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22話 同じ秘密を持つ少女に迫る危機

「これは……ガット君と同じ……!?」


「!」


 シャイカが少女の猫耳に驚いていると、少女の方は慌ててフードで隠す。だが2人は目の前にいる人物が、何者なのかを既に知ってしまう。


「キャットヒューマン……だね、君も」


「……?」


 ガットに君もと言われ、少女は意味がよく分からなかった。すると、彼は自分から黒いキャスケットを取る。


「!?」


 少女はガットの頭に生える猫耳に気づき、驚くような表情を浮かべた。


「安心して、僕も君と同じなんだ」


 安心させるようにガットは少女に微笑むと、改めてキャスケットをかぶり直す。


「僕達はこの国について調べに来たんだ。話、出来るかな?あ、その前に傷の手当てだよね。確か傷薬が……」


 自分の荷物をガットがゴソゴソと漁って、探している時だった。


「ガット……お兄ちゃん?」


「え?」


 少女はガットをじっと見て、その名を呼ぶ。これにはガットも荷物を漁る手が止まり、少女の目を見つめ返した。


「僕の事を知ってるの?君は……!」


 自分を知るという事は、孤児院に居た以前の自分を知っている。自らの記憶に関わる事にガットは身を乗り出す勢いで、少女へ更に聞こうとする。


 その時、それを邪魔する無粋な客が来てしまう。



「こんな所にいやがったのか、悪い子猫ちゃんよぉ〜」


 突然男の声がした。それに少女は先程以上の恐怖からか、ビクッと体が跳ねてガットとシャイカが、共に声のした方へと振り向く。


 そこにいたのは数人の男達の姿だ。いずれも体格が良く、武器をそれぞれ身に付けていた。


「……なんでしょうか、あなた方は?」


「あ?なんでしょうかはこっちの台詞だぜ姉ちゃん。こっちはそこに居るフードのガキをずっと探してたんだ」


 男達の目当てはフードの少女。獲物を見るような嫌な目つきが、少女を捉える。


「勝手に忍び込んで来やがって、捕まえたら二度とそう出来ないようにしっかり躾けてやんねぇとな?」


 近づいて来る男達に少女の体はガタガタ震えていた。


 これを放っておく訳にはいかないと、気づけばガットは男達の前に少女を庇うように立っていた。


「あの、嫌がってるから駄目だと思います。無理やり連れて行くなんて」


「はあ?何だこのガキ、てめぇ関係ねぇだろ!」


 邪魔してくるガットに男は苛つき、見下ろす。それにガットは真っ直ぐ目を逸らさず睨み返す。


「あんま舐めてっとガキ。てめぇも教育してやっから……!」


 男が左腰の鞘から剣を抜き取り、ガットに向けようとすると。


 ガキィンッ


「うぉ!?」


 男の剣が弾かれ、地面に突き刺さる。一瞬何が起こったか、1人を除いて誰も理解が追いつかなかった。


「可愛い子供相手にいい大人が、見てられませんね。あまりにも醜い」


 シャイカはその手に青い杖を持って構えている。男が剣を抜いた刹那、シャイカの杖が叩き落としていたのだ。それはまるで棒術の如し。


「何だぁ、この姉ちゃんは?」


「丁度良い。此処はおあつらえ向きの場所だし、お楽しみにしゃれこむってのも悪くねぇよなぁ?」


「おお、すんげぇ上玉だしよ。たっぷり可愛がってやらぁ!」


 男達の欲にまみれた目が、シャイカへ向けられる。女として魅力的な彼女に、狙いを定めたらしい。


「下衆が」


 低く呟くシャイカ。男達を見る、その目はゴミを見るようだった。


「その目が何処まで持つか、試してや……!」


 剣を手に男が襲いかかろうとした時。



「ゲブァ!?」


「ゴヘェ!」


 突然男達は吹っ飛ばされ、壁へと派手に叩きつけられていた。


「な、なんだぁ!?」


 仲間達が急にやられてしまい、訳がわからないといった感じの男の前に、ある人物が立つ。頼れる女戦士ことサラだ。


「随分暗い場所で賑やかなパーティーやってんじゃねーか、なぁ!?」


「ゲホォ!」


 サラが剣を抜くまでもなく、男の無防備な腹めがけて右拳で、抉るようなボディブローが炸裂。男は悶絶したまま、崩れ落ちていた。


「ひ、ひぃぃ!?」


「ば、ば、化物ー!」


 信じられない強さの女戦士を前に、男達の最初の威勢は欠片も無い。彼らは尻尾を巻いて逃げるだけだ。


 しかし、その尻尾を掴み逃さない者がいる。女勇者が逃げる彼らの前に立ち塞がっていた。


「逃がすと面倒そうだから、おやすみー」


「ガッ!?」


「グッ!?」


 現れたティアモが男達を、剣の峰打ちによって気絶させ、誰一人逃す事は無かった。



「えー、とりあえず纏めるとだ……そこの嬢ちゃんをガットが発見して追いかけ、それが実はキャットヒューマンだった。そんで嬢ちゃんを追いかけ回していたのが、あそこに転がってるクソ野郎共って事で良いんだよな?」


「大体そんな感じ……でしょうか?」


「合ってますね、私も彼女を見た時は驚きましたよ」


 路地裏にて、男達は気絶したまま身動き出来ないように拘束されている。そことは離れた場所でティアモとサラは、ガットとシャイカが発見したキャットヒューマンの少女と向き合う。


「もう、怯える必要は無いからね?」


 少女にとっては見知らぬ者達で、不安はあるが目の前に入るガットの笑顔を見れば警戒心は薄れ、消えていく。


「とりあえず傷の手当てとかしなければいけませんし、此処だとゆっくり話せませんから宿屋行きましょうか」


「賛成、丁度腹も減って飯時だしな」


「こんな時でも食事ですか」


 宿屋の食事目当てで、サラは宿屋行きを迷わず賛成。これを見たシャイカが呆れるように溜息をつく。


「そういえば君、名前は?このまま女の子じゃ不便だから教えてほしいな〜」


 ティアモは少女の前でしゃがみ、安心させるように目線を合わせた。しかし少女は俯いたまま何も言わない。


「あの……君の名前、教えてくれると嬉しいかな?ゴメンね、僕記憶が無いみたいなんだ。」


 少女は以前の自分を知っているようだったが、ガットにはその記憶が無い。なので再び少女から名前を聞くという形になって、申し訳なさそうに尋ねる。



「……ティーナ」


「そっか、よろしくティーナ」


 ガットが尋ねると、彼には気を許しているのか、少女ことティーナは自らの名を明かす。


「(ガット君には結構懐いてるみたいで、同族だからかな……?)よし、善は急げだ。宿屋向かうよー」


 2人の話す様子を見ながら、ティアモは同じキャットヒューマンだからそうなのかと考えていた。そして勇者一行はティーナを連れて、暗い路地裏から抜け出す。

次回はティーナから話を聞きます。

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