44話 悪魔の強襲
「お、ガット!晴れたぜー!」
洞穴から1人出て、外の状況を確認したサラは中にいるガットへ、大声で吹雪が収まった事を報告した。
「本当だ!もう寒くない……!」
服を着てキャスケットをかぶれば、元通りの格好となってガットも洞穴から出て来る。サラもきっちり大剣を手に鎧を身に着けていた。
「って言いながら、もう少し吹雪が続いて裸の俺と一緒に居たかったんじゃね?」
「!?ちょ、何言ってるんですか……!それより皆と合流しないと!」
からかわれるようにコソッとサラに言われると、洞穴での事を思い出して顔を赤くするガット。ティアモ達を探そうと行動に出る。
「しっかし、あんな平原で急に猛吹雪っつーのも妙だよなぁ」
「僕はよく分からないですけど、旅している時にそういう急な天気の変化とかあったんですか?」
「山とか高ぇ所じゃ急激な変化はあったな。でも平原じゃこんな事は1回も遭遇してねぇよ」
まだまだ旅人としては日の浅いガットは、こういう事はよくあるのかと聞くがサラの解答はNOだ。彼より旅の経験は重ねて体験してきたが、平原にいきなりあのような猛吹雪が発生したのは初めてだった。
「考えられるとしたら……誰かわざと魔法とかで吹雪を起こしたという事でしょうか」
「かもなぁ。魔法についてはよく分かってねーけど、あれは相当なもんだったから並の使い手じゃ無理だと思うぜ」
先程まで起きていた猛吹雪を思い返せば、あれを意図的に起こす魔法はティアモ、シャイカにも無理だろうとサラは考える。
少なくともあれは、人間が簡単に起こせるような類ではないと。
「何処だーい!?ガットー!サラー!」
そこに自分達を呼ぶティアモの声がした。2人の耳に聞こえてきた声の大きさから、今なら近い場所にいると思えばサラが即座に行動を起こす。
「ティアモだ!おーい!こっちだこっちー!!」
腹の底から大声でティアモを呼び、サラの声が聞こえたのか雪を踏みしめる音が近づく。それも1人ではなく数人ぐらいが歩く音だ。
「ガット君!」
「ガット!無事だったか!」
ティアモの姿が見えて、それよりも共に居るシャイカとセリーザが2人に駆け寄っていく。というよりガットにだが。
「皆さん無事で何よりです!」
「つかガットばっかで俺の事は無しかい」
ガットは3人の姿を確認すると皆の無事を喜び、サラの方は自分の名前が2人から出なかった事に、若干の不満を見せていた。
「貴女のタフさは知ってますから、どうせ無事だろうと思ってました」
「一流の戦士ならそう簡単にくたばらんだろうと思って、あまり心配してなかった」
シャイカ、セリーザ共にサラは大丈夫だろうと思って、ガットの身を最優先。するとガットの姿を見て、シャイカはハッと気づく。
「そういえば少しの間サラと2人きり……!ガット君、食べられませんでしたか!?あの肉食獣の事ですから、そんな美味しくて羨ましいチャンス逃すはずが無いです!」
「え、ええ!?」
サラと2人きりの時、何かされなかったかとシャイカに詰め寄られ、ガットは困り顔を浮かべる。
「おい、それはこの前あんな姿を晒したお前には言われたくねぇぞ変態聖女」
「誰が変態ですか肉食船酔い戦士!というかガット君!その反応は何かありましたね!?あったんでしょう!?」
女戦士と睨み合いになりながらも、聖女はガットに何か起こったのではないかと、察知したのか問い詰める。
「えっと……」
「あ!その赤くなった顔可愛い……いえいえいえ!何かありましたね!?赤面するような事が!」
サラとの洞穴での事を思い出せば、ついガットの顔が赤くなってしまう。口で言えばシャイカが暴走しかねない。
「……賑やかな所を悪いが、どうやら招かざる客が来たらしい」
「だね。それも嫌ーな感じのが……ね」
ティアモとセリーザは共に空の方を見上げていた。2人の言う、嫌な雰囲気を漂わせた招かざる客の気配が上から伝わったのだ。
「ケケー!!」
「!?」
すると空から急降下して来るのは、鳥の悪魔であるガーゴイル。数体がいきなり奇襲を仕掛け、鋭い悪魔の爪を振りかざした。
しかし次の瞬間には、ティアモとセリーザが同時に空へ向かって飛び上がり、それぞれの剣を振るって迎撃する。
「ゲェ!」
「ゲフッ!」
2人の剣によって身を斬り裂かれ、地面に墜落したガーゴイルはそのまま力尽きて、体が石像のようにガラガラと崩れ、消えていった。
「ガーゴイル……!こいつら、まさか……!?」
セリーザの昔の記憶が蘇る。あの時メルシャ達に襲いかかって来た敵にもガーゴイルはいた。当時のそれかどうかは流石に分からないが、魔族と呼ばれる者はそんなゴロゴロ彷徨っていないはずだ。
「なんだ、凍てつく世界でボロボロになってくれてるかと思えば案外元気そうだね?」
「!」
すると上空の方から今度は声が聞こえてきた。声を聞く限り女性を思わせ、その主はすぐに姿を見せる。
上空から降り立ったのは緑髪の美女。露出度の高い服装で手足や胸元を大胆に披露していた。背中のコウモリの羽や頭の左右に角らしき物が無ければ、人間と勘違いしたかもしれない。
「直接は初めましてかな?勇者一行の皆さん。あたしはサキュバスのシャーリーよ♪」
緊迫した場にそぐわないような、明るい口調と微笑みでシャーリーはガット達に自己紹介をする。
「ま、残念ながらすぐにさよなら、になるけど」
シャーリーの顔に冷酷な笑みが浮かぶと、同時に上空から再びガーゴイル達が迫って来た。
次回は魔族との戦いです。




