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19話 海賊との遭遇

「海賊船って……不味いんじゃないですか!?何か物凄く大きな船で、凄い数の海賊団っぽいですよ!」


 賊については孤児院でガットは学んできた。外の世界には魔物以外にもこういう危険な人間がいて、注意しなければならないと。


「うん、だからチャンスだね」


「え?」


 ガットが慌てるのに対して、ティアモは微塵も動じていない。シャイカやサラも同じだ。海賊船が迫り、状況としてはかなり不味いと思われるが、彼女達はそう考えてはいなかった。


「相手が賊なら、遠慮なく連中を叩き潰す。そんで船を強奪してめでたく無人島から脱出って訳だ」


「あまり感心はしないやり方ですが、緊急ですからね。海賊が相手ですし神もお許しになると思います」


 船の強奪を考えているのはティアモだけではない。シャイカやサラも同じ考えで、海賊船を見据えていた。強奪を決めれば、勇者一行は身を隠して海賊達の上陸を待つ。



「じゃあ俺が先陣切って奴らの前に出て、引きつけておくわ」


「了解。それで行こうか、シャイカはガット君をしっかり守ってねー」


「鉄壁の守りで何者も通しませんからご安心を」


 海賊との戦いに備え、事前に打ち合わせをする。最初に戦士のサラが海賊の前に出向き、注目を集めさせた所にティアモが隙を突いて奇襲を仕掛ける。そこから2人が海賊相手に暴れ、ティアモはガットが巻き込まれないよう、一緒に後方で控えておく。


 以上の作戦で決まれば、勇者一行は海賊達が上陸して来るのをじっくりと待つのみだ。相手は凶悪な賊、なので容赦無く叩き潰して船を強奪出来る。


「そろそろ来るぞ、音立てるなよ……!」


 サラは大きな海賊船が無人島に着くのを確認すれば、皆に物音などを立てないようにと、振り返らないまま注意。



 海賊船が無人島へ到着すれば、船から大勢の男達が降りて来た。いずれも筋骨隆々、大柄で屈強な男達で人相が悪い。剣や弓に斧などを持っていて、戦慣れしてそうな感じだ。


「おいおい、こんな島あったのかよ。こりゃ新たなアジトに向いてんじゃねぇか?」


「こいつは良い島ですぜお頭」


 スキンヘッドで右目に黒い眼帯をした男が辺りを見回し、手下らしき者から良い島だと言われれば、彼はそれに頷く。


「おおっし!じゃあこの島を今日から俺らのアジトにするか!」


「「 うおおーーー!!」」


 頭の言葉と共に、手下達は野太い声を上げていた。



「よ、景気良さそうじゃんか兄さん達よぉ」


 そこへサラが作戦通り、海賊達の前に出て来ると皆が女戦士へ一斉に視線を向ける。


 ティアモは何時でも飛びかかれるように、身構えておく。ガットはシャイカと後方に居て、緊張した面持ちで見守っていた。


 サラと海賊達の視線が合った時。



「……!?その姿、まさかサラ姐さんですかい!?」


 海賊の頭が驚いた顔でサラの名前を呼ぶと、他の手下も似たような表情でサラを見ていた。


「あん?……おお!その暑苦しい面はベンダじゃねーか!なんだ、まだ海賊やってんのかよ?」


 何で自分を知ってるんだと、不審な目を向けていたサラだが海賊の頭をよく見れば、それが誰なのか思い出した様子。軽くサラがベンダという名の頭に近づくと、軽く腹に右拳を当てる。


「ぐっ!や、やっぱり姐さんだ!この荒っぽい挨拶は間違いねぇ……!」


 サラは軽く腹に拳を当てたつもりだが、重めのボディブローとなってベンダには効いていた。しかし食らったにも関わらず、何処か嬉しげだ。


「おい、皆!心配すんな!こいつら違ぇぞー!」


「え……!?」


 女戦士が海賊と親しげかと思えば、突然ボディブローを喰らわしたりと、色々分からない状況でガットは困惑していた。そこにサラが安心だと呼びかければ、皆が姿を見せて海賊達の前に現れる。



「えー、改めて……俺はベンダ海賊団の船長ベンダだ!」


 ガット達の前でベンダが改めて挨拶。それに続いて手下達も挨拶していた。


「実はこいつらな、元々は船を襲ったりして金品強奪していたワルだったけどよ。ある日襲撃かけてきた船に俺が乗ってて、そんで全員ブッ倒して懲らしめたって訳」


「いや、あの時は姐さんの強さも知らず無鉄砲な馬鹿野郎でした!鬼神の強さを誇る姐さんに俺ら惚れて、今はあくどい事してる野郎のみから強奪する、正義の海賊団に生まれ変わったんでさぁ!」


「結局やってる事は海賊ですね」


 サラからベンダ率いる海賊団を紹介され、過去にサラが海賊団を倒した事で縁が出来たらしい。昔は悪かったが今は正義の海賊と言うベンダに、シャイカは結局変わらないときっぱり言い切った。


「しかし風の噂で聞いた勇者一行ってのが、まさか姐さんも居たとは!やっぱり只者じゃなかったっすね!」


「お世辞とかいいからさ、俺らは妙な船に遭遇しちまってそこから色々あって無人島に来ちまって困ってたんだ。近くの町までで良いから乗せてくんねぇ?」


「勿論でさぁ!野郎共、姐さんと仲間の皆さんを送り届けるぞ!」


「「おう!!」」


 サラが船で町まで送ってくれと頼むと、ベンダ達は快く引き受けてくれた。これでそのまま強奪を実行していたら、勇者一行が悪者になっていた所だ。


「(人は見かけによらないなぁ……)」


 見た目がゴツく、怖そうな印象は強かったが話してれば良い人達だと、ガットはサラ達と話す海賊達を見ていた。



「しかし近くの町までって姐さん方は何処を目指してるんで?」


「ああ、実はリーゾ王国への調査に行くんだよ。魔物が出入りしてるって話があったらしくてさ」


 出発の準備を進めていた時。手下の1人が興味本位で、ティアモに何処を目指しているのか尋ねる。ひょっとしたら彼らは何か知ってるかもしれないと、そんな希望も抱いて女勇者は事情を打ち明けていた。


「リーゾ王国って……」


「ああ、あそこだよな……」


 それを聞いた時、周囲の手下達がざわつく。


「うん?ベンダ、リーゾ王国について何か知ってるのか?」


「いや、実際見た事は俺も無くて噂ぐらいなんスけどね」


 彼らが知った情報がありそうと、サラはベンダの方を向いて話を聞く。



「あの王国、魔物を奴隷にしてるらしいんですよ」


「奴隷……?」


 魔物を奴隷にしていると聞いて、ガットが反応。自らの正体を隠したまま、彼の話に集中する。

次回はガットが苦悩する回となります。

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