五十八話 キメラ研究所
「じゃ、失礼しまーす!」
ヴィクターは楽しそうに叫びながら、ドアを蹴破る。一度開くか試すこともなく、そこに一切の躊躇なかった。
おいおい、随分と豪快にいくな。まあ、もうバレてるだろうから丁寧に立ち回るだけ無駄だろうが、にしても容赦なかったな。
「道は開かれたぞ、諸君!突撃だ、騎士団&反乱軍連合の力を見せつけようではないか!」
「だからお前が仕切るな!」
ヴィクターの態度についにツッコミを入れてしまう、心の中で言ってはいたものの声には出さなかったそれが限界を迎えてしまった。
なんか勝手に名前までつけられてるし。あーもう、こいつのせいで儂の威厳駄々下がりだ!
「大主人、入りましょう」
「お、おう。ん?お前.....いや、そうだな早く入ろう」
ヴィクターの発言に振り回され、思考が掻き乱されている儂にバウがただならぬ表情で話しかけてきた。
バウ、何かに気づいたか。こういうことは極力考えたくはないが、嫌な予感がするな。
「騎士団よ、この先あるは我らが国を散々に乱した元凶だ。恨みが、怒りがそこにあるだろう。ここは戦場ではない、皆思い思いにそれをぶつけろ!」
「「「うおおおぉぉぉぉっ!!!」」」
次に発せられたバウによる騎士団への自由行動の令、それは魔族の本能解放の許可。人間ならば団結こそ脅威だが魔族の場合は全くの逆、今まで規律という言葉で抑えられていた殺意が解き放たれる。我先にと流れ込んでいく団員たち、だが彼らよりもーーー
バウが一番爆発寸前だな、今のは自分が抑えられそうにないからか。
「付き合うぞ、バウ」
「ありがとうございます、オレももう我慢できそうにありません」
体が小刻みに震えている、いつのまにか剣を抜いている。すでにほとんどの騎士は中に入った後だ、この姿を見ているのは儂と、
「パパ、私もついてく。バウの主人は私だもん、面倒は見るよ」
ニュイ、こいつも先に行かず待っていた。
「お供しますよ、魔王様?」
.....後、なんかヴィクターもいた。
「お前はいらん」
「そんな酷いこと言わないでほしいなぁ、まだ話したいことがあるんですよ」
よく分からないが、とりあえずいなくなってほしい。反乱軍の連中も騎士たちの後に続いて入って行ったため、ヴィクターも行ったものだと思ってた。
「はぁ.....取れる時間はそうないぞ、手短にーーー」
「パパ!バウが急に走り出した!」
「何っ⁉︎追うぞ、絶対に見失うな!」
ニュイの声で向き直るとバウの姿はもう扉の中に消えた後、儂はすぐに足を動かす。
「..........!」
止まることなく、ただ静かに走り続けるバウ。その後ろを儂とニュイ、ヴィクターの三人で追う。勢いのままに入ったが中は外観とは全く異なり、重厚感のある内装となっており視界内には常に金属やガラスが映る。
にしても見た感じ中にいるのはほとんどがキメラだな、白衣のやつも見るが数は明らかにキメラが上。まさかとは思ってはいたが、キメラを制御できてんのか?
「失礼、走りながらで全く構わないので私の問いに答えてくれない?」
「おまっ⁉︎この状況でまだ言うか!」
儂の隣で並走しながら突如口を開いたかと思ったらさっきの話の続きがしたいらしい。
うーん.....そんな場合じゃないが、ほっといてもしつこそうだな。なら、さっさと終わらせたほうが早いか。
「分かった、早くしろ」
「あの時、周りの雰囲気を胃に関せずでぽりぽり言わせていたお嬢さんは一体何だったのかな?そしてあの一回以降見ていないが今はどちらに?」
「.....は?お前、そんなことが気になるのか?まぁいい、あいつは儂の娘だ、億劫だとか言ってたから城に置いてきた」
次にヴィクターの口から発せられたくだらない問いに儂は思わず変な声を出してしまった。
いや待て、勢いで答えたが。何であんなくだらない質問に答えてんだ、儂!
「感謝する、いやぁスッキリしたよ。何よりもそれだけが頭から離れなくてね、ではここら辺で私は別行動としよう。さらばだ、魔王様」
儂の回答に満足がいったらしく、感謝の言葉を述べた後に勝手にどこかへ行ってしまった。マイペース、いやこの場合自分勝手が過ぎると言った方が正しいか。
っていうか、本当に聞きたいのはあれだけだったのか?ふざけたわけじゃなく、あれだけを聞くためにわざわざ儂を追ってきてたってのか。気になるところも訳わからんし、何なんだあいつは。
「パパ、バウが止まったよ。どうやらついたみたい」
「ん、ああ。そうか」
ヴィクターに気を取られていた儂の耳に突然、ニュイの声が響く。いつのまにかついていたらしい、目の前に重厚感のある鉄の扉が。
「.....っ!うおおおっ!」
バウは咆哮に似た叫びを上げながら鉄の扉を思いっきり開ける。




