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13話 南の大陸へ

「昨日城に足を運んでもらったばかりで、わざわざ呼び戻してすまない」


 オルスタ城にある王の間にて、勇者一行は再びオルスタ王達の前に姿を見せていた。


「いえ、これからどうするか仲間で話そうとしていた所でしたから、これといった不都合は全くありません」


 跪いた状態でティアモは王に対して、柔らかな笑みを浮かべる。


「うむ……手が空いているのならば話は早い。そなたらにはリーゾ王国に向かってほしいのだ」


「リーゾ王国に?」


 此処より南の大陸にある大国。そこに何があるんだろうと、ガットの頭の中は?マークで埋まっていく。


「実は魔物について、調べを進めている我が王国の密偵から連絡が入ってな。魔物がリーゾ王国に出入りしているらしい」


「魔物が出入り……ですか?」


 王の話を聞けば勇者一行の頭の中には、おぞましい魔物が王国に出入りしている光景が浮かんでいた。



「聞けばその魔物は見た目は人間だが、猫耳のような物を生やしていたそうだ」


「!?」


 ガットはそれを聞いて目が見開かれ、跪いて俯かせていた顔が思わず上がって王の方を見る。


「……それはつまり、人と猫の血を引くキャットヒューマンと呼ばれる種族でしょうか?」


「うむ、密偵は猫耳だけでなく尻尾が生えていているのも見てそう断定した」


 秘密を抱える彼と違い、ティアモは動じる事なく冷静に会話を続けていた。ガット以外のキャットヒューマンが、リーゾ王国に出入りしているかもしれないという話。


 彼の同族が居るという事は、ガットについて何か知っている可能性がある。ティアモだけでなく、サラやシャイカも揃って同じ事を思った。


 そしてガット自身も自らと同じ耳を持つ人物に、会ってみたいという気持ちが強くなってくる。


「我々が詳しく調べに行きたい所だが、王国の兵が調査に行っては、オルスタ王国とリーゾ王国の今後の交流に影響する恐れがある」


「そこで勇者達の出番、という訳だ。我々も王国を守り、領内の魔物討伐と色々忙しい身で自由には動けない」


 オルスタ王の言葉を引き継ぐように、レノムが発言。つまり自分達で他国を調べるのは何かと都合が良くないので、正規の兵ではない勇者一行に、調査へ向かってもらう狙いだった。


「魔物の出入り……ひょっとしたら何か良からぬ事が起こる前兆かもしれませんからね。分かりました、直ちにリーゾ王国へ向かいます」


「おお、やってくれるか勇者よ!」


 何かあるかもしれないと、ティアモは王からの頼みを引き受けてオルスタ王の方は深刻そうな表情から一転、分かりやすく明るい顔が出ていた。





「ケッ、自分達のやりたくねぇ仕事をこっちに押し付けただけだろうがよ。格好つけた言い回しで誤魔化されるかっての」


 城を出た後、女戦士が彼らへの愚痴を溢していた。


 サラは彼らが自分達を、都合の良い兵隊程度にしか思っていないだろうと思っている。彼女としてはあまり気分良く受けられる仕事ではない。


「まあ調査費とかお金は出ましたけどね。本当に酷い扱いならそれも支払われないと思いますよ」


 リーゾ王国に向かう為の旅費を王国から頂き、シャイカは預かった袋をしっかり持っていた。彼女からすれば、ちゃんと報酬を出してくれるから、そこは良心的と考える。



「……」


 ガットの方は先程のオルスタ王の話を、思い返し続ける。


「気になるかい?君のお仲間かもしれない者が、その王国に出入りしてるという話」


「……はい」


 彼の心を見透かすように、ティアモが問い掛けるとガットは小さく頷く。


 周囲の人間と違って自分だけ違う耳が生えている不安。それと同じ事を同じキャットヒューマンが抱えてるとしたら、直接会って話したい気持ちが強く芽生えた。


「確かティアモからの話を聞いた所によると、ガット君は孤児院以前の記憶が無いとの事でしたね。キャットヒューマンとは数少ない種類の魔物と言われてますから……その魔物はガット君を知っていて、抜け落ちた記憶も知っているかもしれません」


