12話 女勇者の誘惑!?
「はぁ〜、お腹いっぱい……」
あれからシャイカとサラの2人に沢山食べさせてもらって、満腹を迎えたガットは1人で風呂に来ている。周囲から湯気が立ち上がり、辺りは白い空間が出来上がっていた。
1人で入るには充分過ぎるぐらい、余裕のある大浴場にてガットは肩まで湯に浸かり、心地良い温かさに包まれる。彼の至福のひと時だ。
「お城行った時は騎士団長の人にバレるかと思ったけど、でもなんとか誤魔化せて良かったぁ……」
今はガットだけの入浴なので、遠慮なく頭の猫耳を解放させられる。この耳をオルスタ城でレノム達に見られていたら、色々終わっていたかもしれない。
自分を試すような事をしたり、終始疑うような目を向けられてガットはレノムに対して苦手だと思った。次に報告に行く時は、宿屋で留守番しようかと考えた程だ。
「そうそう、ガット君の猫耳バレちゃったら危なかったかもしれないよねぇ」
「本当あれは僕もドキドキしましたよ」
「へぇー、そんなにドキドキしたんだぁ?」
「だってあんな偉い人から疑われたら……」
何時の間にか人と会話をしていて、ガットは不自然な事に気付く。
自分以外誰も入浴していない。だが会話していて、聞き覚えある声が湯けむり越しから聞こえた。それに気付いてガットが声のする方向へ向くと、金髪の美女が同じ湯に浸かっているのが見える。
「!!て、て、て、ティアモさん!?何でお風呂入ってるんですか!?」
「何でって汗かいてお風呂入るのは普通じゃないのー?」
今のティアモは長い金髪をアップに纏め、タオルで包んでいる。普段の彼女とは違う魅力溢れる姿で、湯の熱さとは違う理由でガットの顔が一気に赤く、熱くなってしまう。
「そういう事じゃなくて……僕とどうしてお風呂入ってるのかですよ!?ほら、あの……男と女が一緒に入るのは不味いでしょ!?」
「え、どう不味いの?」
するとティアモはガットに近づき、距離を詰めて来た。風呂なので互いに何も纏っておらず、女勇者の魅惑の肢体がよりよく見えてくる。
「僕が入りたいから入ってるだけで、どう不味いのかお姉さん分かんないなぁ〜。ガット君教えてくれない?」
「あ……いや……あの……(ゆ、揺れて……!あれっておっぱ……!?)」
悪戯っぽく微笑み、迫りくる金髪の美女を前にガットは口をパクパクさせるだけで、言葉が出て来ない。何よりも、タプタプと揺れ動く物が、どうしても目に入ってしまう。
「ガット君ってちっちゃくて華奢だよねぇ。肌が白くて腰も細くて羨ましいぐらい、女の子って思っちゃうなぁ」
既にガットとティアモの距離は目と鼻の先。彼女からも今のガットの姿がよく見えており、可愛らしい猫耳が頭から出ていて、見た目は少女のように思える。
「にゃうっ!?」
女勇者の左手が彼の頭部の猫耳を撫でると、驚きとくすぐったさからか、ガットの口から思わず高い声が出てしまう。
「あはは、ガット君。それは……反則だよ」
ガットの女の子のような声に、ティアモはもう止まらなくなっていた。
「さっきドキドキしたって言ったけどぉ、もっと忘れられないぐらいにドキドキさせたげよっか?」
そう言いながらティアモの右手は、ガットの左頬に優しく触れた。彼の心臓の鼓動は高鳴るばかりだ。
女勇者の美しい顔が迫り、今にも2人の唇が繋がりそうな所まで来た。
「「ティアモーーー!!」」
そこに2人の美女による、怒号のような声が大浴場に轟く。
「ありゃ、気付かれちゃった?」
焦る事もなくティアモはガットを抱き寄せ、ガットの方は乱入してきたシャイカとサラの、今の姿を思いっきり見てしまう。
