17話 辿り着いた場所は
「うーん……」
全身が暖かく、全てから解放されたような気分で心地良い。何か優しく包まれていて、ずっとこのままでいたいと思う程だ。
「んっ……」
右手にムニュッと柔らかく暖かい感触が伝わったり、ガットはなんだろうと目を少し開け始めた。
「!?」
今の状態にガットが気づく。自分が添い寝の格好で、サラに抱き締められていて、右手に触れていたのが彼女の大きく実った果実だという事に。
「ん〜?気がついたかガット?」
彼女は何も身に着けてなく、健康的な肌を惜しげもなく見せた状態だ。
「〜〜〜!?」
状況を理解したガットは、一気に心臓がバクバクと高鳴ってしまう。抜け出そうとしても、サラがしっかり抱き締めて離さない。ガットの顔は豊かな胸に深く埋まっていた。
此処は何処かの島の海岸で、ガットとサラは敷かれた布の上で寝転んでいる状態だ。
「お前が気を失って大変だったんだからなー?ティアモが水の精霊の力を借りて、俺達を水の泡みたいなので包んだりして、それで溺れずに済んで近くの島になんとか辿り着いたって訳だ」
ガットはどうやら海に落下して気絶したようで、意識を手放した彼をティアモが救出して、此処まで運び出したらしい。
「んで、服がびしょ濡れのままじゃ冷えて風邪を引くから脱がして、俺がこうして温めてるって訳だ。直接肌と肌で触れた方が温かいし結構頭良いだろ?」
へへ、と得意気に笑うサラだが今のガットに、だから自分の体がスースーしてたのか、と考える余裕など無い。
「まあ、でもこのままさ……行く所まで行くのもアリ、だよなぁ?」
「あ……」
ガットの顔を上に向かせると、妖艶なサラの顔が見えた。そして彼女の顔が迫り、キスしそうな距離まで互いの唇が近づく。
「暴走しないでください船酔い戦士!」
「うお!?」
そこに2人の額を手で持って、引き剥がすシャイカがいた。
「なんだよ、もう帰って来たのか……」
良い所まで行ったのに、とブツブツ言いながらサラはガットを解放して、服を着始める。
「全く人がこの辺りを捜索している間、貴女は羨ま……いけない事を本当にもう」
「羨ましいってハッキリ言っていいだろそこは」
シャイカの口から自分がそれをやりたかったという、本音が漏れながらも木の実を並べていた。どうやら食べ物を調達して来たらしい。
「何処ですか此処は……?」
改めてガットが周囲を見てみると、前方は広大な海。後方は密林となっていて、彼らが今居るのはそれを挟んだ海岸だ。ガットにとって知らない場所なのは、間違いなかった。
「交代で島を探索したのですが、人の家や人の気配もありませんでした。どうやら無人島みたいですよ此処」
「無人島!?」
シャイカの言っている事が、人の居ない島だとすぐ理解してしまう。
「ぐるっと回ったりしたけど海に囲まれて他の陸地に繋がってなかったよな」
「ええ、近くの島とかも見えませんでしたし。本当に辺りは海でしたね」
無人島で周囲は海に囲まれ、閉じ込められているも同然。にも関わらず、シャイカもサラも取り乱す様子は無い。ガットも2人を見習ってなんとか落ち着こうと、軽く深呼吸する。
「とりあえずガット。その格好のままで寒くないか?」
「あ……!」
「ちよっと、もう少しガット君の美しく華奢な体を堪能しようと思いましたのに……!」
サラに指摘され、今の自分が全身何も着てなくて猫耳も晒してると気づき、顔を真っ赤にさせると自分の服を探す。シャイカの方はあえて何も言わず、そのまま見続けるつもりだったようだ。
「いやー、結構とれたよー」
ティアモは魚をとって来たようで、両手にピチピチ跳ねる活きが良い魚を持って戻る。
「おお〜!こいつは大漁だ!」
「ちょ、こら!暴れないで……!」
多くの魚を見てサラは嬉しそうで、シャイカの方は暴れる魚に悪戦苦闘。
「ティアモさん。魚釣りしてたんですか?」
「いんや?海に潜って捕まえた」
「え!?」
魚釣り出来そうな道具が無いのに、どうやって釣ったんだとガットは思ったが、ティアモの海に潜った、というのを聞いて驚いてしまう。
「あ、そのまま潜った訳じゃないよ?水の精霊ウンディーネの力を借りたんだ。出て来てー」
ティアモの呼び掛けに、彼女の頭上に上半身は美少女、下は魚の尾となっていて人魚を思わせる姿だ。
「彼女がウンディーネ……」
シルフに続いてウンディーネも美少女。可愛いと思い、ガットがその姿を見てると、ウンディーネの方もガットに対して微笑んでいた。
「あの幽霊船が消えて海に落下した時も力を借りてね。気絶したガット君を抱えて、此処まで辿り着いたって訳」
「それは……ごめんなさい!」
突然船が消えて海へと落下するショックからか、情けない事に気絶してしまう。それをガットは申し訳なく思い、ティアモに頭を下げて謝った。
「いやいやいや、普通ならあんなん怖くてあり得ないだろうから無理もないでしょ。こっちもまぁ、交代で美味しい思いはさせてもらったっていうか〜」
「え?」
「こっちの話だから気にしないー♪」
ティアモの言ってる意味が分からなくて、ガットは首を傾げたが女勇者は笑って誤魔化す。
火はティアモがサラマンダーの力を使って、集めた枝に火を灯す。
「おーし、魚焼くぞー!」
「それ焼き過ぎてません!?貴重な食料無駄にするのは罰が当たりますからね!」
張り切って木の棒に刺して魚を焼くサラに、焦げそうな魚を見てシャイカが手遅れになる前に取る。
「リンゴとか焼くと美味しそうだからやろっか」
「果物を焼く……僕初めてかもしれないです食べるの」
「おー、それは是非食べないとね♪」
焼いた果物を食べた事が無いガットの為に、ティアモがリンゴを上手に焼いていく。
宿屋での食事とはまた違って、自然の中で自分達が集めて作る魚や果物はかなり美味しく、無人島にいる今の状況を忘れそうになるぐらいだった。
次回も無人島生活が続き、最後の方で何か起こります。




