言葉で繋がる親友
3日間学校を休むのは初めてだった。4日目は勇気を振り絞り学校に向かった。足が重たい・・・。でも私は麻衣。明るいのが取り柄だった私を思い出せ!自分を奮い立たせた。
そしてクラスに入り一人一人に作り笑顔で挨拶をした。
「風邪ひいちゃったんだよね〜」誰も聞いていないのに休んだことは仮病じゃないアピールを独り言のように言った。
一軍二軍女子達は挨拶しても誰も返してくれなかった。でもそのほかの女の子たちは小さな声で「おはよう」と言ってくれた。麻衣はその挨拶で少し強くなれた。今までは周りに馴染もうと興味のない話に興味のない反応を皆と同じようにしていたけれど・・・今日からは生まれ変われる・・・そう捉えられたのだ。
そして休み時間になった。もう眠いフリはしない。1人で堂々と教室移動をしたり、トイレに行ったりした。すると莉子が話しかけてきた。莉子はとても静かな女の子だ。いつも本ばかり読んでいて友達の輪に入っていない女の子だった。
「一緒にいてもいい?」声が震えていた。莉子は勇気をだして麻衣に喋りかけたのが伝わってきた。
「もちろん!!!嬉しい!!!」麻衣は笑顔で返事すると莉子も顔を合わせて笑ってくれた。
今まで友達がいると思っていたが・・・それはただ戯れてただけ。私は初めて友達ができたんだ・・・そう確信した。そして莉子に興味津々の麻衣は質問ばかりしていた。「莉子は一年のとき何組やったの?」「莉子の家はどのへん?」全て快く答えてくれて、聞き返してもくれた。
そしてそれから毎日休み時間になると莉子といるようになった。麻衣は次第に笑顔で学校に通えるようになっていった。莉子は物静かで麻衣と正反対の性格をしていた。委員会を決める時もいつも麻衣に合わせてくれた。次第に二軍女子達も麻衣への関わり方が変わってきた。向こうから挨拶するようになってきたのだ。そして二軍女子は莉子にも興味を持ち始めた。
ある日麻衣がいつものように登校すると二軍女子から「麻衣ーーーおはよー♪」そう言い近寄ってきた。中には莉子の姿もあった。
二軍女子
「莉子に今勉強教えてもらってたのー!麻衣もここ勉強した方がいいよー!」莉子は嬉しそうだった。
麻衣
「えーーーそうなん?私も教えてーーー」
辛かった出来事は少しずつ消えていった。
そして放課後莉子が麻衣に話しかけた。
「麻衣ちゃん。ほんとうにありがとね♪私、2年になってから全然クラスに馴染めなかったの。でも麻衣ちゃんと友達になってから、たくさん喋りかけてもらえるようになって、学校が楽しくなったの!」
麻衣は嬉しかった。
「何言ってるの〜〜改まっちゃって〜♪私は莉子を親友だと思ってる!」そういうと莉子は恥ずかしそうに笑った。
麻衣は本当は言いたかった。莉子に言うべきだった。あの時助けてくれたのは莉子で麻衣は救われたのだと。いかにも自分が莉子を助けたように振る舞い、見栄をはった。あの辛かった出来事をなかった事にしたかったのだ。
そしてその帰り道・・・愛菜が友達と下校している姿を見かけた。そして見てないフリをして走った。
次の日もその次の日も学校は楽しくなっていった。クラスの中心人物の美羽もすっかり認めてくれるようになって、一軍二軍の中に莉子と麻衣も入れて貰えていた。恋愛話をされても、前ほど無理はしなかった。男に全く興味のない莉子は素直だったからだ。莉子は美羽から恋愛話をふられても
「知らないな。私あまり喋った事ないの。美羽ちゃんは友達が多くて素敵だね。」と返していた。
美羽はそんな素直な莉子を「かわいい〜〜〜」と褒め称えていた。そして麻衣に恋愛話を振られても莉子の真似をして逃れることができたからだ。
でも麻衣は徐々に不安になってきていた。私が初めて莉子と仲良くなったのに、今度は莉子にみんな注目している・・・。私の親友はみんなに取られてしまうんじゃないか・・・そう思った。
そしてまた私は1人になるんじゃないか・・・ネガティブな思考が頭をよぎる。
そして莉子に言った。
「私達、何があっても親友だよね?」
莉子は突然の麻衣の言葉に少し疑問を感じていた。でも麻衣を安心させる為に頷いた。麻衣は莉子の頷きで自分を安心させようとした。