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34話 辛い過去を知った彼を慰める

「あんたらは仲間だったって訳かい。だから救出に拘ってたんだなぁ」


 ずっと切り株の上に腰掛けて話を聞いていたサラ。立ちあがると、視線をセリーザに向けていた。


「私1人ではあの大貴族の女には太刀打ち出来なかったかもしれない、それで救出失敗を避けたかった……そこに逃げるティーナを発見し、追いかけた所にお前達が居た。そして力を見た時、頼れるかもしれないと思い後をつけたのだ」


 あの宿屋で張り付いていた以前、セリーザは闇に隠れて路地裏に来た勇者一行をずっと見ている。前もって連中の内部に入り込んで調べていたが、マーヴェルの存在を知って自分1人では手を焼く相手だと感じた。


 そこへ下っ端達を簡単に撃破して、ティーナを守った彼女達を見れば、協力し合えるかもしれないとセリーザは判断。


「(そっか、この人とは以前に生まれ育った村で共に暮らしている……だからあの時信じられるって思えたんだ)」


 今のガットがセリーザと初めて会った時、彼女は見知らぬ女性だった。それでも信じられると感じたのは、2人がそれより前に出会って知り合っていたから。それがセリーザを信じる事へと繋がったのだろう。


「セリーザお姉ちゃん……ごめん、お姉ちゃんの事を忘れちゃってて……」


「気にするな。あんな出来事があったのだから、相当ショックだったのだろう……それより無事で何よりだ」


 ティーナはあの日のショックから、記憶が色々抜け落ちていた。それがセリーザの事も忘れてしまい、悪いと思って頭を下げて謝る。


「しかし巨大で堅い敵……伝説の魔物と言われるドラゴンとか、そういった類じゃないよね?」


「それは違う。あれは人の形を大きくしたような、それで体は鋼のような堅さだった。それが戦った感想だ」


 改めてメルシャ達の集落を襲った敵について、ティアモはセリーザに問う。その時戦った彼女も、当時の事を思い出しながら特徴を伝えていた。



「(記憶を消したのが僕のお母さん……何でそうしたんだろう?故郷を滅ぼされた辛い記憶を遠ざける為かな……?)」


 ガットの方は自分の母親、メルシャについて考える。何故自分の記憶を消したのか、そもそも母は生きているのかも分からない状態だ。


 空白となっていた孤児院以前の記憶を聞かされるが、その分新たな謎が出てきてしまう。



「それよりこれからの事だ。このままゾロゾロと大勢で人目を避けて移動を続けるのは、あまりにも目立つ。何処かで腰を落ち着けられれば良いが……」


 これからについて話すローレン。魔物達が長く地下帝国に閉じ込められた心労も考えると、何処か落ち着いた場所で心身共に休ませたい。


「それならドンナー!良い所知ってる!この大陸歩いて来た!分かる!」


「え、そうなのか?じゃあ道案内頼めるか?」


「ドンナーに任せる!」


 俺に任せろとばかりに、純粋な目を輝かせてドンナーは胸を叩く。



「ガット君はこれから、そっちについて行くんだろう?」


「はい。僕の記憶は消えていますけど……元々僕の知り合いで親しくしてた人達ですし、一緒に行けばお母さん、そしてお父さんの事に繋がっていくかもしれないですから」


 ティアモはガットがセリーザ達と共に行く事を、なんとなく分かっていた。予想通り彼はその選択をしている。


「だったら私達のする事も決まってますよね?」


「だよな」


 シャイカとサラは互いの顔を見て笑い合った。



「僕達もガット君達と共に行く、それしかないよねー」


 そこへティアモが2人にそれを伝えると、2人は揃って頷く。勇者一行3人ともガットや魔物達と同行する事を選択したのだ。


「皆さん!?これは僕の問題であって皆さんは……!」


 彼女達3人は何も関係なく、自分の問題に深く巻き込めない。そう言いかけたガットだったが、そこにシャイカの言葉が遮る。


「先程のセリーザさんの話を思い出して見てください。彼女は得体の知れない巨大な存在の他にも、襲いかかる魔族と遭遇してるのです」


 シャイカの言葉に、ガットはセリーザの話を思い返す。確かにメルシャと共に居た時、彼女はガーゴイルと呼ばれる魔族に襲われていた。


「それに合わせて巨大な相手が暴れ出して集落を破壊……偶然にしては出来過ぎに思えます。魔族とそれが組んでいる、と考えるのが自然でしょう」


 ガーゴイルの強襲から例の怪物が暴れている事。シャイカはこれが単純に暴れた、偶然とは思えない。


「つまり、ガットの居る集落を襲ったのはクソッタレな何者かが企みやがったって事だな」


 裏で糸を引く存在に対してか、サラは拳をポキポキと無らしていく。



「そう、それは……この世界を混沌に陥れると言われる、魔王が関わってるかもしれない。そこに繋がる可能性がある訳だ」


 ティアモ達は元々勇者一行として、魔王討伐を目指している。これまで手詰まりが正直続いていたが、今回初めて魔王らしき手がかりに繋がるかもしれない。


 ティアモやシャイカにサラ、3人がそう感じていた。


「魔王が……僕達の集落を滅ぼしたという事なんでしょうか?」


「悪い魔族が関わっている事を考えれば、そうなっちゃうね」


 魔王は魔族や魔物を統べる存在。それがどんな意図でガット達の集落を滅ぼしたのか、目的は不明だが魔王ならガーゴイルや未知の怪物を従える事は出来るはずだ。


「となれば目的は共通してる。離れ離れになっちまう必要も無ぇってこった。むしろ一緒の方が手がかり掴めそうだしな?」


 一緒に居られると、サラは後ろからガットの頭に右手を置いた。


「むしろ離れる気はありませんから」


「わっ……!?」


 シャイカがガットの腕にしがみつくと、その時に柔らかい感触がムニッと伝わり、彼の頬はすぐ赤く染まった。


「っておい!性悪聖女が!さり気なく誘惑に走るな!」


「誰が性悪聖女ですか船酔い戦士!」


 シャイカとサラが言い合いになっている隙に、ティアモはガットを救出して遠ざける。


「という訳でまた一緒だよガット君♪」


「は、はい」


 ガットの肩に手を回して体を密着させるティアモ。そこに思わぬ人物も、彼に寄り添って来る。


「むー、ティーナもガットお兄ちゃんと一緒だもん……!」


 ティーナはガットの右腕にしがみついていた。どうやら勇者一行とのやりとりを見て、嫉妬したらしい。


「(あら〜、これは思わぬ可愛いライバルとも争わないと駄目かな〜?)」


 まさかティーナもガットの事を、と考えるティアモ。彼を争う戦いも新たな展開を迎えそうだ。


 ガット達はセリーザ達と共に、魔物達の住める場所へ向かう事となった。

次回は旅の途中で久々の争奪戦な回、これが2話続きます。

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