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47話 悪魔に捕まって

「ちょ、離して!離せ!」


 ガットは鞭で体が絡んだまま動けず、とにかく力の限り暴れて逃れようとしていた。


「今こっち空飛んでるの分かってない?あたしの手が離れたら地面に真っ逆さまで、潰れたトマトみたいになっちゃうよ?」


「……!」


 シャーリーはガットを抱えたまま、今の状況を笑みを浮かべて教えると彼の目は地上に向けられる。空高く飛んで移動している今、此処から落ちれば死の危険性がかなり高い。


 顔が青ざめたガットは今の状況を理解して、一気に大人しくなる。


「よしよし、良い子だ♪」


「あう……!」


 よくできましたと子供に言うように、シャーリーは彼の頭を撫でてあげた。こんな状況なのに緑髪の美女に甘やかされて、頭を撫でられると妙に心地良いと思ってしまう。




 一方、勇者一行の方はガットを追いかける為に魔物やマーヴェルの部下を秒で蹴散らし、ティアモが馬2頭を呼び出して4人でシャーリーの飛び去った方向へ走っている。


「飛ばしなさい飛ばしなさい!もうマッハで行きなさい!」


「そうしたいけど今出てるのでフルスピードだっての!」


 馬の手綱を握るサラにしがみつきながら、シャイカは馬のスピードを上げろと注文をつけていた。


「こっちに逃げたのは間違いないな!?方向違いだった、というのは許さんぞ!」


「絶対こっち!あのいけ好かない横取り悪魔女が飛び去ったのハッキリ見えたし!」


 共に絶対ガットを連れ去ったシャーリーに追いつき、取り返してやろうとティアモ、セリーザは鬼気迫る表情だ。


 悪魔に連れされた彼を救う為に、女達は鬼と化している。



「飛ばしなさい!マリアーヌ!!」


 そこへ雪のように真っ白な馬が優雅に走り、勇者一行の馬に追いつかんと迫ってきた。それに乗るのは鞭(予備の物)を右手に持つマーヴェルだ。


「げ!?お嬢様が追いかけて来やがった!」


「ちょっと!今あの女と遊んでる暇ありませんよ!?振り切りなさい!」


「だからもうスピード最強だって言ってんだろー!」


 面倒な女が来たと、マーヴェルの存在に気づいたサラ。此処で時間を使っていられないシャイカは、絶対振り抜けと言うが無情にも距離はグングン縮まってくる。


「ちっ!やるしかないのか!」


「正直かなり嫌だね!」


 ティアモにとっては魔法も白兵戦も強い厄介な相手。セリーザの方はマーヴェルと戦う覚悟を決めた表れか、剣を抜き取った。


 マーヴェルの馬が勇者一行の横につくと、馬に乗る令嬢は一行をチラッと見る。


「貴女方!悪魔が逃げたのはこっちで間違いないんですの!?」


「え!?そうだけど!」


「やはり!待ってなさい汚らわしい泥棒猫悪魔!!」


 鬼の形相でマーヴェルはティアモの方を見て、シャーリーの行方について聞いてきた。それにティアモが答えた後、白い馬が追い越して一歩先を行く。


「(気づいてない?いや、それよりガット君にそもそも鞭を巻きつけて捕らえようとしてたし!先越されたら不味い!)」


 覚えてないのか、相手をしている暇が無いのか不明だが、とにかくティアモ達をマーヴェルは追い越していった。しかし彼女に先を越されては、ガットの身が危険な事に変わりはない。


「(ガット(君)をなんとしても助ける!!)」


 女達の思いは一つ。シャーリーやマーヴェルの手に渡さず、ガットを救い出す。




「ふう〜、疲れたから一休みっとー」


 流石に誰かを抱えて空を飛ぶのは一苦労か、シャーリーは地上の森に降り立ち、傍を飛んで同行するヴォレットも続く。


「逃げようとは思わない事だ、とはいえその状態では無理だろうがな」


「っ……!」


 ヴォレットに睨まれながら、忠告されるが今のガットは体が鞭で絡まり、身動き出来ない状態だ。逃げようにも不可能な状態である。


「一体何で僕を……!?」


 悪魔に狙われるような恨まれる事を、ガットは特にした覚えは無い。こうして何故捕らえるのか、理由を聞く。


「それを語る前に、うちの主について語ろうか」


「主……?」


「そ、あたし達の主である魔王様。サーヴィスについてね」


「魔王……サーヴィス?」


 シャーリーの口から語られる自らの主、魔王サーヴィスという名。それを聞いてガットはハッと気づく。


「魔王!本当に居たんだ……!」


 ティアモ達が探し続けた敵。この世を混沌に陥れようとしている存在。シャーリーがその部下と分かれば、ガットは魔王に今大きく近づいたと感じた。



「あたしらの魔王様はそれはそれはもう、なんというか容赦無いの。自分に刃向かってくる存在や、対抗しうる存在には脅威となる前に消そうとする。それが人間でも魔物でも例外じゃない」


「魔物でも……魔王だから皆従うんじゃないの?」


「浅いな。人間が世界の王に皆が従い、平伏しない事と同じだ。頂点に立つ存在だからと言って全員がそれに従い、認める訳ではない」


 シャーリーとガットが話してる横からヴォレットも口を挟み、魔王は全ての魔物を従う訳じゃない事を教えられる。


 彼の頭の中で以前会ったオークキングについて思い出す。あの魔物も魔王には従っておらず、どちらかと言えば自分が世界の頂点に立つというタイプたった。つまり同じ魔物でも魔王と敵対するような存在がある、という事だ。


「優れた魔物で、魔王に従わない存在はいずれ障害になると魔王様は考えた。だから魔物の村を滅ぼしたりもしたからね」


「!!」


 魔物の村を滅ぼした。それは過去の抜け落ちた記憶を知ったガットにとって、聞き逃す事が出来ない。

次回、更にシャーリーの話は続きます。

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