16話 VSリビングアーマー&巨大スケルトン
「ーーーー!!」
巨大スケルトンは複数のスケルトンが融合し、一つとなって体が大きくなっただけではない。右手に持つ剣まで、今の体に合う大きさだ。
大剣を軽々と振り下ろした瞬間、ティアモは右へ飛んで避ける。さっきまで女勇者の居たデッキの床は、大剣によって一部が無惨に破壊されていく。
「めっちゃパワー上がってんじゃん!そんな強くしたのあの鎧はー!?」
先程とは段違い過ぎるパワーを持つ巨大スケルトンに、ティアモはリビングアーマーの方を見ながら、文句にも似た言葉が飛び出していた。
「(これかなりティアモさん不味い!?どうしよう!?)」
リビングアーマーに巨大スケルトン。2体の不死の魔物に取り囲まれ、ガットはかなり慌てている。しかし非力な彼では助けに入っても何の力にもならないどころか、ティアモの足を引っ張るだけだ。
何も出来ない己の無力さを感じながらも、目の前で戦う女勇者を見ている事しか出来なかった。
「うぉっとぉ!?」
ティアモ目掛けて巨大スケルトンが、巨体に似合わぬ素早さで詰め寄ると剣が振り下ろされ、ティアモが後ろに飛び退いた時には再び床に穴が空いて破壊される。
「っ!」
そこにリビングアーマーの赤い剣まで襲いかかり、横薙ぎの剣をティアモは自身の剣を盾として防ぎ、斬撃を避け続けた。
「(ホントきりがないっての!)」
剣で防いだまま、ティアモの右足による飛び蹴りでリビングアーマーの胴体を蹴れば、後方へ空中でクルッと一回転しながら距離を取って着地。
だがティアモの着地した場所には、背後に巨大スケルトンがいた。
「ティアモさん!!」
勇者の危機にガットが叫ぶも、巨大スケルトンは剣を振り上げている。
あれが振り下ろされて当たったら、見たくない光景を見てしまう。それは絶対に嫌だ。
「(止まってくれぇ!!)」
ガットが強く心で願った時だった。
スパッ
巨大スケルトンの剣を持つ手が、いきなり切断されて床に落ちていく。
「わっ!?」
ティアモのすぐ横に剣が落ちて来て、それに気付いたティアモは巨大スケルトンから距離を取る。
「た、助かった……?」
ティアモの無事を確認すると、ガットは一安心。同時に何が起こったのか分からなかった。
後ろを向いていたティアモが、腕を斬ったようには見えない。だが巨大スケルトンの手は切断されていたのだ。
「ーーーー!」
ただ危機が完全に去った訳ではない。切断されて落下した巨大スケルトンの腕が動き出し、本体の腕にくっついて元通りとなる。
「!」
そこにリビングアーマーがティアモへ飛びかかり、赤い剣を勢いよく振り下ろす。
「どらぁぁーー!!」
赤い剣が勇者を襲う前に、リビングアーマーはサラの勢いをつけた飛び蹴りで、思いっきりふっ飛ばされて、壁に叩きつけられていた。
「生きてっかぁ!?ガットにティアモ!」
外の空気を吸えて、なんとか復活したサラが2人に向かって得意気に笑う。
「な、なんとか……地獄の骨軍団は潜り抜けましたね……」
ターンアンデッドをかなり連発していたシャイカ。精神的な疲労が大きく、青い杖を両手で体を支えるように持つ。
「シャイカさん!サラさん!無事だったんですね!」
やっと2人の姿を見れて、ガットの表情がパァッと明るくなっていた。
「おう!スケルトンがすげーウザかったけどシャイカ様々だ!」
「この戦士が船酔いで使い物になりませんでしたから、もう大変でした……!」
「船酔いじゃなきゃあんなの蹴散らしたっての!」
シャイカの文句から、サラと言い合いに突入しそうになっていく。
「2人ともー!喧嘩は後でたっぷりやっていいから、今はこの化け物達をなんとかしよー!」
巨大スケルトンの斬撃を軽やかに躱しつつ、ティアモは2人に向かって共に倒そうと伝える。
「またでけースケルトンが居るな!シャイカ、ターンアンデッドだ!」
「む……無茶言わないでください、連発し過ぎて魔法力がもう残ってません……!」
「え、マジで!?やべぇだろそれは!」
スケルトンキラーであるシャイカなら行けるとサラは思っていたが、彼女はもう魔法を唱える力が残っていない。この世界では魔法力という物があり、魔法を使う者が兼ね備えている。
つまりそれが空っぽという事は、魔法を使う事が出来ない。シャイカのターンアンデッドが使えないという、危機的状況に追い込まれてしまったのだ。
「魔法力……あ!」
その時、思い出したようにガットは自分の道具袋を開けて、ごそごそと中身を右手で漁り始める。すると道具袋から右手が抜けた時、ある物を握り締めていた。
