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40話 勇者の気持ち

「え、好き……って」


 元々憧れていた勇者から好きと言われ、ガットの心は激しく揺れ動いて動揺する。


 道具屋に居た時は高嶺の花で、とても近寄れない身分の差を感じていたが今自分にそう言ってくれるのが、まるで夢のようだった。


「最初可愛いなぁって、なって守りたいと思ってたのがね。旅を重ねてキミが勇ましく行動したり、誰かの為に怒ったり助けたりするのを見て……本気で惹かれちゃったんだ」


 最初の頃から、ティアモはガットに好意を寄せていたが共に過ごしている内に、彼の事を知ったり姿を見て彼女はより深く彼に惹かれ、女として愛したいと思うようになる。


「色んな男の人に会ったり見て話したりしたけど、ガット君がその中でダントツ1番。僕はキミが本気で好きになっちゃった。この気持ちは本物なんだ……!」


 ガットに対して言葉に熱を帯びながら、真剣な目で話すティアモ。その姿に偽りは感じられなかった。


「キミを他の女に渡したくない。それが仲間でも、同族で仲の良い子や姉のような存在でも」


「ティアモさん……」


 本気でガットを想うティアモの言葉の数々、ガットはそれに嬉しさを覚えながらも言葉をどう表していいのか、超えに出せない。


「いや……ゴメンね。どうしても気持ちを伝えないと僕の気持ちが収まらなかったんだ。迷惑をかけるつもりは無かったんだけど」


 戸惑う彼を見れば、いきなりの告白で困らせてしまったかと思って、何時も通りティアモは明るい笑顔を見せた。


「忘れて良いよ、明日からまた何時も通りに……」


「ティアモさん。あの……!」


 彼の手を引いて帰ろうとするティアモに、ガットは彼女の顔を見上げながら、何かを言おうとしている。


「こういう事、言われるの……好きって言われるの初めてで嬉しいんです。嬉しいけど……僕、どう応えたら良いのか分からなくて」


 ガットはティアモの気持ちを拒んでいる訳ではない。ただ気持ちの応え方が分からず、どうしようと戸惑っているだけだ。


「ガット君……」


 一生懸命考え、応えようとしているガットの姿にティアモの胸は密かにトクン、となった。


「上、向いて」


「え?」


 ティアモにそう言われてガットが上を向いた時。



 2人の唇は重なり合い、ティアモはガットの背中と頭に両手を回して抱き寄せている。


「っ……」


 ガットにとって初めてのキス。ティアモの美しくも凛々しい顔が間近にあって、自分が憧れの人と口づけを交わす事を頭で理解すると、彼の顔はみるみる赤くなる。


 長い時間、永久とも思える甘い時間が流れ、やがて2人の唇は離れていった。


「ティアモ……さん」


 胸の高鳴りが全く収まらず、ガットは熱っぽい顔でティアモの顔を見上げている。


「キス、もっかいする……?」


「……はい」


 ティアモの問いにガットは熱を帯びた顔で答えると、2人の唇は再び重なった。




「……戻ろっか」


「……はい」


 ガットはティアモとしっかり手を繋ぎ、来た道を引き返し始める。繋ぐ手は先程より、深く繋がれているように見えた。


「(やっば〜!ガット君可愛すぎた!可愛い中に色気もあって、最高過ぎるよねー!?)」


 ティアモの中でガットの可愛さに、エキサイトする自分が居た。その彼は頬を赤く染めたまま、ティアモの傍を離れない。


「(あの可愛い顔や姿を知るのは僕だけ……エヘヘ〜♡)」


 間近でガットの可愛い顔を見て、その一面を知っているのは自分だけ。その事を思えばティアモは嬉しそうに、はにかんでしまう。




「うう〜、昨日は結局夢だったんですかぁ……」


 朝を迎えてシャイカは夢から覚めて、ガットとの甘い時間が全て幻だった事に気付けばショックを受けている。


 彼と共に先へ進んだかと思えば、全然進んでいなかった。


「戻った時の家のベッドすげぇ事になってたし、お前1人でヤリ過ぎなくらい溜め込み過ぎじゃね?」


「貴女に言われたくありません!」


「はいはいー、それよりこれからについて離さないとー」


 シャイカとサラが言い合いになりながらも、ティアモが間に入って止める。


「ティアモ……お前何か変わったか?」


「大人の女の余裕というか……貴女昨日何をしたのか、洗いざらい話しなさい!」


「いやいや、久々の精霊の力を身に着けてそう見えるだけだってー!」


 何かあったのではないかと思い、2人は揃って勇者に詰め寄っていた。昨日の事はガットも知っているが、それを言えばまたややこしくなりそうと、黙っておく事にする。



「これからの事だが、此処なら彼らは安全に暮らせる。なのでメルシャを探しに行こうと思う」


「!」


 母親を探しに行くという、セリーザの言葉にガットは反応した。


「メルシャが今何処に居るのかは分からんが、このまま留まっても何も分からないままだ。ならば歩き回って調べるしかあるまい」


「えーと、つまりそれは……」


 シャイカはセリーザが次に言おうとしている事が、何となく予想出来る。そして出た言葉はやはりと言うべきか、予想通りだ。


「彼女に代わってガットを守るという事もある。私もお前達の旅に同行したい」


「来てくれるんですか!?」


「無論だ」


 セリーザの同行、これを申し出てガットは心強いと思って表情を明るくさせる。セリーザも優しい目で彼を見て、守りたいと思う気持ちが溢れていた。



「(わ〜、強敵参戦かぁ〜)」


 ガットを争う点において、1番の強敵であるセリーザ。ティアモは厄介なライバルが参戦してきたと思っている。


「まあ、彼女も実力者ですから頼もしいですよね?姿を消せる変わった魔法をお持ちですから」


「俺らに出来ない事出来るってのはデカいよな」


 川での出来事を知らないシャイカとサラは、セリーザの同行を頼もしく思い、反対する理由は何も無かった。ティアモは知っているが、かと言って彼女も反対する気は無い。


 何よりガットがセリーザが同行してくれる事に、嬉しいと思っているので、それに水を差す気など無かった。


「よろしく、歓迎するよセリーザ」


「ああ、こちらこそ」


 ティアモとセリーザの間に固い握手が交わされる。



「ガットお兄ちゃん、絶対に帰ってきてね!?此処ガットお兄ちゃんのお家でもあるから!」


「うん、ありがとうティーナ。絶対帰ってくるから少し待っててね」


「留守は僕に任せてくれ」


 ガットが再び旅立つと聞いて、ティーナはまた帰って来てと泣きそうな顔で言うと、彼は妹のような彼女の頭を撫でて優しく微笑む。


 モンスター村を纏める役目として、ローレンがしっかりと留守を守ってくれるので安心だ。


「うおおー!皆ー!頑張ってこーい!」


 ドンナー達モンスターも、それぞれガット達に向かってエールを送っていた。


 セリーザを加えた勇者一行が、今再び旅立つ。

次回は平原で、敵が策略を持って襲いかかります。

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