45話 魔族との戦い
「セイントアロー・レイン!」
「ゲェェーーー!!」
シャイカが愛用の青い杖を地面にトンと置けば、上空から光の矢が雨のように降り注がれる。空を舞うガーゴイルの体や翼を容赦無く貫き、悪魔達は次々と墜落。
「オラ!どらぁ!」
「ガバッ!」
「ゲッ!」
サラは強く地を蹴れば、空に向かって飛び上がる。そこからガーゴイルを大剣で振り下ろし、真っ二つにして振り向きざまに横斬りで襲いかかる悪魔の胴体を斬り捨てた。
「スラッシャー!」
「ゲハァ!」
ティアモは精霊の力を借りて、魔法で迎え撃つ。今回は風を司るシルフで、風の刃をガーゴイルにぶつけて翼を切断。空を飛ぶ術を失った悪魔は、地面に激突して朽ち果てる。
「アテが外れたようだな。お前達は吹雪で我々の体力を削ろうとしたようだが、あの通り元気そうだぞ」
「……」
悪魔達の数を減らす勇者一行の姿を見た後、セリーザがシャーリー達と向き合う。側近のヴォレットはシャーリーを庇うように前へ立つ。
「フフ……」
「!」
シャーリーは右手に禍々しい黒い光を宿す。それをセリーザが見た瞬間、相手の狙いに気づく。
「サイレント!」
「はわ!?」
右掌をシャーリーが向けた先にはシャイカ。黒い光が聖女を包み込む。
「シャイカさん!?」
光を浴びたシャイカの心配をするガットだが、彼女の体に傷は無い。しかしそれ以上に厄介な事が起きてしまう。
「え……!?魔法が、使えない……!?」
シャイカは上手く集中する事が出来ず、得意の神聖魔法を唱えられずにいた。
「魔法で1番厄介そうなのをまずは封じさせてもらったよー。見た所神聖魔法の使い手で、あたし達魔族には厄介だからさ?」
シャーリーが唱えたのは魔法の使い手にとって、最も厄介な魔法封じ。今のシャイカには先程のように強力な神聖魔法は、一切放つ事が出来なくなっていた。
「だったら使い手のてめぇをぶっ倒すだけだ!」
そこへガーゴイルを片付けたサラが、シャーリーへと大剣を手に飛びかかる。
「シャーリー様に近づく事は許さんぞ、薄汚い人間が!」
キィンッ
サラの剣を、ヴォレットが自らの大剣で斬撃を完璧に受け止めた。力強い戦士の攻撃を受け止めた辺り、彼女の腕力も相当だと思われる。
「ちっ!骨のある悪魔かよ!」
サラはヴォレットと激しく斬り結び、互角の展開だ。
「中々強いみたいだけど、多勢に無勢じゃないかな?ガーゴイルは全滅。もう君達2人だけだよ」
上空にガーゴイルの姿はもう無い。ティアモ達が空飛ぶ悪魔を全滅させ、サキュバス2体のみが残っていた。ティアモの剣の切っ先が、シャーリーへと真っ直ぐ向けられる。
「あら、此処に居るのがあたし達だけだとでも?」
「!?」
シャーリーがそう言った瞬間、複数の気配をティアモが察知。この場に数多くの魔物達が駆けつけて来た。
「わわ!何時の間に!?」
周囲はリザードマン、更にスケルトン、リビングアーマーと次々現れ、ガット達を包囲していく。
「船で世話になった魔物までいるとは、勢揃いって感じだね……!」
以前に戦った強敵も混じり、ティアモは笑みを浮かべつつも頬に汗が伝ってくる。
「フフフ、あの船で大人しく沈んでおけば良かったと後悔するんじゃないー?」
「!?僕達が港町でそこに乗ったのは……罠だったのか!?」
「今更遅いねー。分かった所で、あんたらは此処で終わり。女神の力を授かった勇者と厄介者を葬り去って、めでたしめでたしってね」
ガットが港町での出来事を思い出せば、シャーリーの仕組んだ罠だったと気づくが、その本人は悪気もなく笑っていた。
「く……!魔法が使えない時に!」
迫りくる魔物達に、シャイカは魔法を発動させようとするが、シャーリーによって封じられて使えない状態は続く。
「ガット、後に居ろ……必ず守りきってみせる」
セリーザはガットの前に立ち、剣を構えて多くの魔物達と見据える。
「(サラは交戦中で手が離せなくてシャイカは魔法が使えない。……これは過去最大の大ピンチかな)」
頭の中を冷静にさせ、ティアモは状況がかなり悪いと判断。今まで多くの過酷な戦いを経験し、潜り抜けてきたが今回は1番辛いかもしれない。
だがそれでも諦める訳にはいかないと、改めて右手の剣を握り直した。
「それでは皆々様、今度こそ御機嫌よう。……かかれ!」
シャーリーは一行へと優雅にお辞儀をした後、右手の指をパチンと鳴らして襲う指示を与える。
その瞬間だった。
ゴォォォォーーーッ
「ギャアァァーーーー!」
「ーーーーーーー!」
リザードマンの悲鳴が木霊し、魔物の体は炎に焼かれ包まれる。不死であるはずのリビングアーマーやスケルトンも、その炎に焼かれて苦しむ。
「!?」
突然の出来事に余裕だったシャーリーの表情が崩れ、ガットやティアモ達も突然の炎に驚くが、その炎に何処か見覚えがあった。
「(青白い……!?)」
魔物達を焼き尽くす青白い炎。それを使うある大貴族の令嬢の顔が思い浮かぶ。
「私の通る所に醜き魔物、しかも奴隷にするような価値も無さそうな存在」
聞いた覚えのある女性の声。地面に鞭を叩きつける音が聞こえ、それが誰なのかガット達は理解した。
「そんな魔物は地獄の炎で消し炭にするしかないですわね?」
左手に鞭を持ち、右掌に青白い炎を宿すマーヴェルが多くの部下を率いて登場。
まさかの三つ巴の構図が此処に揃う。
次回、戦いは大根戦。その中でガットの身に……!?




