六十二話 ニュイ交代
バウがキメラの中にあるキャウの肉体を切り裂き、趣味の悪いキメラは動かなくなった。
バウがキメラを倒した、いや壊したというべきかしら。時間はかかったけどバウの手で終わらせた。けど、
「くっ、うぅ..........」
力なくその場に崩れ、唸る様子のバウ。
流石にショックが強すぎた、しばらくは立ち上がれなさそう。ならーーー
「パパ、あとは私がやっても良い?」
「ん?そうだな、キャウの決着はつけたみたいだし構わんだろう」
私の問いにパパは許可をくれる。
うん、分かってる。それともう一つお願いしなきゃいけない。
「後は私に任せて行って欲しいの、まだ後二人いる。逃げる可能性がない訳じゃない、もう逃げちゃってるかもだけど」
「.....そうだな、ヴィクターの言葉もどこまで信じられるか分からん。分かった、ここは任せる」
私の次の提案にパパは少し考えた様子を見せたけど、承諾してくれた。
ありがとう、パパ。そしてごめんなさい、理由はそうじゃないの。
「これからの私の姿をパパには見せたくないの、多分はしたないこといっぱいしちゃうだろうから」
パパには聞こえないようにパパが離れた時に小さく呟き、バウがいる方へ向かう。
正直爆発したいのはバウだけじゃない、ほんとなら街に出たキメラに全てぶつけて憂さを晴らしてやるつもりだったのに。私だってキャウのことは大事にしてたし、あんなことされてて腹が立たない訳ないでしょ。
「しゅ、主人。申し訳ない、すぐにーーー」
「良いよ、落ち着くまでそこで。それに手は出さないで欲しいな、あとは私にやらせて?」
近づいた私に気づいたバウが顔を上げようとしたけど、やめさせる。
こいつはバウにとっても仇だけど、ごめんね。私がもらっちゃう。それにしても、
「逃げないんだね、発言が小物だったからてっきり守ってくれる存在を無くしたらすぐ逃げるものだと思ったけど」
「小物でごめんね、私は別に守られている気は全くなかったのだけれど。逃げない理由は目の前で傑作をズタボロにされて、多分怒ってるの」
そいつは何故か不気味なニコッとした微笑みで返してきた、さっきまでうるさかった態度が今は全く消えている。
.....?本当に怒ってる?人間って怒る時、こんな変な笑い方するっけ。それに多分って、意味がわからない。
「名前は?仇の名前は覚えとかないと」
「そうね、ツツナよ。それにしても随分と可愛いわね、本当にスライムなの?どんな声を上げてくれるのかしら、可愛い声してるから楽しみーーーね!」
名前を答えたそいつは突然、目前にまで移動。間髪入れず拳が。
「..........っ⁉︎」
明らかにおかしな動きだった、もっと正確に言うなら人間にできる動きじゃなかった。私が舐めてたのもあるだろうけど、ちょっと反応が遅れただけで腕に当たってしまった。
今の速さ何、こいつ人間じゃないの?ダメージはあんまりだけど、私が人間の攻撃を避けられないなんて。
「あら?お腹を狙ったのに結構外れたわね」
「はは、面白いじゃん。良いよ、そういうことする奴は嫌いじゃない。だって、清々しい気持ちでのぞめるから」
私は掌に指を突っ込み、街中に現れたキメラの時にも使った剣を取り出す。
「それがあなたの武器かしら?」
「そうだよ。私は剣使うけど、文句は言わせないよ?じゃ、いくね」
あいつからきた問いに頭に血が昇っている私は適当に答え、次には身体が動いていた。間を詰め、剣を振るう。
「ーーーえ?」
次の瞬間、私の口からはそんな声がこぼれた。別におかしなことが起こった訳じゃない、ただ単純にツツナの首が落ちた。私は確認のためにツツナの首に近づく。
こんな簡単に?あれだけの速度を出せる奴が、今の一振りで容易く首を?
「.....っ!主人、後ろです!」
「ーーーなっ⁉︎うぐっ!」
背後からバウの焦った声が聞こえる、私が反応した時には遅かった。背中に一発もらってしまう。見ると、頭のないツツナの身体から私に拳が伸びていた。
結構痛いじゃん、こいつって人間じゃなかったの?いや、違う。
「えー、キメラってこんなこともできるの?」
自分の背中に当たったツツナの拳、もうそれ以上はピクリとも動かない。それを掴んで無理矢理手を開かせる。そこには綺麗な球が埋め込まれていた。
これ、多分核かな?私はこういうのよく分かんないけど、ようは自分自身まで改造しちゃった人間ってことかな?じゃあ、何も違わないか。
「あれ、じゃあこっちは.....」
私がもう一度頭の方に目を向けると、そこには白目を剥いて一切動かないツツナの頭が変わらず転がっている。多分気絶、核が壊れない限りキメラが死なないらしいし生きてると思う。
「速さは手に入っても私の剣を避けるだけの反射神経はなかったみたい.....もういいや、食べちゃお」
私は人間化を解き、スライムの姿に戻る。そして目の前にある頭と体を捕食。
「な〜んか、消化不良だけど殺せはしたしいっか。.....うえ、まっず!」




