48話 最大の危機
「村を滅ぼしたって、その魔物が魔王に何もしてなくてもそうしたのか!?」
バタバタと暴れながら、ガットはシャーリーを睨むが万力の力でヴォレットに抑え込まれ、何も出来なくなってしまう。サキュバスという単純な力が人間と大差ない種族ながら、かなり力に特化しているらしい。
「関係無いんだよね。魔王がその先、自分の敵となるかもしれないとなったら相手が何もしてなくても敵とみなす。そして障害となる前にこの世から消す、それが魔王サーヴィスのやり方だからさ」
「っ……!」
もし魔王が自分達の故郷を、そんな理由で破壊されたとしたら到底許せない。
ティーナやローレン、ドンナーやモンスター達。セリーザやまだ見ぬ母を思えば、ガットは強い怒りの目を宿し、ヴォレットに抑え込まれながらもシャーリーを睨んだ。
「そして君、初めて見た時から思ったんだよねぇ。君はキャットヒューマンにしては強大な魔法力を秘めてる」
「僕が魔法力を?」
自分はティアモやシャイカ、セリーザのような魔法は使えない。だから目の前の悪魔に、そう言われると信じられなかった。
「自分じゃ分かってなさそうだけど、あたしみたいなのからしたらぁ……見えちゃうんだよねぇ。魔王様が見たら間違いなく敵とみなしそうな程につよーい魔法力が君の中に流れているのが」
「僕の中にそんな……」
驚愕するガットに、シャーリーは綺麗な微笑みを見せたまま彼に近づいて身を屈める。
「ま、あたしとしては君がどう思ってようが知った事じゃないけどね?」
「……!?」
シャーリーに何かされるかと、ガットは警戒。
「しっかり抑えててね」
「ははっ」
ヴォレットに伝えた後、シャーリーは行動を起こす。ガットの着ている服を鞭ごと強引に引きちぎり、彼の白い肌が彼女達の前に晒された。
「わっ!?」
急に服を破かれ、悪魔とはいえ見知らぬ女性達の前に肌を見せる事となってしまい、ガットは恥ずかしさから顔を赤くする。
「うふふ、魔王様なら始末を望むだろうけど……どうせなら食べてもいいよね?よく見ればぁ、可愛い顔してて小さくて良い感じ♪そこに強い魔力もあるって最高だし?」
ガットの頬を右手でシャーリーは楽しげに撫でた。彼はサキュバスから、最高のご馳走とみなされて食べる対象とされたようだ。
「シャーリー様……恥ずかしながら、このヴォレットも先程から彼の姿を見ていたら昂ってきました……!」
ヴォレットの熱を帯びた吐息が、ガットに伝わってくる。抑えつけている彼女の方も見ているうちに、興奮状態となってきたようだ。
「ヴォレットは気を付けてね?一度獲物を捕らえた時に吸いまくってカラッカラにさせちゃった事があるんだから。彼は極上の獲物で今回は気をつけないと」
「……出来る限り気をつけます」
彼女達の話を聞いて、自分は吸い殺されてしまうのだと、ガットの顔はみるみる青ざめてくる。
言われてヴォレットが反省しながらも、シャーリーはニヤリと笑えばガットに向かって両手を伸ばす。
「ちょ、待って……!」
身動きの取れないガット。声を上げるぐらいしか出来なかった。
「オラァァァーーー!!」
「!?」
そこに勇ましい女戦士の雄叫びと共に、大剣を右へと振って悪魔達を一閃。
寸前でシャーリーとヴォレットは上空へ飛び、剣を躱していた。
「あれ、君達。よく此処まで来れたねぇー?」
「耳障りな口を閉じなさい……!悪魔達め、この私が浄化して神の元へ送ってあげます!」
憤怒の顔でシャイカは上空で、マイペースに喋る悪魔を睨みつける。
「人のもんに手ぇ出して覚悟は出来てんだろうなぁ?」
サラも殺気を隠さず、大剣の切っ先と共に敵へ向けていた。
「流石はサキュバスだな。異性に甘い毒牙を向けるタチの悪い悪魔め……!」
怒りに燃える目で、弟を攫った悪魔達を見据えてセリーザも剣を構える。
「そういうのはやっぱ、退治しないと駄目だよねぇ〜?」
ティアモは笑顔だが、その目は冷たくて全く笑っていない。殺意を込めながら上空の敵を見据えていた。
「薄汚い魔物の分際で私から取るなど許し難い大罪、万死に値しますわ!!」
マーヴェルも悪魔達を前に、青白い炎を宿して業火で焼き尽くす事を狙っている。
「流石にこれ不利っぽいから逃げよっか。皆さんまたねー!イスタンテ!」
「!」
シャーリーが魔法を発動した瞬間、自らとヴォレットを含めてその場からフッと姿を消していった。
その中でガットはシャーリーから言われた自らの力について、それが頭に残ったままだ……。
次回はガットが決意します。




