六十八話 第七研究所崩壊
「..........」
儂がいるその空間にしばらくの静寂が訪れた、ジンカイもキメラもピクリとも動かない。間違いない、儂の勝利だ。
勝った、勝ったはずなのに。なんだこの煮え切らん感情は!儂はキャウの仇を完全に潰した、なのにやってやった気がしない。
「気持ちよく勝たせろよ」
儂は気づいたら不満を溢していた。
「.....っと、こんなこと言うとる場合じゃない」
戦いは終わった、ならばここにいる理由はない。ニュイらと合流してさっさと出る、今すべきことはそれだ。
ーーーと、
「ん、おかしいな」
この部屋から出て行こうとした時、儂はあるものに気づいた。倒れていたキメラ、そいつがいたはずのその場所に崩れた肉塊が転がっていた。さっきまで人型で倒れていたはずなのに、まるで溶けたかのように形を失っている。
キメラってこんな形してたか?形を維持するための核は壊してないはずなんだがなぁ。
「まぁ、良いか。儂もキメラに詳しいわけじゃない、こうなることもあるんだーーー」
『第七研究所、全職員に警告します』
儂が今度こそ部屋からさろうとしていた時だった、どこからともなく聞き覚えのある声が響く。
「この声はジンカイ⁉︎んなバカな、あいつはもう死んで.....るな」
儂は思わず倒したはずのジンカイの方を見る、しかし依然として倒れたまま動く様子はない。
『この声を聞いている皆様、僕は死んでしまったようです。侵入者、もしくは病かもしれません』
儂の混乱をよそにジンカイの声はさらに続けて喋り続ける。
ん、内容からして自分の死因が分かっていない?これは自身が死んだ時に遺言として残した魔法か、よくあるやつだな。
『そこで皆様にお知らせします、核はこれより例外なく効力を失います。ご自分のキメラをお持ちと思いますが、僕はこの研究を死後に残したくない、残すべきではないと考えています』
「死んだ後まで長いこと喋るな、儂には関係ないな」
「パパ、見つけた!」
好きに言わせておこう、どうせ止め方なんざ知らんしとか考えながら出て行こうと扉に手をかけたその瞬間、勢いよく開かれた。
「おっと、ニュイか。すまんな、探させてしまったか」
「この場所の制圧は完了し、他の者はすでにここから撤退しております。とりあえずここから出ましょう、大主人!」
バウも来ていたらしい、急かすように口を開く。ここから一秒でも早く出ていきたいという気持ちをひしひしと感じる。
「分かった分かった、すぐに出よう。儂もさっさと出ていきたいと考えていたところだ」
バウの言葉に了承し、儂はやっとこの部屋から離れる。
『ーーーすでに他の研究室には引き取りの了承は頂いています、この場にいる全職員がこの研究所に二度と戻ることのないことを願っています』
ジンカイの言葉を背に儂らは、研究所から出ていく。
遺言まで誰かの為の言葉なのか、警告に理由づけと謝罪まで付いてたぞ。自分が信用されてないことを前提としたような、いや考えるのはやめた方が良いか。
「お帰りなさい、無事に帰ってきてくれましたね。キャウの姿は.....ないようですが」
儂は研究所を出た後、すぐにバウらと共に城に戻ってきた。スイラムの前には儂とニュイ、バウに騎士団の面々。そしてヴィクターを除く反乱軍の連中もいる。スイラムはキャウの姿がないことに気づき、寂しげな表情を浮かべている。
ヴィクターは研究所を出た時にはもういなかったんだよな。反乱軍の奴が話しかけてきたが、この国で住まわせてほしいってだけでヴィクターの話は出てこなかった。聞いても答えが煮え切らなかったのが少し気になるが。
「ではまず、研究所襲撃の件について。パ.....いえ魔王様、お願いします」
スイラムはそう言い、儂の方に目を向ける。
今、また言いかけたな。
「ああ、まずあの研究所だがーーー」
儂は一通り研究所で起きたことを説明した、ジンカイのことやキャウのことも。気の毒だとは思うが伝えないわけにはいかないのだ。
「終わったな、納得はいかんが今回の件はこれで解決だろ.....ところで」
「サクサク.....んぐ、もぐ、解決おめでとう」
儂は城での話が終わり、外を歩いていた。その隣にはニュイとミロの姿が。ミロはとめどなく口を動かしている、今食べてるのはクッキー。
今回コイツは何もしていない、と思っていた。城に帰った時、城内には大量の元キメラと思われる肉塊が転がっていた。騎士団不在を狙ってキメラを送り込んできた奴がいたらしい、スイラムに聞いたらこれを全て一人で蹴散らしたのがミロだと。
「お前は知ってたのか?」
「もぐ、むぐ.....?父、なんのことか分からない」
ミロは儂の質問に意味がわからないといった様子で答える、もちろん菓子を運ぶ手も止めない。
.....いや、まさかな。コイツに限ってそんな事あるわけないか。