シャイカの方は白い肌をしていて、目の前に居るティアモにも言えるが聖女もかなりの胸の大きさを誇る。
サラの方は健康的な日に焼けた肌で、ティアモやシャイカを凌ぐ程の豊かな胸だと、主張するように揺れ動く。
「ティアモの姿が何処にも無くてガット君もいなかったので、ひょっとしたらと思いましたが……ビンゴでした!」
「抜け駆けたぁ、勇者のする事じゃねぇよなぁ?」
共に肢体をガットの前で隠す事もなく、見せたまま彼女達は湯船へと向かう。
「わわ……!(ふ、2人ともおっきぃ!?)」
近づいてくれば、2人の女としての魅力溢れる姿がより見えてきた。
これを見てガットが今の自分の状態を忘れ、後ろに引こうとしたら彼の後頭部に、柔らかな感触がムニュッと伝わる。
「ガット君……大胆だね♪」
「!!」
後ろに下がった事で、ガットは自分から後ろ向きのままティアモの胸に埋まる形となっていた。
「あ……」
彼は3人の美女に囲まれたまま、意識を手放す。
「うーん、段階すっ飛ばし過ぎたかなぁ?」
「流石に一緒にお風呂は飛ばしましたね。ガット君には刺激が強過ぎたので、もっと親密になって慣れてから行うべきだったんでしょう」
ガットは風呂でのぼせ、サラによって運ばれればベッドで休ませて、そのまま朝まで眠っている。
ティアモとシャイカは朝を迎えて先に起床。昨夜について互いに反省していた。ガットに迫る事は、全く諦めていないが。
「で……私としてはこの女戦士を一刻も早く叩き起こしたいのですが」
イラッとした表情を浮かべるシャイカの目には、ガットを添い寝する形で、気持ち良さそうに爆睡しているサラの姿が映った。
「せめてガット君が起きるまで待とう。彼の睡眠を妨げるから」
叩き起こすならガットが朝の目覚めを迎えるまで待つ。ティアモにそう止められるが、結局2人が同時に起きた事でそれは叶わず終わる。
「皆さんご迷惑かけました!」
突然倒れた事にガットは自分が悪いと思い、彼女達に頭を下げて謝罪。
「いや、僕も色々進め過ぎたから」
ティアモの方もごめんと申し訳無さそうに謝り、ガットと今よりもっと仲良くなってからにしようと、密かに計画を立てる。
「そうです。やはりまずはしっかり段階を踏んで慣れるのが大事、という訳でガット君は今度私と2人で買い物にでも行きましょうか」
2人で、と強調するようにシャイカは、ガットに優しく微笑みかけながらも、2人きりのデートを狙う。
「ま、とりあえず難しい事考えず仲良く過ごそうや」
サラは笑ってガットの肩を軽く叩く。今日はガットに添い寝が出来たのでご機嫌な様子だ。
身支度を整えてから宿屋の外に出て、今日の予定について一向が話し合おうとしたら、一行の前に意外な人物が現れる。
「朝から失礼する、勇者達よ」
「!」
そこに現れたのは銀髪の青年、ガットはその姿を見て反射的にティアモの後ろへ隠れる。オルスタ王国の騎士団長レノムにはあまり顔を合わせ辛い、という思いが出ていた。
「どうしたんだい?王国の偉い騎士団長自らお出ましとは、デートの誘いは受けねーぞ」
「何を寝ぼけた事を、そういった用件でわざわざ来る訳がなかろう」
3人の中で1番長身のサラが前に進み出て、自分と背丈が変わらないレノムを真っ直ぐ見る。それにレノムはフン、と鼻で笑った後にサラから視線を外せば、ティアモの方に目を向けた。
「城に来い勇者よ。我らの王がお呼びだ」
それは城から勇者への呼び出し。報酬を昨日貰ったばかりだが、勇者一行は再びオルスタ城に向かう事となる。
次回は城にて、王から勇者一行に頼み事をします。




