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七十二話 ヒルズ

 すごくサラッと目の前で思っても見なかった言葉が返ってきた、なんなら付属で満面の笑顔まで付いてきた。


「.....は?今、なんて」


「だから〜、イヤです♪」


 儂は思わず聞き返したが、またもサラッと答えられてしまった。もう一度聞いてみて改めて聞き間違いではないことを確認した。


 今コイツが言ったのは『イヤ』、ダメじゃなく?.....まさかとは思うが、


「なんだ、入るために何か必要なものでも新しくできたか。それとも儂らの中に入れちゃいけない種族でもいるのか?入れない理由が知りたい」


 次に聞いたのは入るための資格について、ちょっと察してはいるがそんなはずはないという考えがまだ儂の中にある。


「まだ言わせる気ですか?あなた方を入れない理由はただ一つ、もう一度言います。あなた方を通すことは、イヤです♪」


 しかし、返ってきたのは予想通りでありながらその的中を喜べない答えだった。このことが導き出すのは儂らを通さない理由がルール上の問題ではなく、コイツ自身の頭の中の尺度によるものであるということ。


 どうしたもんか、こういう時にイヤって答えが返ってきたのは初めてだ。


「お義父さん、無理や無理。ヒルズちゃんにそんなこと聞くだけ無駄やで」


「.....?どういうことだ」


「その子は決めとるんや、一日に一組だけ如何なる理由においても通さへんってな。アホらしい話やけど先に言う、その子はマジでそれをやっとるんや」


 ーーーは?


 意味が分からん、じゃあなんだ?入国を審査する立場でランダムに一組だけは通さないとか、ガキみたいなことをやってるってか。だとしたらなんてはた迷惑な、今すぐクビにしろそんな奴!


「いやいや待て、曲がりなりにも入国を管理してる奴だぞ?んなことーーー」


「それがあるんやなぁ、龍っちゅう種族はお義父さんが思っとる以上にプライドが高いんや。全ての種族を根底では下に見とる、本来なら一人たりとも入れたくはない。まあ、くだらん考えやな」


 儂の言葉を遮り、否定する暗鬼。龍族は確かに強い、最強種と言っても過言ではないほどに。そしてその強さゆえにプライドも高い、このヒルズとかいう奴も例外ではないのだろう。


「いくらプライドが高いからって納得は出来んな、どんな感情にも切り替えーーー」


「切り替えとるで、アレで。言うたやん、一人も入れたくないって。でもそういうわけにはいかへん、だから一日一組だけに妥協しとるんや。昔を考えたらありえへん進歩やで」


 自分たちはお前らよりも断然強い、多分判断基準が同じなのは耐えられないだろう。


 うぅ、なるほど。自分の強さを認識するのに一番なのは理不尽だ。だが時代の関係上我慢はしなければならないと理解してる、だからこそのアレってわけだ。どれだけ小さかろうがどれだけ自分たちの器の小ささを誇示するような内容だったとしても天秤にかけてプライドが勝ってしまう。


「龍族の性ってやつか」


 理不尽だし、納得もいかないが納得するしかないのが現実。どれだけ訴えたところでこればかりは仕方がないのだ。それが分かり、儂と暗鬼はヒルズから離れる。


「魔王様、族長に連絡いたしますか?こうなれば仕方ないでしょう」


「いや、それは駄目だ。今自分の立場を利用したら、龍族のプライドを傷つけることになる。それに今儂は魔王としてここにきたわけじゃない、いちお父さんにすぎない」


 苦戦している様子を見てか、ルイナが話しかけてきた。答えた理由の中で一つ目は建前、理由の大半は二つ目。


 ゴスラークでは主に気づかれて、千歳京ではそもそも観光できるような状況じゃなく、ニュイラムに至ってはもはや旅行ですらなかった。今回は、今回こそは普通に娘たちと観光がしたい。ジェラールはともかくそうそうバレることはないんだ、儂が魔王として立つ時は兜で顔を隠してるからな!


「かしこまりました、確かにその通りでーーー」


「なぁなぁ、ルイナちゃん。お義父さんと話とらんと、私の相手してぇな。入れないっちゅうことは野宿になるやんな?そこでや、ハグして寝るんはどうや?」


 ルイナの言葉を遮るようにして割り込んできた暗鬼、気持ちの悪いことを言い出した。


「..........」


「ちょっ、無視せんといて?あ、どこ行くんや」


 ルイナは慣れた様子で無視をかまし、娘たちが待機している馬車の方へと戻っていった。


「なんでや、何が悪かったんや?なぁ、お義父さん」


「知らん、くだらんことを聞くな。後、いつやめるかとずっと待ってたが一切止めんなお前。お義父さんお義父さんとさっきからやかましい、黙っとるだけで許しちゃおらんからな!」


 何故か振られたくだらない問い、それによってさっきまでずっとモヤモヤしていた感情が表に出てきてしまった。


「はぁ、お義父さんでも分からんか。にしてもやっぱり野宿は体に悪いやんな」


「お前、話聞いてたか?」


「一緒に野宿したいと思おったけど、よお考えてみれば今対応策を持っとるんは私だけか。せやせや、こっちの方が確実に好感度を稼げるやん!.....お義父さん、今日今すぐ入る方法があるで、どうする?」


 おいおい、全然話を聞きやがらねぇぞコイツ。勝手に喋って勝手に結論まで辿り着きやがった。まぁだが、どうやら考えがあるらしい。いや、元からあったが正しいか?


「話を聞こうか、言ってみろ」

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