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六十四話 第七研究所所長

「全く見つからんぞ、ジンカイはどこにいる。てか、ここどこだ⁉︎」


 ニュイから言われ、あの部屋から離れてしばらく。冷たく固い通路を一人走っていた。


 走れど走れど同じような通路ばかり、外から見た時はたかが知れてるだろうと思ったがこれはダンジョンを名乗って良い。


「はぁはぁ.....これで扉は二十個目か」


 ここまで目についた扉をとりあえず開け放ち、いるかどうかを片っ端から確認してきた。肉体的にはさほど疲れてはいないが、何故か息が切れている。


 苛立ちから来てるのか、それとも焦っている?まぁ良い、さっさと確認だ。


「ようこそおいで下さいました、魔王様」


 扉を開けた儂の耳に覚えのある丁寧かつ律儀な声が聞こえる、ジンカイの声だ。見るとそこにはジンカイの姿ともう一体、つぎはぎのバケモノことキメラの姿もある。何故かどちらも椅子に座り、机を囲んでいる。そして空席が一個あるのも気になるところ。


「ここにいたか、随分とくつろいでるみたいだな」


「僕は元より逃げるつもりなどありません、ですがやけにここに到着されるまで時間が掛かっています。もう少し早く見つかる想定だったのですが」


 ジンカイはこっちに目を向けつつ、まだ息が整っていない儂の言葉にそう答える。だが何故か椅子から立ち上がる様子はない、同じくキメラの方も大人しく座り続けている。


 .....何のつもりだ?逃げてないのもそうだが、待ち構えるにしてもおかしい状況。アイツの言葉からしてくることは覚悟していたはず、少なくともキメラはすぐにでも戦える状態にしておくべきだ。


「.....立たないのか?それとも大人しく殺される気か」


「そうですね、僕の命ひとつで職員の皆を許していただけるのでしたら喜んで。ですが、その希望は一欠片すら残っていないことは理解しています。聞き出しましたので、あなたの口から出た彼からも他の職員からも」


 儂の言葉に不気味なほど冷静に、淡々と話し始めるジンカイ。


 いや、理解してるなら尚更立てよ!やりずらいだろ、大人しく殺される気はないようだが言葉と行動が伴ってない。儂はもう殺しにいって良いのか?.....って誰に許可とっとんだ儂は!


「だからなんだ、抵抗するなら立て!戦え!それ以外の選択肢はない、お前の言う通り許す気は毛頭ないぞ」


「もちろんです、ですがその前に少し話しませんか?すぐに戦いたいかも知れませんが、聞いていただけるとありがたい」


 あまりにも訳のわからないジンカイの言動に思わず儂は声を荒げてしまう、しかしジンカイは至極真面目な顔でたったひとつ用意されたかのような空席へ促してきた。


 な、な.....!頭おかしいのか、コイツ。確かに若干気になってはいた、何なら儂のために用意されたものかなって考えも頭の片隅には浮かんだ。だが流石に有り得ねぇだろ!


「..........」


「馬鹿らしいことを言っているのは僕が一番理解しています、しかしあなたならばもしかしたらと思ってしまうのです。どうか、聞いていただけませんか?」


 こんなの魔族相手にやった日には侮辱と取られて即座に殺されても文句言えないレベルの愚行、それをジンカイはわかっていながら止める様子がない。


 儂ならなんだ、この国は儂にとっても思い入れがあった。それをかき乱したコイツらは許せない、皆殺しは当たり前だ。だがーーー


「わかった、聞いてやる。すぐに終わらせろよ、儂もそう長いことは拳を抑えておれんぞ」


 儂は座ってしまった、何か罠があるかもしれないというのに。ジンカイにはどうしても敵意だけになれない。


 まぁ、そうそう大丈夫だろ。


「あなたならばそう言っていただけると思っておりました、ではご要望通り手短に。僕たちは手を出してはいけない方に手を出してしまいました」


「ああ、そうだな」


 おそらくはキャウのことだろう、それはジンカイの方も気づいているらしい。


「そしてその子はうちの者によってキメラの一部とされ、今は生きてはいません。申し訳ないが返すことは不可能です」


「そんなことはもう知ってる」


「その反応、まさかもう会った後ですか彼女に。.....彼女は生きていますか?」


 儂の返した言葉で察したらしく、ジンカイはしばらく黙った後静かに問うてきた。


「死んだところまでは見てないが、もう手遅れだろう。こっちの二人がかなり頭にきてたみたいだからな」


「そうですか、彼女を助けて欲しいとお願いするつもりでしたがもう叶いそうもありませんね。では、どうか彼女を憎まないでやってください」


 ジンカイは頭を下げ、続ける。


「許可を出したのは僕です、ツツナ君は何も悪くはない。彼女は会った時から感情が不安定でした、そんな中唯一和らいだのが誰かの恐怖の声。僕には治し方などわからない、現状楽になるならその方向がいいんじゃないかと勝手に判断しやらせた。本当に申し訳ーーー」


「あー、話したいのはそれだけか?悪いがそろそろ儂の我慢の限界だ、やらせてもらうぞ!」


 儂はジンカイの話の途中で遮るように口を開き、席を立ち上がる。


「いえ、構いません。失礼を働いたのは僕の方、聞いていただき感謝します」


 そう言い、ジンカイも立ち上がった。

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