35話 道中でも彼を取り合う女達
「ティーナ、疲れてないか?足とか辛くないか?」
「うん、大丈夫だよお父さん」
不安定な岩場を、ローレンはティーナの手を取って一緒に乗り越える。気遣う父親に娘は大丈夫と、明るい笑顔で道中の長時間の移動による疲れを感じさせなかった。
「疲れてるならガット、俺が背負ってくぜ?俺にとっちゃお前は全然軽いしな」
「いえ、ガット君1人なら私も背負えます。サラは前線で戦う身なので何時戦闘になるか分かりませんし、私の方が色々安全かと」
同じく岩場を歩くガットに、サラは背負って行こうかと提案してくる。そこにシャイカがそうはさせんと、ガットの傍に寄り添う。
「俺より危険な性悪聖女が何言ってんだ、ああ?むしろお前の方が危険だろうが」
「事実でしょう。ギラギラと光る肉食の目が危険だと自ら教えてるようなものじゃないですか」
ガットを挟んでシャイカとサラが言い合いとなり、火花を散らせる。
「じゃあー、間取って僕が背負うよガット君♪」
「「駄目(でしょう!)だろ!」」
そこにティアモが彼を運ぼうとしているのを見逃さず、2人の女勇者に向けた声が重なった。
「えっと、あの……僕まだ歩けますから」
まだ歩ける体力はあるので、ガットは彼女達の申し出を丁重に断って、再び一緒に歩き始める。
明るかった空も夕焼けを過ぎ去り、空も地上も暗闇の世界に染まりつつあった。
「場所までは後どれくらいだドンナー?」
「まだ遠い!結構歩く!」
この中で目的地を唯一知るドンナー。セリーザが尋ねると、その場所まではまだまだ遠いらしい。
「流石に暗闇の中をこの大人数で移動するのは危ない。幸い近くには川もあるから、今夜はこの辺りで野宿と行こう」
「ああ、それが良い。皆今宵は此処で英気を養うぞー!」
「オオー!」
ローレンと話し合い、野宿をする方向で行くとセリーザは魔物達に、この場所で一晩過ごす事を伝えた。
「えーと、枯れ木は何処に……」
「ガットお兄ちゃん。こっちいっぱいあったよー!」
ガットや周囲の魔物達が枯れ木を探していると、ティーナが発見したようでガット達はそこへ向かう。
「凄いよティーナ!よく見つけたね」
「えへへ……」
目の前には沢山の木があって、枯れ木がいくつかある。ガットがティーナを褒めると、彼女は照れたような可愛らしい笑顔を見せた。
「……なぁシャイカよ」
「なんですか?言いたいことはなんとなく分かりそうですが」
同じく焚き火に使う木を探していた2人。サラは真剣な表情を見せており、シャイカも同じ顔を浮かべている。
「ティーナって、絶対ガット好きだよな?」
「ええ、あれは……友愛とかではなく女が男を好きになる方の好きに見えました」
「今はお子様な感じ……いや、実際年齢は上かもしれねーけど。それで体がもっと成長したら、物凄い強敵になりそうだよな?」
「元々知っている幼馴染的な位置は強いですからね……しかもガット君がティーナさんのような体型の方が好みならば、現時点で強敵となってしまいます」
真剣で凛々しい顔を浮かべる2人は、ガットを争う強力なライバルについて語り、分析をしていた。ティーナが本当にそういう気があるのか、不明ではあるが。
「いや、あいつはでっかい方が好きだぜ?つかそれ考えると……セリーザも怪しいかもしれねぇ」
「確かに彼女も中々の物を持っていてかなりの強敵。しかもガット君のお母様と親しいという強みまで持っていますから、私達もお会いしてご挨拶しなければなりません」
枯れ木を拾う目的も忘れ、何時の間にかライバルとなりえる者達の分析に熱中。シャイカとサラはガット達に木を拾う終わった事を伝えられるまで、語り合ったのだった。
「ドンナー達は肉を取って来た!これ美味い!焼くともっと美味い!」
ドンナーのいる魔物達は食料となる肉を調達。これで今日の夕飯の心配は無さそうだ。
「おおー、最高〜♪」
これは肉好きのサラからすれば嬉しい。隣のシャイカは野菜もあれば、と呟いていた。
「魚も釣って来たから、これで今日は夕飯と行こうか。じゃあ火を点けるよー」
ティアモは得意の魚釣りで何匹か釣って大漁。そして拾って来た枯れ木を集めると、サラマンダーの力を使って火を灯す。
赤く燃え上がる焚き火で肉や魚を焼いて、皆はそれぞれ美味しく味わった。特に地下闘技場に閉じ込められていた魔物達の食べっぷりは、あっという間に集めたご馳走を平らげそうな勢いだ。
夕飯を食べ終え、夜も更けたので皆がそれぞれ眠りにつく姿があった。ドンナーや魔物達の大きなイビキもあって、ガットは眠れない。
「(ちょっと汗かいたし、川で水浴びしておこうかな……)」
ガットは皆が寝ている場所から、離れた川沿いにまて移動。そこで着ている服全てを脱いで、川へと入っていった。
「はぁっ……」
冷たく気持ち良い。短期間で色々な事が起こり、疲労のあったガットの体が癒されていく。
「(僕の記憶が無くなって、その過去にはああいう事があった……)」
セリーザから聞かされた話を思い返す。孤児院で生まれ育ったと思った彼にとって、驚く事ばかりだった。自分の記憶は消されて、その過去には色々な事が起こっていた。
しかしまだ全て知った訳ではない。自分の記憶を消した母は何故そうしたのか、その母は生きてるのかと。気になる事は色々ある。
「入っていたのか、ガット」
そこに声が聞こえ、誰なのかはすぐ分かった。これはセリーザの声だ。
「セリーザさん、少し汗かいちゃったから……!?」
振り返った時、ガットは目を見開いていた。
目の前に居るのは自分と同じ、一糸纏わぬ姿で褐色の肌、全てをガットの前に晒したセリーザだ。
月明かりに照らされた彼女の姿、その美しさから目を逸らせない……。
次回はセリーザの想いと共に……!?な回となります。




