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「Attention teams, track drying process will begin in 5 minutes」
レースコントロールからのアナウンスに、ピットレーン全体が動き始めた。予報通り、雨は弱まりを見せ始めている。各チームのクルーたちが、再開に向けた準備を加速させていた。
「作戦会議をしよう」
リチャードの声が無線に入る。
「レース再開後、燃料は15周分。このタイヤではあと20周は持つ。問題は、このレースがあとどれくらい続くかだ」
キースはデータを頭の中で整理する。レッドフラッグまでに90周を消化。残り110周のレースが、どのような展開を見せるのか。NASCARの規定では、レースの半分以上(100周以上)を消化していれば、これが最終結果となる可能性もある。
「現状維持なら7位フィニッシュ」
メイが状況を分析する。
「でも、トラック上の水分量からすると、再開は確実です」
ピットレーン上空では、日が差し始めていた。チーム・コリンズ・モータースポーツのクルーたちは、マシンの周囲で緊張した面持ちで待機している。
「Track drying vehicles on the track」
場内アナウンスが響く中、ジェットドライヤーを搭載した車両がコースに入っていく。
「キース、再開後のシナリオを確認しよう」
リチャードが作戦を説明し始める。
「前の6台はみな、私たちより2周分多く燃料を積んでいる。彼らは確実に1回のピットストップが必要だ」
「了解」
キースは短く返事をする。状況は明確だった。燃費を極限まで節約できれば、ピットストップの回数で優位に立てる可能性がある。
「でも、簡単じゃないぞ」
リチャードが続ける。
「燃料を節約するために後方に下がれば、予期せぬクラッシュに巻き込まれるリスクも高まる」
再開後のレースは、まさに賭けとなる。7位という現在のポジションを守るか、それともより大きなリスクとリターンを取るか。チームは決断を迫られていた。
「Track drying proceeding as scheduled. Estimated 20 minutes until completion」
レースコントロールからの続報が入る。
キースは、マシンのコクピット内で軽く首を振る。長時間の待機で固まった筋肉をほぐしながら、彼は再び集中力を高めていく。レッドフラッグ中の休憩は、時として集中力の維持を難しくする。
「キース、ダリルと話をした」
リチャードの声が再び無線に入る。
「彼も同じ戦略を取る。チームとして、燃料戦略で勝負する」
二台のマシンが同じ戦略を取ることは、チームにとって大きな意味を持つ。互いにドラフトを利用し合えば、燃料消費を更に抑えることができる。それは、賭けの成功確率を高めることにつながる。
「残り20分」
メイが時間を告げる。
「外気温は82度(華氏)、トラック温度は上昇中です」
デイトナ上空の雲は完全に切れ始めていた。太陽が再び顔を出し、湿ったトラック面を照らし始める。乾燥作業の進行とともに、再開への期待が場内全体で高まっていく。
「Ladies and gentlemen, we anticipate returning to yellow flag conditions in approximately 15 minutes」
場内アナウンスが、観客の大きな歓声を引き出した。




