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なろうラジオ大賞6 応募短編集

元悪役令嬢は小説家夫の寝言が心配

作者: 青帯


 私は天蓋(てんがい)付きのベッドにいた。


 夫と愛を(むつ)()った後だ。


「エイダ」


 隣で眠っている夫が私の名前を呟いた。


「君が一緒にいてくれて幸せだよ」


 私は夫の寝顔を見つめた。

 目覚めてはいない。寝言だ。


 私は思わずクスリと笑った。

 

「わたしもよ。オーウェン」


 オーウェンはまだ23歳。

 整った顔立ちには、まだ幼さが残っている。


 何歳も年上で、悪役令嬢とまで呼ばれた性悪の私と、よくもまあ結婚する気になったものだ。

 他の家の令嬢やメイドにしたことの悪評のせいで、私の嫁ぎ先は見つからなかった。


 けれど作家のオーウェンは、偶然知り合った私に結婚しようと言ってくれた。

 奇抜な物語を書くだけあって、変わり者なのだろう。


 だけど優しかった。

 こうやって夫婦として過ごすうちに、私の心も穏やかになっていった。


「悪役令嬢」


 また夫が寝言を。

 もう昔のことを言わないでよ。


「聖女」


 ふふ。私は最近そう言われるようになったわ。

 まあ、昔が酷過ぎたということよね。


「う、うわああああーっ!」


 夫が突然叫び声を上げて跳ね起きた。

 荒い息をしている。


「オーウェン、大丈夫!?」


 私も上体を起こして夫の肩に手を触れた。


「エイダ!? そうか、夢か。ふう」


 夫が額を拭った。

 ひどい汗だ。


「さあ、横になって」


「ああ」


 二人で頭を枕に戻した。


「そんなに怖い夢だったの?」


「うん。トラック――、いや、大きな鉄の馬車に引かれてしまうところだったんだ」


「まあ怖い。でも安心して。私が隣にいるから」


 私は夫の胸に片手を添えた。


「ありがとう」


「その前に言っていた悪役令嬢とか聖女って、私のことよね?」


「いや、転生前の、作家志望だった頃の夢を――」


「転生前?」


「何でもないんだ。お休み」


 夫は少しすると寝息を立て始めた。

 そして、再び寝言が。


「侍女」


 ん? ウチの侍女のエマのこと?


「浮気」


 何ですって!?

 まさかオーウェンは、エマと浮気を!? 


「離縁」


 そ、そんな!?

 私と離縁するつもりだなんて!


「元サヤ、ハッピーエンド」


 ん? 離縁して復縁する夢を見ている?


「冒険、ファンタジー、ダンジョン、パーティー追放」


 何を言ってるのかしら?


「チート、成り上がり、ざまあ、スローライフ」


 んん?


「勇者、魔王、魔法少女、乙女ゲーム、ツンデレ」


 んんん?


「――ろうで読んでもらうためには、キーワードに何を設定すればいいんだ。あーでもない、こーでもない」


 何を言っているのか分からないし、さすがに付き合いきれないわね。


 私は耳栓をした。

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