42話 女戦士の奮闘
「くっそぉ!何なんだよ!?急にリザードマンが来たかと思えば、吹雪いて来やがって!」
予期せぬ事態が続いて、サラは怒った表情でリザードマンを蹴り飛ばして押し退ける。襲って来た魔物達を盾にして、吹雪から身を守ったようだ。
この辺りの臨機応変は戦士として、戦い続けた経験値が活きていた。
「ん……?」
仲間達を探そうとした時、サラは前方に誰かが雪によって埋まりかけているのを発見。駆け寄ってみれば、誰なのかすぐに分かった。
「ガット!しっかりしろ!おい!!」
雪に埋まりそうになっていたガットを助けると、冷たくなっている彼の体を抱き起こす。
「ぅ……眠い……」
一瞬ガットは目を覚ますが、急激に重く感じる瞼と襲いかかる眠気に逆らえず、再び目を閉じようとしている。
「馬鹿!こんな場所で寝たら死ぬぞ!!絶対起きろ!寝かさねぇぞコラァ!!」
こういう状況で眠ったらどうなるか、サラはよく知っている。寝かせる訳にはいかず、ガットを怒鳴り続けながら、その身で彼を抱き締めて少しでも暖めようとしていた。
そして彼を抱えたまま、サラは何処かに避難出来る場所はないかと、辺りを探す。
「おっ!あそこなら!」
洞穴らしき所を見つければ、何の迷いもなくガットを運んでサラは雪原を駆け抜ける。
「はぁっ……この辺りの雪を解かしてもいない……」
ティアモがサラマンダーの力を使って、炎で積もる雪を解かして進んでいたが、2人の姿は未だ見つからない。
「本当、何でいきなり吹雪なんか来たのか……!神はガット君にそんな厳しい試練を与えるつもりですか!?」
急な天候の変化に、シャイカは神からの試練かと怒って空に怒鳴り散らす。
「いや……ひょっとしたら意図的に今のは起きたんだ思う」
「意図的か、やっぱキミもそう思う?」
この猛吹雪は自然による物ではなく、誰かによって起こされた物。セリーザだけでなく、ティアモの方もそれを考えていた。
「ああ、一瞬だが……上空にコウモリの羽を生やした女達が居た気がするんだ」
「コウモリの羽を生やした?上空という事は空を飛んでますよね。つまり人間ではなく、モンスター?」
吹雪が起こる前、上空に居た存在についてセリーザは深く思い出す。シャイカがモンスターなのかと言えば、セリーザは首を横に振る。
「おそらく彼女達は魔族、サキュバスと呼ばれる者達だ」
「サキュバス?」
「女性の魔族で強大な魔力を持つ種族で知られ、異性を魅了したり相手の生命を吸い取って力を得る事に長けている」
サキュバスについてよく知らない様子のティアモに、セリーザはサキュバスという種族について特徴を話した。
「それが意図的に吹雪を発生させたのだとしたら……!?」
「とにかくまずはガット達を探し出す事が最優先だ!」
ティアモとの会話を断ち切って、ガットとサラを探す事をセリーザが優先して再び捜索を開始。積もった雪に埋もれていないかと、冷たさを感じながらも掻き分けていく。
「ガット君何処ですかー!?返事してくださいー!」
ほとんど大雪によってシャイカの声は消されてしまう。
「ふぅ〜、ひとまず此処で一休みっと……」
運良く発見した洞穴に入り、此処が吹雪を凌げると確認すれば軽く息を吐く。寒さのせいか、吐息は白くなっていた。
「って、呑気な事を言ってる場合じゃねぇ!早くガットを暖めねぇと!えー……!」
ガットの姿を見て、今一息ついてる場合じゃないと気づいたサラ。自分の荷物から野宿の為の寝袋を取り出して、ガットを寝かせた後に洞穴の中を確認。
中には枯れ木が転がっていて、焚き火は出来そうだが火を起こす手段は無い。サラは炎の魔法が使えないどころか、ティアモやシャイカのような魔法の使い手ではないのだ。
「くっそ!何か無ぇか……!?」
考えろと自らに言い聞かせ、周囲を見渡すサラは枯れ木の他に、大きな石を発見する。
「石……そういや、鍛冶屋とかで火花っぽいの出てたっけか?」
これを見て、自身の剣を鍛冶屋に預けて打ち直してもらった時の事を思い出す。あれのように熱して、火を起こせるのではないかと。
サラの中でピンと閃けば、石を枯れ木の付近に運んで愛用の大剣を鞘から取り出す。そしてサラは石に向かって剣を振り下ろす。
ガキィンッ
思いっきり硬い衝撃が伝わりながらも、サラはひたすら剣を石に打ちつける。早くガットを暖めようという一心で。
「!おっしゃ付いた!」
何度か剣を振るえば石は熱されていき、枯れ木に火が灯される。サラはこれで焚き火を作る事に成功して、火の側にガットを寝袋ごと運んで当たらせた。
「ううう……」
それでもガットは寝袋の中で、ガチガチと寒さで震えて苦しそうだ。
「ガット大丈夫か?まだ寒いのか?後はどうすりゃ……!」
サラはもっと暖かくなるにはどうすればいいのか、彼を助ける為に頭をフル回転させて考える。
このままではガットが凍えて死ぬかもしれない。そう思った時、サラの頭の中に1人の人物が浮かぶ。
自分より小柄な男だが、勇ましかった。それは自らの前で命を落としていた。
「させるかよ、絶対に……!」
同じ事は繰り返させない。もう2度とあんなのはゴメンだと、サラはなんとかガットを助ける手段を考える。
「確か……肌と肌って暖かかったりしたよな」
前にガットを抱き締めて眠った時、毛布がいらないぐらいに暖かかった事を思い出していた。それはつい最近の出来事だ。
「っし!」
そこからサラの行動は早かった。
寝袋の中にいるガットのシャツやズボンを脱がし、上も下も肌を晒せば自らも高い露出度の鎧を脱ぎだす。
「ガット……絶対助けるからな。死ぬんじゃねぇぞ」
一糸纏わぬ姿で苦しむ彼を見下ろし、大きな胸を揺らしながらサラはガットの寝袋へ入り込み、その中で冷えた彼の体を包み込む。
体温の高い彼女に抱き締められたガットは、次第にすぅすぅ、と規則正しい寝息へ変わっていくのだった。
次回はサラの過去を少し話しつつ、2人が甘くイチャついたりします。




