まい との出会い
麻衣は家に帰ると、惨めな気持ちになった。
そしてまたイヤホンをつけ、音楽を大音量で流した。
親友だからね。離れないでね。そんな言葉・・・なんの意味もないよね。私が莉子を大切にしていれば莉子はきっとそばにいてくれる。私はどうして見栄ばかりはってしまうのかな。どうして莉子のように好きなものを好き、知らない物は知らない。と言えないんだろう。周りの評価を気にして、少しでも良く見られたい、少しでも強く見せたがる。そんな自分に嫌気がさした。そしてなぜ自分はこんなにも平凡なんだ。と悩んだ。
イヤホンからは流行りの音楽が流れてくる。グループアイドルのヒットソングが流れていた。
サビになると1番人気が高い子がセンターにきて歌を歌う。麻衣はセンターになれない、サビでは歌わせてもらえない、そんな気分になっていた。
そして真っ白のノートを開いた。自分の理想を描き始めた。
「私はまい。」
夢が広がっていた。ノートの中ではまいは魔法使いで、もちろん主人公。心から親友と呼べる人と出会い、皆に慕われる。皆に必要とされ、自己肯定感の高い自分や素直な心、特別な存在の自分。そして戦いに挑む勇気。
何一つ自分にもったいない物をどんどん描き始めた。
そしてその世界に入り込むことがとても楽しかった。
麻衣は学校から帰ると毎日ノートを開いた。そして書くだけじゃ収まらず、1人芝居も始めた。側近のとみさんと話す妄想や、皆に恐れられ慕われる妄想、親友と喜び合う妄想をした。ベットをステージに見立てて自分のライブも始まった。ベットでは見えない観客に手を振って声援に答え、ベットを飛び跳ねた。
そして麻衣の部屋の扉をトントントン・・・
ノックの音はイヤホンで聞こえなかった。ガチャッといきなり母親が入ってくると慌てて麻衣はベットでストレッチをするフリをした。母親はニヤけて怪しんだ。でも見てないフリをしてくれて洗濯物を手渡した。
麻衣
「もう!勝手に入らんどいてや!私がいいよ!て言うまで扉開けんどいてや!」と強く言った。
母ははいはい と笑った。
母はうまく思春期を見守ってくれていたのだ。