21話 リーゾ王国での出会い
「見えてきたぜ!港町ポルトだ!」
順調に航海が続き、南の大陸までスムーズに勇者一行を海賊船は運んでくれた。ベンダの大声が船内に轟けば、一行は甲板へと出て来る。
「おいベンダ、このままこれが港町に入港は目立ち過ぎてやべぇだろ」
「勿論そこは分かってるっす!ちゃーんと、近くの海岸に止めときますからね!」
サラに言われるまでもなく、ベンダは悪目立ちする海賊船で、一般人が大勢居る場所に行こうとは思っていない。
船は港に行かず近くの海岸へ向かい、そこで停泊する。
「姐さんご武運を!」
「皆さんも気をつけて!」
「坊主も風邪引くなよー!」
海賊船から降りた勇者一行に、ベンダ海賊団が一斉に言葉を送りながら、再び海賊船は大海原へ旅立つ。
「お前らも元気でなー!」
「お世話になりましたー!」
「皆またねー!」
「少しは野菜食べてくださいねー!」
勇者一行も海賊団にそれぞれ叫び、言葉を交わしながら彼らと別れた。
「賊と呼ばれる人も悪い人ばかりじゃないんですね」
「まぁ以前は悪かったけどな。ブッ倒して改心したようで、とりあえず今回はあいつらに助けられたわ」
ガットの中で賊=悪い人、というイメージだったがベンダ達との出会いで、それは変わりつつある。
「よろしければそのまま海賊団の一員として共に行っても良かったのですが、ああいう人達と一緒の方がお似合いじゃありません?」
「ゴメンだっつーの。つか隙あらばガットから遠ざけようとしてんな聖女ならぬ悪女が……!」
「私は貴女の将来そっちの方が明るいと思って言っただけですが」
「ふ、2人ともちょっと……!?」
シャイカとサラの間で火花が飛び散る。これにガットは喧嘩が起こりそうと、慌てて止めに入ろうとしていた。
「はいはい、それより此処からリーゾ王国目指して行くよー」
ティアモは右手の指で指笛を作ると、それをピィーっと吹く。すると前方から2頭の馬がティアモ達の前に、疾走して駆けつける。
「あれ?この馬って……」
違う大陸に渡ったので、向こうに残ったままだと思われたが、今ガットの目の前に居るのはオーク退治などで世話になった、馬2頭で間違いない。
「あ、言ってなかったね。この子達は地の精霊ノームに仕える精霊なんだよ。だから違う場所に移動しても、こうして来てくれるって訳」
「精霊だったんですか。だから海を渡らなきゃいけない所も、来てくれるんですね」
ガットは完全に馬だと思っていたが、実は地の精霊に仕える存在。ティアモがノームに認められて契約を交わしているので、自由に呼び出せるという事だった。
「じゃ、そういう事だから乗ろうかガット君♪」
「ちょ!?ティアモ!そういうのは決めるってアレのはずだろ!」
ティアモが彼を馬に乗せようとした時、サラが待ったをかける。
「あれ?船室でサラとガット君、気を利かせて2人にさせてあげたんだけどー……それで美味しい思いしてまた独り占めする気かな?」
「お前も悪い勇者だな!あー、もうしゃーねぇ!」
海賊船で、ガットが落ち込んでいた時にサラは2人きりになって、彼を慰めていた。その時、ティアモはシャイカを止めて邪魔をしなかったのだ。
渋々サラはシャイカと2人で乗る事となり、ティアモはガットと共に馬に乗って移動を開始する。
「(これがシュッド大陸かぁ!)」
今まで居た大陸とは違う場所を行くガットに、次々と新たな光景が目に映る。
見知らぬ土地で行った事の無い王国を目指す、それが少年の心をくすぐってきた。この時ガットは目的を忘れ、純粋に冒険という物を楽しむ。
「意外とすぐだったなぁ!見えてきたよガット君!」
2人きりの時間があまりなく、残念な気持ちがありながらも、風を受けながらティアモはガットに目的地が見えた事を告げる。
ガットが前方を見ると、聳え立つ城と城下町に通じる門が見えてきた。オルスタ王国より少し小さな国だが、シュッド大陸の中では大国として知られるリーゾ王国だ。
勇者一行は門の近くで馬から降りて、門へ向かう。
「お勤めご苦労様です♪」
「見慣れないな君達、冒険者か?」
「ええ、なりたてなんで全然無名ですけども」
門番の兵士の男はティアモ達の事を知らない。オルスタ王国では勇者と呼ばれていたが、何処でもそれで崇められる訳ではなかった。
この大陸では無名なのを利用し、ティアモとシャイカは門番と冒険者を装って話す。
「確か通行料は銀貨1枚っすよね?どうぞー」
「うむ……確かに。通って良いぞ」
この国に入る為には通行料として、銀貨1枚必要なのは既に調べてある。サラは袋から銀貨を1枚取り出して門番に手渡す。通って良いと、受け取った門番は門の外側に移動。
勇者一行は正体を知られる事なく、リーゾ王国の城下町に入って行った。
「さて、すんなり町には入れたけどー……特に魔物らしき存在は見当たらないね」
城下町はオルスタ王国と変わらず、人々で賑わっている。ティアモは通り行く人を注意深く見るが、魔物を連れている様子は無い。
「普通の町、だよなぁ」
「オークとかそういった大型の魔物を奴隷としていたら、分かりやすかったんですけどね」
シャイカとサラの2人も、辺りをさり気なく見回したりするが、何処に魔物の姿は無かった。
ガットも3人を手伝おうと、一緒に周囲を見回していた時。
「(あれ?)」
路地裏の方を見ると、茶色いフードをかぶった幼い少女らしき姿が一瞬横切って消えていくのが見えた。
「ガット君?」
ガットが路地裏へ向かう姿が見えて、シャイカは彼の後を追って同じく路地裏に消えていく。
「どうしたんですか?」
「いや、フードをかぶった女の子がこっちに走って行ったのが見えて……」
幼い少女の走る姿を思い出すと、まるで何かに追われているような感じだった。その姿を放っておけず、気づいた時にはガットは少女を追いかけていたのだ。
「!あそこ、誰か居ますね」
一本道の路地裏を走っていると、そこは行き止まり。シャイカは行き止まりの隅に影となって蹲る、フードをかぶった少女を発見。
外見はガットよりも小さい感じだ。
「(この子だ、さっき見たのは……)」
先程ガットが一瞬見た少女と同じ姿。間違いないと確信して、蹲る少女に合わせてガットはしゃがみこむ。
「えっと、こんにちはお嬢さん」
「……」
優しく語りかけるガットに、幼い少女は僅かにその顔を上げる。少女の目は怯えてるように見えた。
「頬に擦り傷が……ちょっと見せてもらっていいですか?」
少女の右頬に擦り傷のような物があって、シャイカは少女の顔へ右手を伸ばす。
「やっ!」
「!」
少女は慌てるように、シャイカの右手を両手で払い除けた。この時、少女のフードが頭から外れて髪が露となる。
彼女の髪は暗めの青色でツインテール、しかしそれより2人は頭部のある部分を見て、目を見開いていた。
「え……そ、それって……!」
シャイカよりもガットの方が衝撃を受けるのは、無理もない。
少女の頭にはガットと同じ、猫耳が生えていたのだから。
次回は少女と共にガット達に危機が迫ります。




