両親の過去
とみの表情はこわばっていた。
そして重くるしい空気の中で
まいと晃一の父 けいしと母 いづみの話をようやく始めた。
「魔法界にも色々な考え方の魔法使いがいてね。
自分に利益が出る事しか求めない者、自分の見栄や名誉ばかり気にして力だけを追い求める者も中にはいる。周りとの協調性や優しさを忘れる魔法使いも多くいたわ。
それを抑制させるだけの強い力をもっていたのがけいし様。あなたの父ね。魔力が強すぎて皆に恐れられていたわ。そしていづみ様も強い魔力をもつ1人だった。
2人は夫婦でお互いを高めあい、魔法界の平和のためによく議論を繰り返していたわ。私はそんないづみと親友でもあるがフォローをする立場でもあった。
そしてけいし様は魔法界で1番えらい大臣の立場になった。
そこで役員の1人として選んだのがトワという名の魔法使い。うまいこと懐に入られたわ。魔法学校で出会った仲間の1人なんだけど、当時はイベントの構成とかをお願いしてたの・・・・プロデュースをする力があるの。もちろん魔力も強かった。でも目立つ事を好まずいつも裏方の仕事に回ろうとしていた。そんな彼の姿はとてもいい評判になっていった。
圧倒的な魔力をもつ夫婦だったけいし様といづみ様はトワを信頼していたわ。
しかしトワは私たちを裏切った。
闇落ちしたの。自分が大臣の立場になる為にけいし様に近寄った。トワを崇める人も多くいてその人達は自分達のことをトワイズと名乗っていた。そしてトワイズと共に魔力を使った戦いを始めた。もちろんトワはけいし様の魔力に怯えていた。だから人質をとったの。それがあなた まい様と晃一様。
卑怯な手口だった。心を苦しめる魔法を使い、どんどん弱る子供をいづみ様に見せた。
いづみは正気を取り乱した。いづみは子供の事を傷つけるトワを憎しみ、使ってはいけない死の魔法を使おうとした。そしてそれを自身の身体で止めたのはけいし様。
けいし様が倒れ込み、愛するけいし様を自分の魔法で殺してしまったいづみは泣き叫んだ。そしてトワはその隙にいづみに死の魔法を使った。まだ少し息があったのか けいし様はトワを最後の力で封印させ、家族でテレポートしていった。そしてその後、砂漠で2人は手を繋いで遺体となって発見されたわ。
晃一様は迷子になってるところを魔法界の者が見つけ保護したの。まい様は皆で探したが5年たっても見つけることはできなかった。
その戦いで多くの人の命を失った。
魔法界の人々の傷は大きかった。
でもトワのいないトワイズ達は休戦を申し出てきた。私たちも弱っていたのでそうする事になった。
だから今はまだ休戦の途中。
次トワイズ達が活動する時はきっとトワの封印が溶けた時ね。それを皆 怯えているの。」
そしてとみは顔をあげて大粒の涙を見せた。
「ごめんなさい。あなたのお父様お母様を守ることができなくて。私はフォローする立場だった。私が止めるべきだったのに」
そう言うとまた大粒の涙を流した。
そしてまいはその大粒の涙が床に落ちる前にとみを抱きしめた。
「大丈夫。ありがとう。私と晃一は生きてる!そして愛されていたって知ることができたよ」
まいの心には憎しみの気持ちは生まれなかった。
「私が魔法界の平和にできることってなんだろう」
そう呟くと
とみはまた泣き出した。