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六十一話 絶叫キメラ破壊

「ぐっ!おのれ、どれほど傷つけようと止まる気配は無しか」


 さっきのキャウの声でオレの中にあった迷いは消えた、しかしそれとこのキメラを殺せるかは別問題だった。


 確か大主人がキメラには核があるとおっしゃっていたな、そしてその場所はすぐに分かると。だが、少なくともこの戦いの最中でオレは見当一つも立てられていない。


「ぬぅ.....切り刻めば見つけられるか?いや、それは駄目だ」


 四肢を落とすまでは良くても、キャウを傷つけたくはない。これがなんなのかわからない、騎士団のやつの頭を落とすことは憐れみはあるが躊躇はなくやれた。だというのに何故、キャウだけ.....


 いらないことを考えている暇はない、とにかく四肢を落とす。核のことはそれから考えれば良い。


「..........!」


「ーーーっ!だからそんな粗末な攻撃は当たらん、だがちょうどいい。その腕もらうぞ!」


 ちょうどオレに向かって振り下ろされようとしていたキメラの腕、それがオレに届く前に剣を振るう。だが、


「.....なっ⁉︎」


 避けられたこと自体は驚くことでもなかったが、問題はその速さ。攻撃は遅いくせに腕を引っ込めるのは異常に速かった。


 決して手加減などしていない、胴にくっついていた頭は簡単に剣が入ったのに腕はそこまで守るか。


「やかましいワンちゃんの頓狂な声、結構そそる〜。残念だけど四肢の回避性能は胴や頭とは比べ物にならない、徹底的に恐怖を叩き込んだから」


 女の声が聞こえてきた、そういえばいたな。キャウのことでいっぱいだったせいか、頭から抜けていた。まぁ良い、どっちにしろあの女は後だ。


「..........っ!」


「当たるか!ちっ、オレの剣も当たらんか」


 次にきたのは蹴りだった、遅いから当たることはない。だが躱し際に振るったオレの剣は空を斬った、伸び縮みでもしているかのように見えるその動き。


 関節があるような動きはしていない、なら人間の形をとっているだけの何かと考えた方がいいか。また来る、何度も同じような攻撃をーーー!


「はっ!だから当たらんと.....な、に?」


 また同じように躱した、はずだった。しかし腕から血が流れている、さっきまではあれで避けられていたはずだ。


「ふふ、いいこと教えてあげるわ」


「.....っ!キサマ、黙っていろ。戦いの邪魔だ!」


 なんのつもりか、あの女がまた口を挟んできた。


 傍観者の分際でいちいち口を出しやがって、何もしないなら大人しく黙って見ていれば良いものを。


「その子の原動力は恐怖、追い詰められれば追い詰められるほど逆に強くなる。随分長引いてるみたいだけど、大丈夫かしら?」


「なんだ、口を開けばくだらんことを。傍観しているだけの人間風情が耳障りだ!こいつの後でキサマもすぐに殺してやる!自ら戦わん奴は黙っていろ!」


 オレが最も嫌いなものは真剣でなければならないはずの場で口を挟まれることだ。他に任せ、己で手を下さない奴なら尚更大人しくしておくべきだ。


「うっさいわね!私は怒号がこの世で一番嫌いなのよ、この鼓膜を震わせていいのは絶望の叫びだけ!」


 ふざけるなよ、守られているくせにイキがるか!守られる立場なら謙虚に振る舞うのが道理だろうが!


「.....良いだろう、死に急ぐなら望み通りにしてやる。頭を低くするのは腹立たしいが、こうしなければ剣が当たらないのならしょうがあるまい」


 オレは一旦キメラから離れて手に握る剣を口に持っていき、姿勢を下げ両手を地につける。四つん這いの体勢をとる、腹が立ちすぎて案外頭は冴えている。人型がやればバカみたいな体勢だが、


 オレのような獣がやるなら話は別だーーー!


「.....は?」


 地を蹴りキメラの腕を狙った。相手からどう見えたかは知らないがキメラの背後の地に足がついた時、キメラの腕がオレの隣に転がった。そのすぐ後に女の間の抜けた声も聞こえてきた。


「..........っ⁉︎」


「所詮肉塊の分際で動揺するか、こないならばもう一本もらうぞ」


 明らかに仰け反るような動きを見せるキメラ、それはただの隙。同じようにもう片方の腕も落とす。すると、


「ーーー!」


 突如、背を向け走り出す。それがまたやたらと速い。


 だが、逃してやるつもりは微塵もない。今度はその脚を落としてーーー


「あ、そうだ!もう一つ教えてあげるわ、確かあのメスの犬を見た時に動揺してたわよね?その犬なんだけどどんなに痛めつけても叫ばないどころかあなたみたいに怒声ばかりで腹たったから喉に杭を刺してやったの」


「キサマ、この期に及んでまだ喋るか!耳障りだと言っているのが聞こえなかったかぁ!!」


 また口を開いたかと思えば、同じようなことを。そんな言葉でオレが止まることはない。気にせず地を蹴りキメラに迫る。


「良いから黙って聞きなさいよ!やたらめったら叫ぶんじゃねぇ!はぁはぁ.....でね、あいつその前にね、核を飲みこにやがったの」


 キメラに追いつき、斬りかかろうとした時オレの身体が途端に止まった。また、思うように動かなくなる。


 .....何?今、あいつなんて言いやがった?キャウが、喰った?


「ご、ごごっズよ.....ぜんばい!」


 ーーーっ⁉︎


 また聞こえた、今度は掠れた声で。


「ぐぅ、ぐおおおおっ!」


 その声が聞こえた瞬間、考えよりも身体が先に動いた。気づいた時、後ろには胴で切断され動かなくなったキメラ。声にならない叫びと何かを割った感覚が残った。

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