えようとする。
「魔物への憎しみは理解出来ましたけど、世の中そんなのばかりじゃないです。中には良い魔物だっている……それを伝えようと思って」
マーヴェルの憎しみをこのまま放置していたら、また何時新たに罪の無いモンスターが痛めつけられたり、死に至らしめられるか分からない。
せめて良いモンスターを守ろうとしている。
「言わんとしている事は分かりましたわ。では……魔王のように明らかな滅するべき存在だけをなるべく、狙うようにします」
完全に止めるとまでは言わない。心惹かれる彼に言われても、それで魔物への憎しみが無くなる訳ではなかった。しかし彼女の中で変化をもたらし、一歩前に出られたのは確かだ。
「えー、とりあえず魔王サーヴィスを倒す仲間という事でよろしいでしょうかマーヴェル嬢?」
「構いませんわ。まぁ、貴女程度の力で魔王に立ち向かうには貧弱で頼りないと思いましたし」
「あはは、手厳しいなぁ〜」
以前、地下帝国の一騎討ちでティアモはマーヴェルに敗れている。向こうもそれは覚えており、自分より劣る存在と見ていた。
「色々いけ好かねぇけど、贅沢言ってる場合じゃねぇよな」
「ええ……ほんっとうに色々嫌ですけど、ライバルがまた増えて嫌ではありますが、魔王を倒してガット君と平和な世界を生きる為であれば我慢します」
サラ以上にシャイカの方が、大きなストレスを抱えてそうな様子だ。時折マーヴェルへ睨むような目を向けるのが見える。
「……(まぁ、裏切らないように私が目を光らせておけば良いか。もし裏切るようなら……斬るまでだ)」
協力するとマーヴェルは言ったが、セリーザは1人静かに警戒していた。
敵である自分達をそんなあっさり許すのか、油断させて葬ろうとしてないかと疑いを抱く。ガットは信じているようだが、もし彼の信頼を裏切るようなら、セリーザは容赦なくマーヴェルを斬るうもりだ。
「そんで、魔王の存在は分かったけどそこまでどうやって辿り着くかだよな。あいつらとっ捕まえて案内させりゃよかったか?」
「いやー、あれは簡単に捕まるような感じには見えなかったし実力もあったからねぇ。彼女達なら確かに魔王の場所知ってそうだけどさ」
今回で魔王の存在が明らかとなり、サラはそこに辿り着いて魔王を討ち滅ぼすのが最終目標だと見つけ、拳をバシッと鳴らしていた。
ティアモの方は腕を組み、うーんと魔王にどうやって辿り着くか考え込む。
「魔王は自分の害となる強い者を警戒する……。ガット君、貴方そうおっしゃいましたよね?」
「あ、はい」
マーヴェルに視線を向けられたガットは頷いて答える。どうやら彼女の方に何か考えでもあるらしく、一同の視線が集まる。
「私に案がありますの。任せてくださる?」
大貴族の令嬢が綺麗な笑みを浮かべる。どんな策を思いついたのか、ガット達は彼女の話を聞く事とした。
次回はガットが冒険者としてギルド登録をしに行きます。