 数少ない同族に会ってみる価値はあると、シャイカはリーゾ王国行きに賛成している。


「あー、まぁ奴らの言いなりみたいになっちまうのは癪だけど……皆行くなら俺が行かないって事は無ぇ。魔物が何か企んでるならブッ潰してやるし」


 あまり前向きではないが、サラも最終的には共に行く事を決めていた。


「それじゃあ目的地も決まった事だし、リーゾ王国に急ごっか」


 ティアモを先頭に、勇者一行はリーゾ王国を目指す為に王国を出て旅立つ。



「リーゾ王国ってどう行くんですかー!?」


「このまま南の方向に進めば港町が見えてくるから!そこで船に乗ってシュッド大陸を目指して更に南下ね!」


 ティアモが手綱を握る馬にガットは乗せてもらい、進む途中で風を受けながらも2人は会話をする。その後ろにはサラとシャイカを乗せた馬が疾走。


「リーゾ王国は確か食べ物が美味いと評判だ!着いたら美味い肉にありつけると良いなー!」


「また肉ですかー!」


 着いた時は美味い飯を食う事を考えているサラに、シャイカはツッコミながらも振り落とされないよう、しっかりサラへしがみついていた。



 港町に着くまでそう時間はかからず、2頭の馬のおかげで意外と早く辿り着く。吹いてくる風が潮風となって、彼らを港町が出迎える。


「(港町なんて本でしか読んだ事無い……こうなってるんだ)」


 本を通してその存在を知っていたガットの目の前に、人々の活気溢れる姿があって、港町での生活を送っている。その先には広大な海が果てしなく広がるのが見えた。


 一行は南の大陸へ行く為に真っ直ぐ、船が停泊する港を目指す。



「さて、南行きの船は確かー……」


 ティアモが南の大陸に出航する船を探していると、彼女に近づく影が見えた。


「勇者一行様!船を探してるなら、あっちの船はどうですかい!?」


「え?」


「私達を存じているんですか?」


 急に小太りな船乗りの男が、奥の方にある船を指差して勇者一行に勧める。ティアモは突然の事に驚くような顔を見せ、シャイカが男に自分達を知ってるのかと問う。


「勿論ですよ!俺は勇者様達のファンですからね、活動を何時も応援してますから!」


 ガットは知っている。オルスタの町で、ティアモ達が絶大な人気を誇っている事を。それを見てきたから、こういった港町にも自分みたいに、憧れたりするファンが居るんだろうなと思ってやり取りを見ていた。


「あっちの船なら銅貨2枚で行けるみたいですし、お得ですよ!」


「銅貨2枚?そりゃ随分格安じゃねーか」


 船に乗る時の代金は基本的に、銀貨1枚ぐらいはかかるものだが船乗りの推す船は破格の安さだ。安いに越したことはないと、サラは行こうと先陣を切って進む。


「行ってみるよ、教えてくれてありがとう」


 ティアモは船乗りに笑顔で礼を言うと、サラに続いて歩き出す。ガットとシャイカも揃って頭を下げれば、2人も船へ向かう。




「フフ……上手く行ったわね」


 緑髪が見える黒いフードをかぶった女性。彼女は右手の指をパチンと鳴らすと、先程まで勇者一行と話していた船乗りが、ハッと気付く。


「あれ?俺酒場居たよなぁ……飲み過ぎて酔っ払っちまったのか?」


 この時間帯は休みで酒場にて1杯飲んでいたはずだが、船乗りはどうなってるんだと、辺りを見回している。



 分かるはずも無い。彼はチャームの魔法で魅了され、意識を乗っ取られていたのだから


「(地獄の航海をお楽しみに、勇者御一行様♡)」


 怪し気な微笑みを浮かべれば、視線の先には勇者達が乗り込んだ船が出航の時を迎えて、大海原へ旅立つ。


 それが緑髪の美女シャーリーによる罠だという事を、この時誰も気付いていなかった……。

次回は海上にて戦いとなります。

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