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29話 人間VS魔物

「若干数名、ふざけた仮面をしていますが……覚えてますよ。素晴らしいショーを壊してくれた不届き者として」


 マーヴェルの背後からは次々と武装した屈強な男達が入って来る。中には重装備の鎧を纏い、騎士にも劣らぬ武装の者まで居た。


 彼らの姿を見て、痛めつけられた時のトラウマが蘇って来たのか魔物達の体が震え出す。


「そしてローレン、あなた私が言ったお使いも満足に出来ず帰って来て何も役に立たないかと思えば……こんな反逆まで企てていたなんて、覚悟は出来てますの?」


 美しい大貴族の瞳が冷たく突き刺すように、ローレンへ向けられた。


「お使いって、最高級のハーブティーの為に必要な花を取って来いとか言われても……特に情報も無いのに分かるわけ無いだろ!」


 どうやらローレンはマーヴェルから理不尽に扱き使われたようで、不満を込めて強く言い返していた。


「お父さんや皆を虐めた悪い人!謝って!」


 娘のティーナも、怒った顔でマーヴェルへ謝罪を求める。



「……どうやら貴方、消されたいみたいですね。魔物の分際で大貴族の私にそのような暴言……万死に値しますわ!!」


 口元は笑みを浮かべながらも、顔は全く笑っておらずマーヴェルは地面に強く鞭を打ち付ければ、それと共に部下の者達が前に出て武器を構える。



「ア、ウゥ……」


「また……痛めつけられる……!」


「(いかん、彼らはなんとしても守らねば……!)」


 セリーザは右腰の鞘から細身の剣を抜き取る。


「おいお前ら、そんな今ビビる必要あんのか?」


「!?」


 そのセリーザをサラが片手で出して制すれば、魔物達に言葉をかける。


「お前ら散々あいつらにやられてんだろ、ムカつかねぇのか?やり返して思い知らせようとか思わねぇのか?」


「……!」


 サラの言葉を受けると、恐れていた魔物達に少しずつ心の変化が現れつつあった。彼らの中には度重なる暴行で命を落とす者まで存在し、何も出来ない悔しさが確かに存在していた。


「今お前らの体は自由に動くだろ!?魔物の強い力を見せつけて、やられた分を倍返しにしてブッ潰してやれ!!」



「やられたら……」


「やり返す……」


「倍返し……!」


 背中を強く突き動かすような、女戦士の声が力となって魔物達はギラリとマーヴェルの部下達を睨む。


「何だてめぇら!?奴隷の分際で人間様に逆らおうってのか!」


「ゴミ共が!痛めつけて再教育……」


「「仲間の敵討ちだぁぁ!!」」


「うおお!?」


 鬼気迫る形相と迫力で襲いかかる魔物に、一瞬恐怖を覚える男達。オークの渾身のパンチが軽装の鎧の上から、腹を抉るようにヒットすれば、食らった相手は悶絶して倒れ込む。


 ゴブリン達は連携して、複数で相手に飛び掛かれば、ひたすらタコ殴りにしていく。


「ドンナー!ビビらない!」


「ぶはっ!」


 その中にはドンナーも果敢に戦う姿が見えて、男の顔面に飛び蹴りを食らわせていた。



「お前凄いな。彼らの心を立ち直らせてしまうとは」


「すげぇ力持ってんのに今振るわないのは勿体ないと思っただけさ。っと、俺もブッ飛ばしてぇから混ぜろーい!」


 感心するような目をセリーザから向けられたサラは、子供の遊びに混じる感じで戦いに参戦。押されているゴブリンに加勢すれば、大剣を振るって相手を薙ぎ払っていく。



「……」


 マーヴェルはイラッとした顔で戦いを見ていた。


「ぐわぁ!」


 そこに部下の男が彼女の足元まで吹き飛ばされ、口元から飛び出た血がマーヴェルの赤いヒールにかかる。


「ま……マーヴェル様……あいつら強……」


 瀕死の男が主に助けを求めようと、血で汚れた手を伸ばして来た。



「貴方、私の靴を汚しましたね?」


「へ……?」


 マーヴェルの左手に鞭がしっかり握られる。その時、彼女の目は冷たく男を見下ろしていた。それを見た男の表情が恐怖であっという間に染まる。


「ギャァァァ!!」


 ビシィッと、ファラリスの鞭よりもしなる一発を食らった部下。壁に叩きつけられて、ぐったりとして動かなくなった。



「熱っ!これ通れないよ!」


 マーヴェルの業火によって燃え盛る出口へと通じる扉。その熱が何者の突破も許さず、ガットはなんとか通り抜けようと試みたが、焼き尽くすような蒼白い炎が許さない。


「(ウンディーネの力で行けるか……?)」


 業火の前に水の精霊の力を得ている、勇者ティアモが立って水の魔法を試みようとしていた。


 そこへ自分に向けられる殺気に気づくと、足元に伸びてくる一撃に地を蹴って右へ飛ぶ。



「その炎は私の意志を持つ不滅の炎。私の精神を断ち切らない限り消える事はありませんわ」


 赤いヒールの足音と共に、マーヴェルが左手に鞭を持ち、右手に蒼白い業火を宿す。


「!皆僕から離れるんだ!!」


 マーヴェルの姿を見て、ハッと気づけばティアモは周囲の者達に自分から離れるように叫ぶ。


「フッ!」


 右手に宿す業火が放たれると、ティアモや自分の周囲を炎が取り囲むように広がっていく。


「危ない!ティーナ、もっとこっちに!」


「でも……!」


 ローレンが炎に近づこうとしている、ティーナを遠ざけるが彼女はある人物がいない事に気づく。


「ガットお兄ちゃんもいないの!」


「え!?まさか……!」


 ティーナと共に、ローレンは燃え盛る蒼き業火へと目を向けていた。

次回はマーヴェルとの戦いとなります。

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