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4話 勇者一行の争奪戦

「だからあの……僕は床で……」


「ガット君、それじゃ解決しないんだよー?」


「硬い床では疲れが取れませんし、むしろ体を痛めてしまいます」


「フカフカのベッドの方が良いぜー?」


 今日の寝る場所について、勇者一行の宿泊する部屋はベッドが3つだけで、ガットは自分の寝る所は床で良いと3人に伝える。急に自分が転がり込んでベッドを横取りなど申し訳無いとなり、男と女が一緒のベッドに寝るのは不味いと思った。


 だがそれで納得する彼女達ではない。


「僕寝相良い方だからさ、僕の隣なら寝返りを喰らう心配とか無いからね?」


 金髪の美女ティアモが安心させるように優しく微笑む。


「寝相の良さなら私も負けません。私となら神のご加護で朝まで快眠出来ますよ」


 黒髪の美女シャイカが慈愛に満ちた微笑みを見せる。


「俺と一緒の方が良い夢見れるぜ?つか見させてやるよ」


 赤髪の美女サラが勝ち気な笑みを浮かべて自分の方へ誘う。



「いや、待ちなよサラ。君は結構寝相悪い方だから危ないんじゃないかな?華奢なガット君が潰れたら一大事だよ」


「潰さねぇように気を付けるっての!ティアモの方こそ抜け駆けして食う気満々じゃねぇか?」


「会って早々に色々段階すっ飛ばしてそこまで行かないって、君じゃあるまいし!」


「おいおい自分の事棚に上げんなよ!つかそこまでって事はある程度行く気か!?」


 此処でティアモとサラが言い合いとなり、火花をバチバチと散らせていた。


「お二人とも落ち着きましょうよ、此処は仲間ですからお互い穏やかに冷静に……」


「シャイカ、ガット君の前だからって良い人になって僕達を悪者にしようとしてないかなぁ?」


「魂胆見え見えだぜ聖女様よぉ〜」


 シャイカが間に割って入り、喧嘩を止めようとした時。2人はガットにアピールする為、そういう姿を見せているのだと指摘。


「あらあら、何の事でしょう?私はこのまま穏やかに終わってガット君と一緒の甘い一時を過ごしたいだけですから」


「甘い一時がド本音だろ」


「なんだかんだで君も狙ってるの分かるからね〜、どれくらいの付き合いだと思ってんのさ?」


「とにかく総合的に考えれば私がガット君と一緒のベッドで眠るのが最も安全だと思いますから」


「あれ〜?僕達が危険な肉食獣で君は安全な草食みたいに聞こえるけどねそれ」


「今更清楚ぶるなよ。お前が肉食獣だっていうのとっくにバレてんだからな」


 止めに入って収まるかと思えば、3人の間で火花が散って場が更にヒートアップしそうな感じだった。



「あ、あの……皆さん」


 そこにどうしようとオロオロしていたガットが、3人を止めようと口を開く。


「皆仲良くしてほしいです……喧嘩は止めましょう……?」


 困ったような顔でガットは3人へ喧嘩を止めてと、お願いする。



「「(可愛い)」」


 この時、勇者一行の心が完全一致した。




「(皆仲良くしてほしいとは言ったけど……)」


 夜に久々となるベッドの上でガットは横になる。道具屋の硬い床で眠っていた時よりも、段違いに寝心地は良い。だが彼は今落ち着いて眠れない状況だった。


「(何で3人とも一緒のベッドなの〜!?)」


 ガットの眠るベッドにはティアモ、シャイカ、サラと3人が1つの場所で眠る状態だ。


 ガットの両端にティアモとシャイカが居て、サラは端の方で寝ていた。誰が美味しいポジションを取るかで再び一騒動が起こり、結果としてこれで落ち着く。サラとしてはかなり不本意だが。


「ん〜」


 添い寝している状態でティアモはガットにより密着する。この時彼女が着てる黒シャツ越しから伝わる、豊かで柔らかな感触はガットの胸を高鳴らせ、顔が一気に熱くなってしまう。


「(や、柔らか……すっごく良い匂い……って僕これ変態じゃん……!?)」


 温かい体温と共に花のような良い香り。ガットは心地良いとなりながらも、憧れの勇者に対して邪な心で失礼と、ティアモから離れた。


「く〜」


「んぅっ……!?」


 そこへシャイカがギュウっとガットを抱き締め、白い寝間着越しから伝わる、ティアモに劣らない大きく実った果実に顔が埋まり、先程以上に香りが鼻を通して来た。


 抜け出そうとするも、意外と力強いせいかシャイカの腕はビクともしない。それどころか距離を離されたティアモが再び迫り、シャイカと同じくガットを抱き締めた。


 この結果、前からも後ろからも美女二人に出し締められて、全く身動き出来ない状態に陥る。


「(うう〜……これ眠れるのかなぁ……?)」


 道具屋の時よりも遥かに寝心地が良い。むしろこれ以上無い天国で、世の男達が心底羨ましがるのは間違い無いだろう。


 このまま眠れるのかと不安に思いながら、ガットは久々のベッドで眠りに落ちていく。



「んあ……」


 窓から差し込む朝日に、サラの目が開く。上半身を起こして、乱れているノースリーブの白シャツを直さず彼女の視線は眠っている者達へ向けられた。


「何が寝相良いだ、こいつら……!」


 その目に映るのは共にガットを抱き締めてスヤスヤ眠り、夢の世界真っ只中なティアモとシャイカの姿だった。この後、サラの怒号によって一行が叩き起こされたのは言うまでもない。

次は勇者達が色々と話し合う回です。

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