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七十一話 龍の国ヘルクレナ

「随分でかい声が聞こえると思えば、主か。ということは、あのスライムのとこの問題は解決したってことで良いのかのう?」


 儂が暗鬼とジェリエに翻弄されていると、馬車からレンセツの姿が。


「あら〜、お父様」


 次にに聞こえてくる優しげな声、メルルナである。合わなかった時間は同じなのにレンセツとは大違いに安心する。


「ああ、メルルナにレンセツ。二人もいたのか」


 儂は出てきた二人に話しかける、何故中に入っていないのかは気になるがまずは元気だったことに安堵する。


「お帰りなさいませ、魔王様がご無事で何よりです」


 そしてもちろん忘れてはいないもう一人、ルイナも現れた。


 これで全員無事だったな、とりあえず安心した。だが、この安堵では到底頭から離れることはない疑問がさっきから後ろにおる。


「ところで、なんで暗鬼がここにいる!」


「そうですね、それは私から説明させていただきます」


 儂が暗鬼の方を向き、おもむろに指をさして叫ぶ。今個人的に一番納得がいかない事である。そして儂のそんな言葉にルイナが前に出る。


「巌忽様に馬車の件を相談したところ、快諾していただいたのですがそこで話題に出たのがレンセツ様でして。正直護衛として頼りにならないのではとーーー」


「その時、私が護衛を買って出たちゅうわけやな!」


 なんか割り込んできた、が理由は分かった。どうやら巌忽の奴が余計な気を回したらしい。


 レンセツだけじゃ心配、それは儂も同感だが。アイツ、せめて別のやつをよこせよ。なんでよりによってコイツを!


「納得はできんが、分かった。それでお前、儂の娘に手を出してないだろうな?」


 一見くだらないことかもしれないがこれは大事な事だ、これだけは確認しておかなければならない。


「やっとるわけないやろ、私は同意の上でしか手を出したりはせんのや。娘さんはガードが硬すぎて全く落とせへんかったし。ホンマちょっと会うただけやのに随分信用無くなってんな、私が何した言うねん!」


 どうやら同意の上だったらしてたらしい。


 てかその話ぶり、手を出そうとはしてたみたいだなコイツ。コイツは早いこと帰らせた方がいいか?


「分かった分かった、疑って悪かった。まぁ、それはそれとしてだ」


「.....この間、なんやな予感するんやけど」


 まずはあらぬ疑いをかけてしまったことを謝罪する、その後やはりコイツは信用できないことを再確認する。つまり次に来る言葉はーーー


「お前はもう国に帰って良いぞ、お疲れさん」


「ちょっ、待ちぃや!なんやこれ、危なっ⁉︎なにさわやかな笑顔で帰そうとしとんねん!」


 円満に帰ってもらう、もとい厄介払いできるよう、儂はできるだけ良い笑顔を作った。そして帰還させる魔法の泡を使うがすぐに退かれてしまった。


 チッ、気づきやがったか。儂の言葉を聞きながらもあたりに注意を払ってやがる、そう簡単にはいかんか。


「まぁまぁ〜、この人は仕事を全うしていましたわ」


 そこで暗鬼にフォローを入れたメルルナ。


 メルルナが言うなら仕方がないか、見たところ本当に娘に何かをしたわけじゃないみたいだしな。


「分かった、今回は見逃してやろう」


「ありがとうなぁ、メルルナちゃん。おかげでお義父さんに認めてもらえたで!これはメルルナちゃん、私に気があるんとちゃうか?」


 やかましいわ、コイツわざとやってんじゃねぇか?


「どうでしょう〜?」


 メルルナは暗鬼のその言葉には適当に誤魔化して返している、おおかた同情心からだろう。


 ま、そんなもんだ。メルルナは優しいからな。


「ああ、そうだ。かなりいらん話をしたがお前らなんで先に入ってないんだ?」


 こっちは大事な話、こんな国目の前とはいえ外で待機なんて危険である。


「それなぁ、ジェリエちゃんが待ちたい言うたんもそうやけど一番はアイツのせいや」


 儂の言葉に答えたのは何故か暗鬼だった、コイツはそんなことを言いながらヘルクレナへの門の前に立つある人物を指さす。そこにいたのはピンクの長髪の女、背はあんまり高くなくやたら重そうな甲冑を着込んだ姿で仁王立ちしている。そしてその女には儂らと違うところがある、それはこの人物には角とトカゲの尻尾見たいなものが生えているということだ。


 まぁ、龍族の特徴だな。でも見たところ別にただの門番にしか見えんが。


「おい、そこの。儂らは今旅行中なんだが、中に入れてもらって良いか?もちろん観光目的だ」


 儂は怪しまれないよう、できるだけ説明しつつ問いかけてみる。


「良いですね、ご旅行ですか!」


 儂の言葉にこの女は思ったよりもかなり高めのテンションで口を開いた。


 違和感は感じたが、今のところ別におかしくはないな。


「ああ、じゃあ入れてくれるか?」


「.....イヤです♪」


 なんかすごいご機嫌そうな声で拒否された。

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