「シャイカさん、これ使ってください!」
ガットがシャイカに向かって走り、至近距離まで来ると液体の入った緑色の小瓶を取り出す。
「ガット君これは?」
「魔法力を回復させるアイテム、マジックポーションです!」
「え!?それ結構珍しいじゃないですか!?」
ガットの手に持つ小瓶がどんなに価値のある物なのか、魔法を扱う者としてシャイカは理解している。だからこその驚きだった。
「とにかく急いで飲んでください!」
「あ、はい!じゃあグイッといただきますね!」
シャイカはガットから小瓶を受け取ると、止めてあった栓を開けて中身の液体を一気にグイッと飲み干す。
「あ……ああ……!体が熱い!漲る、滾って来る……♡♡」
マジックポーションを飲み干せば、シャイカの体内に魔法力が再び満たされていくのが伝わってきた。
「俺はよく知らねーけど、あのアイテムって人をあんな感じにする効果っつーか副作用でもあんのか?」
「……いえ、僕も飲んだ事無いですからそこは分かんないです……」
ガット、サラの前ではシャイカが色っぽく声を出す姿が見られ、ガットにとってかなり刺激的で彼の顔が、みるみる赤く染まる。
「はぁっ……!回復しました♡」
息遣いが荒くなりながらも、シャイカの魔法力は万全となり、色気ある雰囲気を漂わせたまま、巨大スケルトンと向かい合う。
「シャイカ!任せたよー!」
リビングアーマーを素早い動きで翻弄しながらも、ティアモは聖女に大きな相手を任せる。彼女なら絶対大丈夫、という確信があっての事だ。
「ーーーー!!」
ターゲットをシャイカへと代えて、巨大スケルトンが彼女に剣を振り上げる。
「迷える魂よ、神の元へ召されたまえ!ターンアンデッド!」
青い杖を両手に持って床を叩けば、眩いばかりの光が発せられて巨大スケルトンは聖なる光をまともに浴びる。
「ーーーー!!」
声にならぬ叫びと共に、巨大な骨が浄化して消えていき、光が収まった頃には跡形も無く消え去る。
「やった!あ!?」
ガットが両拳を握りしめて喜ぶと、リビングアーマーの剣がティアモを襲う姿が目に映った。
「おめーもいい加減くたばれぇ!!」
ガギィィンッ ゴトッ
それより前にサラの大剣が、赤い剣を真っ二つに叩き割る。
「っ!〜〜〜〜!!」
リビングアーマーが丸腰になると、突然悶え苦しみ始めていた。やがて赤い剣が消滅していけば、それに合わせるかのようにリビングアーマーも消滅する。
「鎧じゃなくて剣の方が本体だったんだぁ……ダメージが全然無いのはそういう事か。いや、これは勉強不足だー」
気付かなかったと、ティアモは剣を鞘に収めれば自分の勉強不足を、軽く自らの額を右手でペチッと叩いて反省。
「ふ〜、サラが船酔いなどにならなければもっと楽に片付きましたのに」
「はぁ?俺のせいかよ、罠にはめやがった野郎が悪いだろこれは!」
「まーまー、とにかく2人とも来てくれて助かったし。ありがとう♪」
サラとシャイカの喧嘩が起こりながらも、終わり良ければ良しと、ティアモが間に入って止める。
「でも、1番助かったのはガット君がマジックポーションを持っていたおかげですね」
「確かすっごいレアなアイテムだよね?あれ道具屋にあったの?」
1番の立役者はガットだと語るシャイカに、ティアモと共にガットへ目を向けた。
「あ、ええと……まあ……お金と引き換えに勝手に持って来ちゃいました」
「おいおい悪い奴だなガットよぉ!」
「いや!だからちゃんと払いましたからー!」
それを聞いたサラが楽しげに笑って、ガットの肩を組んで寄せる。
「(しかし、何かさっき……強い魔法力みたいなのを感じた気がしたんだけどなぁ。気の所為……?)」
仲間の姿を見ながらティアモは先程、戦闘中にあった出来事を思い出す。巨大スケルトンの剣が落ちて来た辺り、その時に感じ取ったのだ。
しかし今考えても明確な答えは出ない。ひとまず今は置いておき、目の前の問題と向き合う。
「さて、後はこの幽霊船をどうするか……」
ティアモが残る問題について語ろうとした時だった。
「え?」
突然ガットは下に落ちて行くような感覚に襲われる。一体何が起きたのか分からないまま、下を見ると先程まで乗っていた船が消えてしまう。
足の踏み場を失った一行は下に落ちていたのだ。
「わぁぁぁーーー!!」
ガットは絶叫と共に海へと落下していく……。
海に落ちていったガット達の運命は?次回に続きます。




