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クリニックの名前

「先生、みちびきクリニックって名付けたのは何か理由があるのですか?」受付嬢がある日、医師に尋ねた。


「実は候補が三つあったんですよ。どうでもいい事ですけど、時代劇好きなんですよ。時代劇には今で言うハローワークみたいなのがよく出てくるのです。口入れ屋と言うんですけどね。仕事を紹介だから、曲解すれば病院を紹介って感じでいいかなと思い、『口入れ屋医院』にしようとしたのです。数少ない友人に『口入れ屋医院にしようかなー』と言ったのですけど。友人は『はー、正気?なんで江戸時代が出てくるのよ。意味わからないよ。響きも変だし、私なら絶対受診したくないね!誰にも受診して欲しくないなら、そんな名前でも良いけど、開業する以上は患者さんに欲しいんでしょ?』と言われまして、『もちろんそうだよ!』と答えたら、『じゃあ、却下だね!』と一蹴されました。」


悲しげに言う医師であったが、受付嬢は


「確かに、口入れ屋医院では私も働きたくないですね。そもそも、電話口で医院名を名乗るのも言いにくいです。みちびきクリニックの方が響きもいいし、言いやすいですし。よかったです、口入れ屋医院だった場合は、ここの仕事に応募もしなかったでしょうし。」


と告げるのであった。



一瞬愕然とする医師ではあったが、気を取り直して話を続ける。


「もう一つは、そのまんま紹介クリニックにしようかと思ったのですけど、わかりやすいじゃないですか。それもその友人がものすごく渋い顔をして、『一体何を紹介するのかと思われるし、何だか怪しいクリニックにしか聞こえないよ。ちゃんと考えたの??』と却下されました。厳しいと思いませんか?」


ちっとも思いませんと受付嬢は思ったが、あえて無言を貫いた。


「それで、考え抜いて、ちょっと烏滸がましいけれども、患者さんを行きたい方向に導いてあげるということで、『みちびきクリニック』にしようかなと友人に言ったところ、それならいいだろうとOKがでたのです。でも、自分としては口入れ屋医院が気に入っているのですけどね。自分が受診するなら行ってみたいとは思いますけど、あれだけ常識人の友人に反対されたらね・・・。流石にいざ開業しても誰も来ないのは困りますからねー」


と医師は悲しそうに言うのだった。


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