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27話 怒り爆発

「おお!キャットヒューマン!?」


「今日はレアな魔物が痛めつけられるのか!どんな鳴き声をするか楽しみだなぁ〜」


「ゴブリンとかオークとか、気持ち悪い魔物が苦しむのも良いけど〜。たまにはああいうのも良いよね?」


 周囲の人間からは、反吐が出るような言葉が次々と飛び出してくる。同じ人間に近い種族だが、彼らはその事をなんとも思っていない。


 ただ魔物が痛めつけられて苦しむのを、楽しむ事しか考えていなかった。



「……何だろうな、なんかすっげぇムカつくわ」


「気持ちは大いに分かるが、この魔法は相手に干渉したら効力が無くなってしまう。下手に手を出せば、即座に厄介であろう者が来るはずだ」


 同じ人間ながら、周囲の魔物が痛めつけられるショーで弱いもの虐めを楽しむ姿に、サラは強い苛立ちを見せる。それを宥めるようにセリーザが声を掛け、今は抑えろと伝えておく。


「その気になれば1人で来れるけど僕達をわざわざ連れて来た……セリーザ、君はひょっとして魔物を救おうとしてるんじゃないかな?それで僕達を案内して助力を求めようとした」


 ティアモの真剣な目がセリーザに向けられ、彼女が自分達を連れて来たのは何故なのか、その答えをぶつける。


「ああ、そして……私も魔物。いや、魔族と言うべきか」


「 !」


 かぶっていたフードを外すと、セリーザのウェーブ状の銀髪が現れる。背中まで伸びている長く美しい髪だが、それより一行が驚くのは、彼女の両耳が人間より尖っている事だった。


「私はダークエルフのセリーザ、これが本当の私だ」


「ダークエルフ!?高い魔力を誇ると言われる魔族じゃないですか……!」


 驚いた表情のまま、シャイカはセリーザの本当の姿を見ている。その種族は本で読んだぐらいしか知らず、まさか実際に目にするとは思わなかっただろう。


「時間が無い、彼らは元々普通に暮らしていた魔物だ。それが人間達の手によって捕まり、あのような無惨な扱いを受けてしまっているのだ」



「アォォ……」


「ウゥゥ……」


 衰弱したゴブリンとオークは、怯えた目をしていた。体中には無数の傷が刻まれ、これまで散々痛めつけられたのが嫌でも分かってしまう。


「せいぜい派手に泣き叫べよ薄汚い魔物のゴミ共!てめぇらの価値なんざその程度しかねぇんだからなぁ!?」


 ファラリスと呼ばれる魔物ハンターの大男が、腰の鞭を取り出せば地面にビシッと威嚇するように叩きつけてくる。その音だけで魔物達はビクッと驚いていた。


「やれぇー!ファラリス!」


「なんだったらブッ殺せー!」


「そうだよ!殺しちまってもいいだろ!?魔物が死んでも誰も困らないし!」


 周囲の観客からは殺せという言葉が飛び出し、そこから彼らはヒートアップしていく。


「「魔物を殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!!」」



「オーケー!オーケー!俺もそろそろ加減して痛めつけるのも少し飽きてきた所なんだよな。皆のリクエストに応えて今日は魔物の処刑ショーに変更だ!!」


「ウォォォォーーー!!!!」


 観客からの言葉を受けて、ファラリスは勝手に痛めつける方から魔物を殺す方へと変更していた。


「マーヴェル様、よろしいのですか?キャットヒューマンまで……」


「構いませんわ、良い余興ですし魔物はまだいくらも居る。彼らが死んだ所で何も変わりませんから」


 側近がファラリスの勝手な振る舞いを見て、大丈夫かと主に聞くがマーヴェルは止める気が無いようで、用意された豪華な椅子に座って紅茶を優雅に飲む。


「どのみち魔物が死ぬ運命は変わりませんし、どうせなら少しは人間の役に立って死んでくれれば良い。何事も有効活用、ですわ」


 大貴族である彼女は残酷な笑みを浮かべていた。



「ウァァ!アァァァ!」


「ウォォ!オォォン!」


 ゴブリンやオークは壁まで逃げて、首を何度も横に振る。死にたくないと叫んでいるような、悲痛の声が魔物達から出てくる。


 そこに魔物達の前に立って、ファラリスと向かい合う者が居た。キャットヒューマンであるティーナの父親だ。


「彼らよりせめて……私からやってくれ……!」


「ほう?仲間を守る為に自らを犠牲たぁ、泣かせるねぇ?だが」


 魔物の前に立つティーナの父親に、ファラリスは鞭を振るった。


「ぐはぁ!」


 体に鞭の一撃を受けて、彼の体が吹き飛ばされると壁に叩きつけられる。


「魔物風情がそんなもん似合わないだろうが、気取ってんじゃねぇぞコラ!」


「ぐ……ぅぅ……!」


 ファラリスは叩きつけた相手へ、容赦なく迫る。崩れ落ちて倒れる彼の背を踏みつけ、体重をかけていけば男の顔は苦悶の表情へと変わっていく。



「お父さんが!お父さんが……!」


 ティーナが涙を流しながら悲痛な叫び。その横でガットは右拳を強く握り締める。


 相手は体格が良く、まともにやり合ったらまず勝ち目が無い。ただ、彼の中である気持ちが生まれていた。


「(魔物が……そこまで悪い事をしたのか?何であんな事が出来る……何で笑ってられるんだ……いくらなんでも、酷すぎる!)」


 初めて強い怒りがガットの中に宿る。助けを求める魔物を逃さず見世物にする、度重なる魔物への仕打ち。そして今ティーナの父親の命が危ない。



「せいぜい苦しんで死ねや!」


「がぁぁ!」


 ファラリスはティーナの父親の首を、右手で絞め上げたまま軽々と釣り上げる。このまま首を絞めて苦しませ、殺す気だ。


 苦しみから悲鳴が上がり、ティーナはもう見てられないと泣きながら両手で顔を覆う。



 次の瞬間、許せないという強い思い共にガットの怒りが爆発した。



「離れろぉぉぉーーー!!」


 闘技場へ向かって彼が叫んだ瞬間、彼の青い瞳が光る。


「ウガァァーーー!?」


 急にファラリスの巨体が吹き飛び、手からティーナの父親が離れるとそのまま、ファラリスは闘技場の壁に背中から思いきり激突する。


 魔物を痛めつけるはずの者が急に吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられて先程まで騒がしかった観客達は、皆が呆然となる。


 その場に居た者は何が起こったのか、理解が追いついていなかった。

次回は猛反撃、魔物達の救出となります。

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