11話 美女達は積極的
「報酬たんまり貰ったね〜♪まさかオークキングあそこまでのお金になるとは思わなかったよー」
この世界で最も価値のある金貨。それが多く入った袋を手に持って、ティアモはホクホク顔だった。
「それじゃ宿戻って飯にするかぁ!腹減っちまって我慢の限界来てるし!」
城に行く前から空腹を我慢していたサラ。もうその欲には抗えず、体が食事を欲している。
「そういえば皆さんって酒場は行かないんですか?」
酒場でも食事は出来て、皆が当たり前のように通う。そこは利用しないのかとガットが勇者一行に尋ねる。
「私達は名前が知れ渡っていますので、多くの方が集まる場所に行けばパニックになりかねません」
シャイカから酒場を利用しない、理由について聞かされる。高い知名度故に、一般がよく利用する場所へ行きづらくなったという。
「それに名が知れる前も酔っ払いの野郎とか色々絡んで来て面倒だったからよ」
全部ぶっ潰してやったけどな、と武勇伝のようにサラは酒場のトラブルが以前あった事を言う。
「その点で言えば宿屋なら安心だよ。自分の部屋だったり宿泊客しか利用出来ない限られた食堂と、落ち着けるからねー」
酒場より宿での食事は多少割高となって、一般では好んで利用する者は酒場と比べれば少ない。それで落ち着けるなら安いものだと、ティアモは明るく笑っていた。
「そうだったんですか」
酒場には行かない、その事はガットにとって正直ありがたい。道具屋に居候していた時、ダラシが常に酒臭いと感じて酒の臭いが苦手となってしまう。出来る事なら酒場に行きたくはないガットには朗報だ。
「さぁさぁ、そんな訳だから飯行くぞ飯ー」
「わっ」
「ちょ!?サラ、近過ぎます!」
サラはガットの肩を抱いて自分の方に寄せる。サラと身長差がかなりあるせいか、ガットの顔にサラの豊かに揺れる物がむにゅっと触れていた。彼の顔は一気に赤く染まり、心拍数が上がっていく。これを見たシャイカは近いとなって、引き剥がそうとしている。
「おーい、早く宿行くよー(イチャイチャはその後でも遅くないから……ね?)」
それを遠くから見守るティアモ。彼女の心は獲物を狙う肉食獣となっており、ガットにしっかりと狙いを定めていた。
「くぅ〜、戦い終わった後の美味い肉は染みるぜぇ〜」
宿屋の食堂にて、サラは出来たて熱々の分厚いステーキを前に、ナイフとフォークで切り分けて豪快にかぶりつく。柔らかくジューシーで、肉の旨味がガツンと伝わって食が止まらない。
「ガット君、肉ばかりでは栄養バランスが偏りますからね。ちゃんと野菜の方もどうぞ」
「あ、ありがとうございま……」
シャイカがサラダの皿を持つ所を見て、ガットはお礼を言いながら皿を受け取ろうとした。だがシャイカの方は葉っぱをフォークに刺して、ガットに向ける。
「はい、お口開けてくださーい♡」
「え!?」
口を開けるよう迫られ、ガットは戸惑う。シャイカは完全に食べさせてあげる態勢となっていた。
「ガット君、食べ物粗末にして好き嫌いは駄目ですよー?」
「あ……あー……」
そう言われるとガットは恥ずかしそうにしながらも、素直に口を開けた。そこにシャイカはサラダを食べさせてあげる。
「うんうん、上手に食べましたねー♪神もお喜びですよ」
新鮮でシャキシャキのサラダを食べたガットに対し、シャイカは優しく頭を撫でて褒めた。
「サラダばっかじゃ腹は膨れねーぞ、ちゃんとガッツリ肉も食えほら」
「むぐっ!?」
野菜を食べた横から肉を刺したフォークが伸びてきて、ガットの口に運ばれる。サラが自分の食べていたステーキを食べさせたのだ。
「どうだ?やっぱ肉は美味いだろー」
「ふ、ふぁい……」
「もうー、折角野菜を食べさせてたのに。ガット君、こちらもどうぞ?」
「こっちもイケるぜガットー」
左右から美女に挟まれながら、ガットは食べさせてもらったり、頭を撫でられ可愛がられたりした。
一方のティアモは参加せず、仲間のやり取りを見守りながら食事を続ける。
だが彼女は彼女でしっかり狙いを定めていた。
「大体貴女は最初から肉に行き過ぎです!まずは野菜から、ベジファーストは大事ですよ!?」
「肉を後回しにしたら美味いタイミング逃して硬くなっちまうんだよ!食べづらくなっちまうし、ミートファーストだろ!?」
ガットに食べさせながらも、シャイカとサラで食についての言い合いが発生する。
「あ、あの……もうお腹いっぱいだから僕先にお風呂行ってきますね?」
野菜や肉を結構食べさせられて、満腹を迎えたガットは2人にその事を伝えてから席を立つ。その2人は言い合いで気付いていない。
だがティアモだけは気付いており、ガットの後ろ姿を見送っていた。
女勇者の目が怪しく輝いた事には誰も気付かない……。
次回もドキドキ(?)な回が続きます。




